2024年1月23日(火)の300字小説

 私が入社して間もなくの頃。お茶を淹れた方がいいかなあと思い、社員みんなの分のお茶を用意していた。うちは中小企業なので社員は少ない。
 そうすると、給湯室に常務が来た。
「この会社は、お茶が飲みたい人が自分で淹れるシステムだから、君はそんなことをしなくてもいいんだよ。お客さんが来た時にはお願いすることはあるけれど」
「そうですか」
 ちょっと意外だった。
「君にはお茶汲みのために会社に入ってもらったわけじゃないからね」
 そのとき、すごく仕事を任されていると感じて嬉しくなった。
 常務は不思議な人だった。部下には怒鳴らないけど、社長とは怒鳴り合いの喧嘩をしたりする。それで辞めさせられないからすごい。
おしまい

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