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【詩】ふつう。

【詩】ふつう。
 作:hachi


あけがた、夢のなかで私は知った。

この宇宙でいちばん美しいもの。

それは「ふつう」だった。

「ふつう」は どこにでも在り
「ふつう」は あたりまえに在り
「ふつう」は ずっと在った。 


「ふつう」は 特徴がなく
「ふつう」は 印象がなく
「ふつう」は 気配もなかった。


「ふつう」は 抵抗せず
「ふつう」は 邪魔せず
「ふつう」は 気にされなかった。


「ふつう」は 高ぶらず
「ふつう」は へりくだらず
「ふつう」は まとわなかった。


「ふつう」はひまだった。

退屈で、死にそうで。

だけど「ふつう」だから死ねない。

そこがゲームの始まりだった。

自分をこまかくこまかく、
小さく小さく分割すると
ばらばらになった「ふつう」が、
花火のように美しく散らばっていった。


印(しるし)になり
徴(しるし)となり
瑞(しるし)となって。

目が覚めて。

泣いていた。

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