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トイレの作法2.0(国内トレイル事情)

そのうち記事にしようと先延ばしになっていたお話です。登山道・トレイルにおけるトイレのマナーについては一般常識レベルでは理解しているものの、浸透しているはずのルールに疑問点もあり、トレイル上で首をかしげるシーンも多く、実際の登山道ではいまだに無法地帯になっている状況も頻繁に目にします。そこで改めて現状のトイレ事情を整理して考えたいと思います。

■海外トレイル(明確なルール化)
水場から30m~60m離れる、トレイルから30m~60m離れる、15センチ~20センチの穴を掘って埋める、紙は燃やすか持ち帰る。

統一されたスタンダードルールはあるが、果たして日本の山の実態にあっているのか?

■日本の登山(暗黙のルール)
原則山小屋のトイレを利用、緊急時は携帯トイレを使用、国立公園内での野外での排便行為は禁止と謳っている。

実質不可能→ルールが未整備で無法地帯、見解もバラバラ。ゼロリスク思考と同じで野外での排便行為はあってはならない前提なのでマナーが浸透せず、結果的に無法地帯になりやすい。先日も平標山の山頂で残置物を見かけました。

メディアの情報についても登山者の殆どが日帰りライト層なので、山小屋のトイレのマナーや携帯トイレの話しで終わってしまい、実際に野に放つ際の具体的な記述がほぼ有りません。

トイレ問題はデリケートな話になるせいか、大手メディアや登山業界では語られる事は少なく、表面的な話で終わります。むしろ個人媒体や外部メディアの方が多くの情報がみつかります。野糞本も何冊かありますよね。

このページに来る皆さんは当然山でのトイレ作法が既に身に付いている方々であるとの前提でお話しさせて頂きます。その上で自分が感じている違和感を話します。一般的に認知された「ルール」にも疑問点はあるのです。

■実態とそぐわない点

トイレットペーパーを燃やす
→焚火がダメなら同じく燃やしちゃダメでしょ

穴を掘る
→樹林帯は木の根が多くて掘れません、
 高所では土の層が殆ど無い場所もあります

トレイルから離れる
→稜線の登山道は無理
 笹原に分け入るしか無い

雪山はどうするの?
→正解をだれも教えてくれない

緊急事態は確かにある
→年に一度くらいはどうにもならない時がある

携帯ウォシュレットの使用
→以外と綺麗にならない
 実は余計に紙を使う

■自分の経験値
以前信越トレイルの整備スタッフをしていた時の話しです。
整備作業で毎日山に入るので、当然トレイル上で催す事もしばしばです。面倒で紙は持たないので葉っぱで処理します。標高1000m付近の樹林帯には「ほうの木」も多く、ほうの木の葉は特にお気に入りでした。

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穴を掘る件についてですが、特にブナ林で穴を掘ることはNGです。ブナの根は浅く広く根を張るため、数センチでも穴を掘れば根を痛めてしまうからです。その代わりブナ林には落ち葉が無限にあります。浅く土を退けた場所に腐葉土化した落ち葉をこんもり盛って処理するのがブナ林における正しい作法となります。

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上信越周辺の縦走路などではどうでしょうか?稜線上で催した場合、トレイルから数十メートルも離れる事は困難です。幸い自分は入山後2日間は便が出ないため、稜線上で便意に襲われる事は稀です。それでも催した場合は笹を分け入って致すしかないでしょう。笹原では穴も掘れませんのでそのまま放ちます。後処理も笹の葉を被せるのがせいぜいです。それが実態です。最近は携帯トイレを持つようになりましたが、幸い実際に使うケースはまだありません。

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BCスキー等で雪山に入る際でも当然出るものは出ます。雪で埋めれば見えなくなるからと言って雪の中に便を放つのは最悪の行為です。それでもせざるを得ない場合はツリーホールを見つけて穴の中に落とします。ツリーホールの中なら雪解けと共に最速で土に帰ります。雨が降れば木の表面も洗われます。人目にも触れません。

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色々と対策をして経験を積んだとしても、どうにもならない緊急事態は確かに起こります。自分も何度かありました。それ以来、携帯トイレを緊急用に持つようになりました。トイレセットの中ではなく、エマージェンシーセットの中に入れています。吹雪でテントに数日間閉じ込められた場合を想像して下さい。

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最後に携帯ウォシュレットについてお話しします。
自分で改造して商品化したくらいですからウォシュレット信者です。日常生活でもウォシュレットの付いていないトイレなど言語道断です。山でウォシュレットを使う様になって5年くらいでしょうか。清潔で紙の削減に繋がると考えられがちなウォシュレットですが、実は大きな矛盾が存在します。普段家のトイレでもそうですが、普通は一回紙で拭いてからシャワーで流しますよね?水だけで洗い流すのは困難な筈です、野外なら尚更です。つまり紙で拭くのは計2回となり、実際には紙の節約にはならないのです。また、紙が濡れるせいで意外と手が汚れます。その矛盾に5年間悩まされました。

先日土屋さんが雑誌の記事でウォシュレットを紹介されていました。

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土屋さんは探検部時代の経験からアジア式のトイレ作法を会得されているのでペーパーは使わないそうです。ご本人はさらりと言っていますが一般的なハイカーに同じ事をやれと言っても無理な話です。自分もさすがに素手は無理です。

ただし、アジア式を取り入れた上で、抵抗感も無く、上記の矛盾を解決する折衷案がありました。何度かテストした上で「これはイケる!」と感じましたのでご紹介します。

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