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親テープ、それは内在化された他者の声のラスボス

キャリコン学者図鑑のマガジンにも入れてはいますが、今回のコラムについては該当する学者さんはいません。人をふりまわす「~するべき」「~してはいけない」という信念シリーズ(エリス、ベックに続く)の番外編として、ヒプノセラピーの師匠から教わったことをシェアします

イラショナルビリーフ」ないしは「歪んだスキーマ」に相当する概念について、わたしは実はキャリコン養成講座においてではなく、ヒプノセラピー(催眠療法)の師匠から、最初に教わった。

ヒプノセラピーも、キャリア・コンサルティングと同じく「医療」ではない。わたしたちのクライエントは、基本的に未病。でも、何かの苦しさや、答えの出ない問いを抱えている。

師匠は、その原因は「親テープ(Parents tape)」である確率が高いですよ。と、教えてくれた。

セロハンテープのテープじゃないよ。録音、録画のテープだよ。カセットテープというメディアがが絶滅(?)して久しいから、ちょっとレトロ感あるけど、絶え間なく繰り返し再生され続ける「親からのアファメーション」。検索しても学者さんはひっかからないので、多分、ヒプノセラピー用語?

親テープとは

わたしたちは概ね、幼少期から思春期に至るまで、それぞれ個性や信条の異なる両親に、異なった方法で育てられる。(片親であったり育ての親だったりもするだろうが、一般的には一番身近な)親との接触を通して、自分自身や自分を取り巻く世界についての、最初のものの見方を形成する。

親から与えられた「~するべきである」「~してはいけない」の行動規範、それは、与えた側の意図としては、愛であったかもしれない。より良く生きるための知恵と信じてのことだったかもしれない。

しかし、その「声」は受け取った子供の意識の根底で響き続ける。それが与えられたものであるという自覚のないままに。

そもそもの「声」が歪んでいる場合、あるいは、環境の変化や本人の成長に伴いそれが現実に即さないものとなって来た場合において、それが自覚できていないからこそうまく手放せないでいるということが往々にしてある。それこそが、「親テープ」が思わぬところで生きやすさの邪魔をする「イラショナル・ビリーフ」となってしまう所以。

イラショナル・ビリーフとか歪んだスキーマとかがどこからきているかというのを辿れば、親から引き継いだ何らかの信念や姿勢であった。ということはよくある話なのである。

したら、それに我々はどう抵抗すればいいのかという話であるが、

カウンセラの癖にそれ言う?と思われるかもしれないけれど、

個人的には、カウンセリングよりもセラピーよりも、まずは日常のなかで多様な人と交わり、絶え間ない刺激の中に身を置くことが一番だと思う。

質の「良い」仲間、「善い」環境とかって言ってしまいたいところだけれど、ここでは同質性よりも多様性を強調したい。できるだけ自分をやわらっかく保つことなのだと言いたい。

時の流れの中で、善悪の磁場は変わるもの。

個々の善悪って、考えれば考えるほどに判じがたいんだもの。

「ダイバーシティ」が大事だと騒がれていることの理由は、企業でも個人でも等しくそういうことだと思う。多様な「声」を内蔵することは即ち、個をとりまく世界の森羅万象を受容する余裕になるのだ。

環境の変化の中で瓦解する企業というのは、あまりに硬直的な屋台骨が、重力の場が変わった世界で自重に耐えられずにボキッとなっちゃうわけなのであるが、個人でもその仕掛けは同じ。年を重ねる中で変な風になってしまわないためには、自らを常に疑問視し、常識を変えていく柔軟さが必要だ。

おまえはそれをできているのかと問われると「できてる」とドヤ顔して答える自信はない。が、すくなくとも、常にそういう危機感は感じている。

わたしは、自分が自己肯定感を見失いにくいタイプなのは、昔から無類の読書好きであった結果なのではないかと思っている。

映画や漫画もいいんだけど、読書がいいと思う理由は、能動的に意味をトレースして脳内にイメージを描くその労働は、その文字列が訴える「声」を自分の内に響かせ、情動を体験し、内在化させる、トレーニングそのものだから。

運動して筋肉つけてる人って、ほら、体壊しにくいじゃん?

それと一緒で、メンタルっていうのも、日ごろから鍛えておくと「他者の声」にぐらぐらしにくくなるんだよ。それは、内なる他社の声の中で最強ラスボスの「親テープ」に対しても。じわじわとその影響力を低減させる効果があるんだよ。

だから、一人でできる方策としてお勧めしたいのは、本をたくさん読むこと。ここは軽いビジネス書やハウツー本ではなく、読むのがしんどい古典に近い本とか、逆に心がふわっと浮くような詩集を勧めたい。

とはいえ、そんな乱読している暇ないよ!自力で頑張れるとこまでやったけど限界!誰に相談していいかわかんない所に来ているんだよ!というのが忙しい大人だと思うので、そういう時こそ、他者…プロの力を借りるのが早いというわけよ。

今回のBGMは、 "Always on the Run"。。。邦訳は「自由への逃走」。勝手にその「深み」を感じている。レニー・クラヴィッツはカッコよかったよ。

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