竹内宇瑠栖

怪談を集めたり発表したりしています。他に投稿した小説(時代小説/非怪談)なども。もしよ…

竹内宇瑠栖

怪談を集めたり発表したりしています。他に投稿した小説(時代小説/非怪談)なども。もしよければあなたの不思議な体験をお聞かせください。主に週末に投稿します。6~9月は投稿が少なくなるかもしれません。ご理解を。

マガジン

  • 禍話リライト

    毎週土曜の夜23時からツイキャスで配信されている「禍話」から面白かったものを随時文字化します!

  • 平成土葬狂想曲

    平成7年の6月、父を亡くした隆は、遺言で土葬を頼まれる。しかし、近在ではしばらく土葬を行ったことはなく、しきたりなどが全く分からない。幼馴染の副住職兼近や後輩の寅雄の力を借りて、父親の土葬をかなえようと奔走するのだが……。

  • 一貫斎始末記

    幕末の近江、鉄砲鍛冶の村・国友に一貫斎という鍛冶師がいた。時代の流れにより、鉄砲は時代遅れのものに。そこで、一貫斎は鉄砲に代わるものがないか模索を始めるが……。

  • 怪談拾遺

    あちこちで聞き集めた怪談を、皆さんに親しみやすいよう紹介します。 手軽に怪談だけ読みたいという方は【 】から下を読んでいただければ。

  • ある詩人のイディオレクト―細川雄太郎異聞―

    童謡詩人細川雄太郎を主人公にした歴史小説です。

記事一覧

【禍話リライト】焚書の名前

 おかしな本というのも、隣接する異界への扉となりうる。  これは、かぁなっきさんが高校の同級生Aさんに聞いた、本にまつわる短い話。 【焚書の名前】  今から25年ほ…

33

【禍話リライト】ぶら下げ怪談「写真のせい」

 前回と同じく、6月末に刊行された『Occlut‐オカルト‐闇とつながるSNS3』(むくろ幽介著)収録の「視える子」からかぁなっきさんが触発された、短い怪談を。 【写真…

竹内宇瑠栖
12日前
33

【禍話リライト】ぶら下げ怪談「カーテンの裏に」

 今週は、いつもと日が違い金曜日(2024年8月30日)の11時からの放送。  内容は、先週の離島怪談会であった奇妙な出来事を振り返りつつ、6月末に刊行された『Occlut‐…

竹内宇瑠栖
2週間前
36

【禍話リライト】セミナーのホード

 土地にまつわる話は多い。  中には気味が悪いが、意味が分からないという話もある。  これは先週のウェルカム怪談で話された短い話。 【セミナーのホード】  大分県…

竹内宇瑠栖
3週間前
29

【禍話リライト】編集を有効にする

 肝試しや心霊スポット探検へ複数人で行っても、おかしなことが起こるのが一人だけの時がある。それは、チャネルが合ったり、特別なところを見たり、何かに触れたり。  …

竹内宇瑠栖
1か月前
52

【禍話リライト】たたずむもの

 何となく、皆が引き受けない仕事というのがある。  例えば、雨の日のごみ出し、暗い物置の掃除、古いビル内店舗の最後の閉め作業など。それらは、生理的な嫌さの他に何…

竹内宇瑠栖
1か月前
49

【妖怪本販売】三井寺モノノケ市

 2024年8月9日から、今晩まで滋賀県三井寺(園城寺)で妖怪本(だけではないが)を販売している。 昨日は最後にヒダル神さんが買いに来てくれて、質問をされた。 「釣瓶落とし…

竹内宇瑠栖
1か月前
1

【禍話番外】「FEAR飯の恐怖は上々」行ってきました!

 表題通り行ってきました。  生かぁなっきさん、生加藤さんの掛け合いや現場の雰囲気を含めてとてもとても良かったです。開始前の音楽も懐かしくてよかった。  ただし、…

竹内宇瑠栖
1か月前
9

【禍話リライト】畑中土饅頭

 一目でわかる不自然な場所というのは、何かのいわれや背景があるものだ。例えば、マンションの中のおかしな形の空間、住宅街のいびつな空き地、そして整然と並んだ田んぼ…

竹内宇瑠栖
1か月前
45

【禍話番外】「FEAR飯の恐怖は上々」行ってきます!

 本日はいつもならリライトを上げていますが、タイトル通りイベントに参加できることになりましたので楽しんできます!  後ほど可能なら記事にします!

竹内宇瑠栖
1か月前
10

【禍話リライト】五回家族

 昨日の「禍話2024夏の納涼祭」は素晴らしかった。  吉田さんの引き出しの広さに驚き、犬鳴トンネルの話の共通点の指摘に感心し、何より怪談のラリーだけで1時間持った…

竹内宇瑠栖
2か月前
65

【禍話リライト】こびりついてる

 会社にある独自ルールには、それなりの理由がある。  それは、残された無念かもしれないし、単に会社の設備をうまく使うための集合知かもしれない。  これは京都のある…

竹内宇瑠栖
2か月前
35

【禍話リライト】祠と地蔵のようなもの

 過去の禍話であった話では、大きな敷地内の目立たない場所にある建築物は危険度が高いことが多い。  今回もそういう話だが、何かに魅入られないよう、あるいは、近しい…

竹内宇瑠栖
2か月前
49

【禍話リライト】びしょびしょの子

 2週間ぶりの禍話はすばらしかった。  特に後半、「赤い布」から「いんちょうの話」の2話は、本当に肝が冷えた。どなたかリライトをお願いします。  さて、学校にまつ…

竹内宇瑠栖
2か月前
55

平成土葬狂想曲3

〈声の力〉  夕刻になった。夏至まで間がなく、まだ外は薄明るい黄昏時だ。 「観音講、頭者、馬渕セツ子参りました」  張りのある声で、本堂への扉の前に女性が立ってい…

竹内宇瑠栖
2か月前
5

平成土葬狂想曲2

〈枕経〉  寺に着くと、住職が迎えてくれた。 「この度はご愁傷さまです」 「ありがとうございます。兼近副住職はおられますか」 「おお、離れでいろいろ悩みながら紙細…

竹内宇瑠栖
2か月前
2
【禍話リライト】焚書の名前

【禍話リライト】焚書の名前

 おかしな本というのも、隣接する異界への扉となりうる。
 これは、かぁなっきさんが高校の同級生Aさんに聞いた、本にまつわる短い話。

【焚書の名前】

 今から25年ほど前、Aさんは父の仕事の関係で九州中を転校していたのだという。そんなAさんが中学の時に奇妙な体験をした。
 その中学校は、佐賀、長崎、熊本、宮崎、鹿児島のどこかだったという。鍵っ子だったAさんは、遅くまで学校に残ることが多かった。帰

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【禍話リライト】ぶら下げ怪談「写真のせい」

【禍話リライト】ぶら下げ怪談「写真のせい」

 前回と同じく、6月末に刊行された『Occlut‐オカルト‐闇とつながるSNS3』(むくろ幽介著)収録の「視える子」からかぁなっきさんが触発された、短い怪談を。

【写真のせい】

 Aさんは霊感が強い。しかし、それを人に言うことは滅多にない。なぜなら、過去に何度もイヤな目にあっており、ロクなことにならないからだ。
 Aさんが学生の時に、そんな能力を知る友達から写真を見せられ、
「何か感じないか?

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【禍話リライト】ぶら下げ怪談「カーテンの裏に」

【禍話リライト】ぶら下げ怪談「カーテンの裏に」

 今週は、いつもと日が違い金曜日(2024年8月30日)の11時からの放送。
 内容は、先週の離島怪談会であった奇妙な出来事を振り返りつつ、6月末に刊行された『Occlut‐オカルト‐闇とつながるSNS3』(むくろ幽介著)の禍話からのものを含む全話紹介だった。
 その中で、オカルトにあったカーテンにまつわる話からかぁなっきさんがふと思い出した、ぶら下げ怪談の1話を。

【カーテンの裏に】

 かぁ

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【禍話リライト】セミナーのホード

【禍話リライト】セミナーのホード

 土地にまつわる話は多い。
 中には気味が悪いが、意味が分からないという話もある。
 これは先週のウェルカム怪談で話された短い話。

【セミナーのホード】

 大分県の話である。
 当時、Aさんの家の近くにレンタルビデオ屋があった。市場はとっくにDVDに移行していたので、時代の波に取り残された形だ。
 ある時から、カーテンで店の中が見えなくなった。同じようなビデオ店が店を閉めているタイミングだった

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【禍話リライト】編集を有効にする

【禍話リライト】編集を有効にする

 肝試しや心霊スポット探検へ複数人で行っても、おかしなことが起こるのが一人だけの時がある。それは、チャネルが合ったり、特別なところを見たり、何かに触れたり。
 これはそういう話。

【編集を有効にする】

 一時、怪文書ばかり集めた本がコンビニをにぎわしたことがあるが、一定の様式というかパターンが存在する。怖いモノは確かにあるが、それほどバリエーションが豊富なものではない。
 これは、禍話レギュラ

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【禍話リライト】たたずむもの

【禍話リライト】たたずむもの

 何となく、皆が引き受けない仕事というのがある。
 例えば、雨の日のごみ出し、暗い物置の掃除、古いビル内店舗の最後の閉め作業など。それらは、生理的な嫌さの他に何か要因があるのかもしれない。
 これはそういう話。

【たたずむもの】

 Aさんは、商業ビルの2階に入っているリサイクルショップの副店長をしている。
 ただ、社員やスタッフの皆が最後に電気を消して、扉を閉め、セキュリティを掛けて帰る、いわ

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【妖怪本販売】三井寺モノノケ市

【妖怪本販売】三井寺モノノケ市

 2024年8月9日から、今晩まで滋賀県三井寺(園城寺)で妖怪本(だけではないが)を販売している。
昨日は最後にヒダル神さんが買いに来てくれて、質問をされた。
「釣瓶落としは、滋賀県にも出るんですか?」
「はい。釣瓶落としが出たと言い伝えに残る木が今もあるんです。もちろん、この本に載ってますよ」

 あるいは、こちらもとっぷり暮れてから来られた、欧米の方。
「河童は、骨折を直したというような言い伝

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【禍話番外】「FEAR飯の恐怖は上々」行ってきました!

 表題通り行ってきました。
 生かぁなっきさん、生加藤さんの掛け合いや現場の雰囲気を含めてとてもとても良かったです。開始前の音楽も懐かしくてよかった。
 ただし、リライトは禁止の話だったので、ここでリライトすることはできません。
 8月11日まで、アーカイブで聞くことができるので、興味のある方はどうぞ!

 といって、ネタバレしない程度に感想を述べることは可能だそうですので、以下簡単に。

【概要

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【禍話リライト】畑中土饅頭

【禍話リライト】畑中土饅頭

 一目でわかる不自然な場所というのは、何かのいわれや背景があるものだ。例えば、マンションの中のおかしな形の空間、住宅街のいびつな空き地、そして整然と並んだ田んぼの中の土盛。
 これは、そんな話。

【畑中土饅頭】

 Aさんが運転をして車で田舎道を走っているときに、助手席のBが「トイレに行きたい。止めてくれ」と言い出した。飲み会の帰り道だったという。
 道端に停める。
 道路横にある排水路は、いわ

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【禍話番外】「FEAR飯の恐怖は上々」行ってきます!

 本日はいつもならリライトを上げていますが、タイトル通りイベントに参加できることになりましたので楽しんできます!
 後ほど可能なら記事にします!

【禍話リライト】五回家族

【禍話リライト】五回家族

 昨日の「禍話2024夏の納涼祭」は素晴らしかった。
 吉田さんの引き出しの広さに驚き、犬鳴トンネルの話の共通点の指摘に感心し、何より怪談のラリーだけで1時間持ったことに感動した。ぜひまたかぁなっきさんとの掛け合いを聞かせていただきたい。
 さて、今週は余寒さんの秀逸な三本立てだったので、先週のものから一点。

 親しくない学友の家の、理解できないルールは不気味だ。年齢が低いとその意図も汲み取れず

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【禍話リライト】こびりついてる

【禍話リライト】こびりついてる

 会社にある独自ルールには、それなりの理由がある。
 それは、残された無念かもしれないし、単に会社の設備をうまく使うための集合知かもしれない。
 これは京都のある会社の話。
 過去に京都の修学旅行にまつわる話もあるのでよろしければどうぞ。

【こびりついてる】

 Aさんが京都で務めていた会社には、こんな決まりがあった。
『このオフィスビルの2階から3階への移動に階段を使ってはならない』
 会社の

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【禍話リライト】祠と地蔵のようなもの

【禍話リライト】祠と地蔵のようなもの

 過去の禍話であった話では、大きな敷地内の目立たない場所にある建築物は危険度が高いことが多い。
 今回もそういう話だが、何かに魅入られないよう、あるいは、近しい人が魅入られたらどうするか。これが参考になるかもしれない。

【祠と地蔵のようなもの】

 Aさんには、中学の時からずっと一緒のBさんがいた。大学まで同じ所に通う、いわゆる幼馴染だった。クラスは一緒だったり違ったりしたが、長い付き合いが続い

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【禍話リライト】びしょびしょの子

【禍話リライト】びしょびしょの子

 2週間ぶりの禍話はすばらしかった。
 特に後半、「赤い布」から「いんちょうの話」の2話は、本当に肝が冷えた。どなたかリライトをお願いします。
 さて、学校にまつわる奇妙な話を。

【びしょびしょの子】

 現在40歳になるAさんが、小学校の時、定年間際のかなり年かさの老先生から聞いたはなしで、あるシーンだけ鮮明に覚えているという。
 だから、そのシーン以外は少し記憶がおぼろなのだが、そこは思い出

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平成土葬狂想曲3

平成土葬狂想曲3

〈声の力〉

 夕刻になった。夏至まで間がなく、まだ外は薄明るい黄昏時だ。
「観音講、頭者、馬渕セツ子参りました」
 張りのある声で、本堂への扉の前に女性が立っていた。その後ろに20人を超えるほどの女性と男性が10名ほど、手に手に鈴や太鼓などを持って立っていた。浴衣のような白地の服を着ている。
 座棺を中心に本堂の壁まで並ぶと、男性陣が鉦と太鼓で拍子を取り出した。続いて、馬渕さんの声が本堂に響き渡

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平成土葬狂想曲2

平成土葬狂想曲2

〈枕経〉

 寺に着くと、住職が迎えてくれた。
「この度はご愁傷さまです」
「ありがとうございます。兼近副住職はおられますか」
「おお、離れでいろいろ悩みながら紙細工を作ってくれてるわ。まぁ、気を落とさずに、やることを一つひとつ頑張りなさい。土葬用の座棺は手配したから。ただもう棺桶屋も倉庫の奥の方に一つ残っているきりで、最後の一個だと言われたわ。私もできることは手伝うけど、土葬は本当に久しぶりやか

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