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「できるからする」慣習の落とし穴

ここ数年のリモートワーク浸透に伴い、インフラ整備が進み、どの企業も、社内外の会議をオンラインで行う機会が増えてきたと思います。

そこで最近わたしが気がついたのが、コンサルなどで入っていて「録画してもいいですか」と許可を求められることの、多いこと。

しかしこの手のリクエストについては、原則「録画はしないでください」とお断りしています。

なぜか。

物事を前に進めるための会議は、そこに参加するメンバーの集中が何よりも重要です。

・録画を見直せると思うと、集中力が落ちる。後で確認しようと思って、曖昧なことを放置する(そしてどうせ確認しない)

・後でまじめに見直しても、その時間自体が情報を漫然となぞる無駄。

「参加できなかった人にも見て欲しい」という意見もありますが、相互の話し合いで物事が解決したり方向性が決まったりする会議の不在者への情報共有は、議事録にポイントだけまとめて読んでもらう方が数倍時間効率が良いです。

・参加できなかった会議に、同じ時間を費やして録画を見るなんて、かったるいでしょ。結果だけ知りたいでしょう。

・参加した人は伝えるためにまとめることが頭の整理になるし、解釈のブレを防ぐことにもなります。

だから議事録スキルは、研修素材になるのです。

議事録編集はそのうちAIがやってくれる時代が来るかもしれませんが(実際それっぽいサービスもリリースされてきていますが)、

議事録作成というのは、その会議の枠に収まらない時系列の出来事や、参加者それぞれの立ち位置、理解度、プロジェクトの全体感をふまえて要点を絞り込む、高度にヒューリスティックな仕事です。

効果的な議事録をまとめることにつては、まだまだAIよりも人間に軍杯が上がる時代が続きそうです。

そもそも、わたし、外資系勤めの最後の方は、シンガポールレポート、シドニーレポートで海外とのやりとりが日常でした。その環境では会議は当然VCですが、誰も打ち合わせを録画して後から見ようなんて思ってなかったです。

その場で集中しきり、発言して付加価値を出し、結果を端的なログにまとめて即時にシェアするのが効率の良い仕事の進め方。

なんなら会議に顔出して一言も喋らない人は、後から議事録見てフォローしたほうが時間の無駄にならないのにね、ってくらいで。

もちろん、アーカイブ視聴が条件のインプット研修や、一方的に話す講演会やTEDのようなプレゼン、あるいは証拠目的で参加者の発言を押さえておきたい会話がある場合は別ですが、普通の打ち合わせの録画って、基本的にあまり意味がないどころか、集中を損ない余計な仕事を増やす悪しき慣習であると思うんです。

まあ本件にかぎらず、わたしたちはつい、できることをやってしまう慣習に囚われがちです。

そしてITでできることってどんどん増えてきているので、本来は便利に使うべきそれに、逆に振り回されてしまうことのないように、

それは、機能的に「できる」けれども、ほんとうに「する」価値があるのか?

時々立ち止まって見直してみるといいと思います。

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