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キャリコン学者図鑑

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キャリアコンサルタントに関連する諸学者とその理論を、試験対策的情報からはちょっとはみ出しながら紹介。まずはこちらの記事から! https://note.mu/ukys/n/nab…
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記事一覧

ライフキャリアの成功

わたし、企業をやめてもう5年です。光陰矢の如し。出産だの病気だの、割とドッカンドッカンやらかしつつも、なんとか元気にやっています。 1. 上場企業役員のスキルマトリックスこの夏に東京証券取引所が、上場企業に対して、年内を目処に取締役のスキルマトリックスを開示することを要請しました。 北米では2000年代の金融危機を経て採用する企業が増えてきたのですが、ここ数年加速している国際的なESG投資の流れを受けて、日本もコーポレートガバナンス強化の一環で採用されたということのようで

個人的嗜好モリモリの「キャリコン学者図鑑」目次(随時更新中)

「キャリコン学者図鑑」は本来、自分の国家試験受験にむけて調べたことを書き散らしていたのですが、意外に多くの方に読んでいただけて、時々「リスト使っています!」という有難いメッセージを頂きます。そこで、過去に書いた記事に、できるだけ当時のノリを損なわない範囲で筆入れしながら目次を仕上げていくことにしました。 目次は基本50人の学者リスト(←こちらのページからダウンロードできます)に対応して、確認・更新が終わったものからリンクを付けます。《追加予定》は、このシリーズが完成したらリ

世界を変えたオープン・ソース - アドラー

日本では書籍「嫌われる勇気」で知られるようになったアドラー。2013年初版のミリオンセラーです。 それまでフロイト・ユングは知られていてもアドラーは無名だったそうなのですが、2017年に心理学の勉強をはじめた私は、いつ彼の名を知ったか全く思い出せません。(全く興味なかったのです、この分野に。) しかし、当時から今(2020年)に至る7年間に、アドラーの説く「今、ここ」につながるマインドフルネスのブームや「共同体感覚」の実践ともいえる国連のSDGs(Sustainable

想定外を言い訳にしない - ギンズバーグ

イーライ・ギンズバーグは「個人のキャリア形成は、生涯にわたって行われる長期的なプロセスだ」と言いました。長寿社会の今でこそ、それはそうだと誰もがうなずきますが、彼は100年近く前にそう言ったのです。 Eli Ginzberg (1911-2002) ギンズバーグはコロンビア大学の学生に対して、経済学者・精神科医・社会学者・心理学者の研究グループをつくって面接調査を実施して、その結果を職業的発達理論にまとめました。当初の論旨は以下3点: ①(職業選択は)青年期に行う意思決

親の養育態度で職業選択が決まる?: ロー

私選・キャリコン試験頻出学者50名のリストの中には、結果として数えたら女性が6名います。ちがう言い方をすれば12%。男性中心に発達してきた資本主義社会のキャリア理論だから仕方ないね。 ちなみに、東大学部生の女性比率は20%弱(2018年)、国立大学の女性教員比率は16%(2016)、正規雇用労働者の女性比率は33%(2017)、上場企業の女性役員比率は3.8%(2018)…です。 だから、女性で名を残す人は同性のよしみで紹介したくなるはずなのだけど、米国の臨床心理士のロー

理想のマネージャ- ブレイク&ムートン

キャリコン試験では、組織の中のリーダーシップ論も出題されます。 リーダーシップ論は古くはプラトンの「国家」で語られる哲人王にはじまったと言われていますが、出題の可能性が高いのは1960年以降の二元論。 今回のコラムでは、R.R.ブレイク & J.S.ムートンの「マネジリアル・グリッド理論」(1964年)と、それによく似た三隅二不二(みすみ じゅうじ)の「PM理論」(1966年)を比較紹介します。 こういうマトリックスって、軸選びのセンスが命ですよね。 どちらも、①(生

キャリコン学者リスト更新

いつのまにか「キャリコン学者リスト」の人気がじわじわと出ていて、サポートしてくださる方も現れるようになったため、リストのマイナーなエラーを修正し、人数も48人から50人に変えた新バージョンに差し替えました!(上記リンク先のページからダウンロードできます) 知らない方にも役立っていると思うと嬉しいですね。 ありがとうございます。 Version1をリリースしてからまだ1年たっていないのですが、この短い間に、みんなが大好きなクランボルツ先生が亡くなられました。既存の型を破り

Winter Is Coming! - レヴィンソン

東京大学の柳川教授が唱える「40歳定年説」が、最近話題です。 急激な変化に晒された企業側が終身雇用制を維持できない状態になってきている一方で、働き手の人生は100年時代とか言われている。いい感じのライフ・キャリアを積み続けるために、40歳というエネルギーのあるタイミングで、一度、人生後半戦に向けて本格的に学び直しをするのは多くの人にとっていいことですよ、という話。個人的には大変共感できます。 ただ、この「40歳前後に自分と向きあうことが大事」という視点自体は、実は、目新し

人生脚本のアップデート- エリック・バーン

経済学の「ゲーム理論」を心理学分野に応用し、フロイトの精神分析を下敷きに「交流分析(Transnational Analysis)」を創ったのは、カナダ人の臨床心理学者エリック・バーンです。 出てくるBioがオシャレっぽい。エリックって呼んでいい? 交流分析は、最初、その独創性ゆえに本家の精神分析学会からは拒絶され”通俗心理学”とも揶揄されたそうですが、1970年代から徐々に支持を得るようになって、今では教育分野や企業研修などでも活用されています。 「ゲーム理論」も、か

チョビ髭 - ソーンダイク

”Whatever exists at all exists in some amount. To know it thoroughly involves knowing its quantity as well as its quality.”(およそ存在するものは、何らかの量をもって存在する。完全に知るということは、その質的側面だけでなく量的側面を知ることも含む) と言ったのは、「教育測定運動」の父と呼ばれる心理学者のソーンダイク。「俺の辞書に”測定不可”と言う言葉はな

不協和が消えるまで - ヒルトン(と、フェスティンガー)

キャリコン試験において、プロセス重視の意思決定理論ということで、ジェラッド、ティードマンあたりと同カテゴリで出題されることがあるのが「認知的不協和理論」を意思決定理論に応用した、ヒルトンです。 同名の長距離ランナーが有名なため、顔写真同定に苦労した! 彼の理論のもととなる、心理学者・フェスティンガーの「認知的不協和理論」のほうが有名なのでまずそちらを簡単に紹介すると、 人は、複数(通常は二つ)の要素の間に不協和が存在すると不愉快なに感じる。そこでどうするかというと、一方

日本発の心理療法 - 吉本以信と森田正馬

「国際的にプレゼンスのある日本発の心理療法2つ」といえば? その答え(2018年現在調べ)である、吉本以信と森田正馬を紹介します。 1.吉本以信の「内観法」吉本以信(よしもといしん)は、浄土真宗の精神修養法「身調べ」から宗教色を除いて独自の「内観法」を編み出しました。 その基本は、自分がまわりの人に対してどうだったのかという事実について、「してもらったこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」の3つの問いに答えていくというもの。 元祖・自己啓発セミナーという感じです

健康とはなにか - ビアーズ

Q.「健康」って、どういう状態でしょうか? A. WHOによる定義は、「健康とは、ただ病気でない・弱っていないということにとどまらず、肉体的にも、精神的にも、社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」 Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity. - as of 2019

アセスメント・ツールを使う意味 - ホランド

以前、シャイン博士の8つのキャリア・アンカーを紹介したが、それより前に、人の性格特性を6種類の「RIASEC(リアセック)」に分類して「個人の行動やキャリアは、性格特性と環境との相互作用で形成される。自分の性格特性と一致した職場で仕事をすると、高い満足度が得られる」と言ったのは、心理学者のホランド博士。 シャインの分類が企業内キャリアに関する人の内的な価値観(セルフ・イメージ)に焦点を当てたものであるのに対して、ホランドの職業選択理論は個人の興味関心をインプットしたらそれに