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「顔の見えるモノづくり、あなたとわたしで作る物語」コミュニケーションツールとなるレザー製品をつくりたい
「やるべきこと」「やった方がいいこと」から距離を置いてみようと、東京から船で24時間かけ、わたしは単身で離島に向かった。たくさんの人や生き物、自然と触れていく中で「自分の人生を生きていいんだ」ということに気づいてゆく。
このコラムでは、人や自然がのびのびと共存する小笠原諸島・父島で出逢った、どこかで人生振り切れちゃった、愛すべき変態たちのストーリーを綴る——
記念すべき第一回目は、いつも一緒にゆるく楽しい時間を過ごしてくれている、この人!
フルネーム:近藤 綾乃
1984年生まれ。新卒で入社したテキスタイルデザイン会社で、手がけたデザインの最終形態や購入者の顔が見えないことをに違和感を覚え「誰がつくったのか分からないものであふれている今、作る人と使う人が互いに顔を知っているモノづくりがしたい」という想いを抱く。様々な経験を経て、「顔の見えるモノづくり、あなたとわたしで作る物語」をテーマとしたレザークラフトブランド『U&M』 を小笠原諸島・父島で自主展開している。
全てあやの氏の手づくりで制作されたレザーグッズ。温もりのある手触りで、友人たちを中心に口コミで広まり、島民の間で親しまれている。>>その他の製品はこちらから
”MUST”に縛られていた20代
➖改めて、今現在どんな生活を送っているんですか?
あやの:元々、小笠原にある宿で仕事をしていたんですが、COVID19の影響でニート生活。
なので、これまで並行して進めていた自身のレザーブランドU&Mの作品づくりに力を入れています。現在「1日1作品」をベースに、レザー小物の制作、ネットでの販売準備をしている段階です。レザー製作に加え、家庭菜園やヨガを生活に取り入れたりと、自分の理想のライフスタイルへ向かう実験も行ってます。(笑)お陰で毎日平常心ですね!
➖それは多くの人が望むライフスタイルかも…。なにが日常の平常心を保たせているか、もう少し具体的に教えてもらってもいいですか?
あやの:まずは、無理をしないということ。仕事100%の生活にもなっていないし、やることを全部自分で決めている、というのがいいのかもしれないです。あと、自然が近いから、すぐ泳げるし散歩も楽しい。加えて人と会わずにいると、自分を解放するような感覚でいられます。
➖確かに、気づいたら無理してることってありますよね。自分の理想がハッキリわかってるってことは、その逆のときもあったんですか?
あやの:実は私、今はハッピーそうに見えるけど、実は20代までずっとネガティブだったんです。
東京でのサラリーマン時代、終電ギリギリまで働いて、夜中も仕事して出勤する日々。東京が嫌で二度目に転職したレザー会社で働いてた時なんかは、夜中、ハッと気づいたらそのままガードレールに突っ込みそうになってたり…。
どちらの会社も朝から晩まで働いて、食事はいつもコンビニのお惣菜。。体も精神もボロボロな状態でした。
➖そうなんですね、すごく意外!そのネガティブなところってどこからきてたんですか?
あやの:なんだか、何かを達成しなきゃと、常に何かを焦って探している感覚だったんです。注意されるたびに自分を否定していたり、”WANT”じゃなくて”MUST”だらけで、 自分を追い込んでいました。
思い返せば、わたしは満員電車なんかも本当に嫌いで、乗りたくなかった!けどそういうことをやめるって、社会のレールを外れることになるから、勇気が持てずなかなか決断できないんですよね。
失恋と死の意識をきっかけに抜け出せた「自分を否定すること」
➖満員電車、わたしもすごい嫌でした。 あやのちゃんがレールを外れる勇気を持てたキッカケはどんなことだったんですか?
あやの:それが、失恋なんです!笑 すごく好きな人がいたんですが、辛い恋愛で....。傷ついても、泣いても、全部許しちゃってたんです。少し強く言われると、自分を否定されていると感じてしまったり。
私自身、以前は弱気で自信もなかったから、違和感があっても相手の顔を伺って何も言えず、当時は、身も心もボロボロでしたね...。
あともう一つのきっかけは、健康診断で再検査を通告された時。初めて死という言葉を真剣に考えました。
「私は本当にやりたいことをできているのか?」「このまま死んで後悔無いのか?」って。ちょっと大げさですけど。笑この2つの出来事が、私の人生を変えていく大きな一歩になりました。
色々あって、当時の彼との関係を断ち切れたとき、仕事もやめる踏ん切りがついて、興味のあったワーホリに行くことを決断しました。当時30歳。ギリホリってやつです。
ハワイ島では、毎日心からの笑顔でいれる自分がいた
あやの:ワーホリに行って半年くらい経った時、子供の頃の夢だった「野生のイルカと泳ぐこと」を実現するため、ハワイ島でドルフィンスイムのガイドのお手伝いをすることになりました。この時の体験が本当の転換点でした。
あやの:そこでは、人生で初めて、自然に対して「ありがとう」を言えていたんです。毎日笑顔で自然の中にいるだけで幸福だったし、その事に対して、すごく感謝の気持ちでいっぱいでした。今までに無いほど穏やかでポジティブな自分を知れたんです。
本当にハワイ島という自然のパワーは凄い!沢山の元気を貰いましたね。この時に、今までの暮らしには戻らなくてよいと決めたんです。
➖いつもハワイ島への愛が伝わってくるけど、原点の場所だからなんですね。もし他にも、ハワイ島で得た気づきがあったら教えてください。
あやの:ハワイでは、自分を俯瞰してみる方法も知りました。
ある日、よく通ってたケータイ屋のおじさんに「あやのは、強く言われたりすると突然頭が真っ白になることがあるよね。もしかして親から否定されてた?」って言われたんです。確かに、小さい頃から無口な父親に的を射たことを言われると反論できなかったし、社会人になって、上司になにかを強く言われた時も全く同じでした。
ずっと、自信がなくて思ったことを相手に言えない所が嫌だったんですが、そのおじさんの一言のお陰で原因がわかって、自分の嫌いな部分と向き合えるようになったんです。あ、ちなみに、家族はみんな仲良しですけどね!
あと、有名な占星術の人に占ってもらったのも面白かったです。
「あなたの20代までの人生は大変だったけど、これからよくなるわよ!」的なこと言われたんですよね。確かに、今まで辛かったぶん最近は順調な毎日を過ごしてる。
人生は、点だけじゃなく線で繋いで全体をみてみると、なるようになってるんだなぁと思いましたね。
バイロンベイで見つけた、やりたいことが湧いてくる自分
➖人生を全体でみるとなるようになる…そういう観点、辛かったり大変な時は特に持っていたいなあ。ハワイ島のあとは、バイロンベイに行ったんでしたっけ?
あやの:うん、ハワイ後のバイロンベイでの滞在は、深く自分と向き合える時間になりました。職場と家が隣同士だったから、ほぼひきこもりだったんですが、それが自分にとってすごく良かったんです。
レザー小物を作ったり、ギターを始めてみたり、とにかく外からの刺激でなく自分の内側から湧いてくるやりたいことに没頭する毎日。1人の時間を大切にする中で、自分は本当はこういうことが好きなんだ、と気づけました。
実現していく中で、年齢や性別、環境は関係ない。失敗したって良いじゃんやろうって、自分のマインドを動かす方法も分かって来たように感じます。
➖確かに都心は人も催し物も溢れかえっていて焦る感覚、わかるなぁ。内側から湧いてくるって、どんな生活環境だったんですか?
あやの:住んでいたところは、バイロンベイから車で30分くらい離れた、山の中のフェデラルという小さな街でした。
あるのはただ大自然のみ。朝7時から午後2時くらいまで働いて、あとは自分のやりたい事に没頭する。今思えば、本当に贅沢な環境でした。
私の住んでいたシェアハウスは、庭で鶏を飼っていたり、少量だけど野菜や果物も自給していました。あとは雨水を貯める貯水槽があったり、トイレもコンポストトイレ(※)だったし、周りもオーガニック食材が当たり前に出回っていたんです。
外を歩いている時に人々の様子を見ていると、みんな仕事を14,15時には切り上げて、家族と過ごしたり、サーフィンをしたり、とにかく縛られない生き方をしていました。ああ、こんな生き方もあるんだな、自分が思うように楽しく過ごして良いんだなって、そこで多様な生き方やライフスタイルにも興味を持ったんです。
(※人間の排せつ物を微生物の働きによって分解・処理するトイレ。)
相手ために作ったレザー、喜んでくれることが純粋に嬉しくて、楽しい。
➖自分と向き合った時間でレザーを作りだしたんですね。
あやの:はい、前のレザーの会社では、直接製作に関わってたわけではないんですが、店舗の責任者だったので横で工程をよく眺めていました。
そこで、今度は自分でもやってみようと思ったんです。バイロンベイは日本ほど、レザーや工具の種類がなくて、探すのも一苦労でしたが、なんとか最低限のものを揃えて、独学で作り始めました。最初は友人がオーダーしてくれたものを作ってたかな。
バイロンではよくマーケットも開催されていたんですが、そっちはなかなか出品する勇気が出ませんでした。そんな私を、台湾人の友達が「やっちゃえやっちゃえ!!」って勢いづけてくれて、作品を友人とバイロンのマーケットに出品するようになりました。
➖自分で作ったものを買ってもらえるのって、どんな感触なんですか?
あやの:バイロンでも小笠原でも、友人やそのまた友人にリクエストをもらいながら、オーダーメイドで制作することが多いんですね。
湧いてきた相手のイメージで作品をつくると、相手がとっても喜んでくれてこちらもすごく嬉しいです。自分が作ったものがコミュニティのツールになるのも、おもしろみの一つですね。
顔が見える販売で、レザーに関わるモノ・コトのストーリーを伝えながら、小規模で永続的なライフスタイルを目指したい
➖レザー製作を通じて、あやのちゃんが伝えたいこととか、ありたい自分ってどんな自分ですか?
あやの:レザー製作は私のライフスタイルの一部で、コミュニケーションのツール。何度も出てくるキーワードだけど、お互いの顔が見えるって部分が本当に大切。
今の世の中は資本主義の世界で、お金優先で作り出された物で溢れているけど、私はその真逆の視点で物を作り続けていきたいですね。
作られたバックグラウンドとか、製作した人の思いとか。そういったストーリーを1番大切にしたい。そして、それを使う人が、今度はストーリーを作っていく。もちろん、物や製作過程に対する対価として、今はお金をもらうことになるけど、何ならお米とか、他の技術で物々交換なんてことが出来たら面白いですよね。
大量に作られて捨てられる、今までの生産社会のレールから外れた物作りは、色々と葛藤や悩みが尽きないけど、諦めずに理想を持ち続けて行きたいです。
小規模で永続的。それは、レザー製作だけでなくて、私自身の衣食住、ライフスタイルの理想でもあります。
➖小規模で永続的かぁ。確かに、自分が心地よいと思えることは、無理なくずっと積み上げていけますよね。では最後に、今後の展開を教えてください!
あやの:今まで通り「顔が見える」ということを大切にしながら、オーダーメイドであったり、小笠原のアーティストとコラボした作品も展開していきたいですね。
あとは、小笠原の資源を利用して、島ならではのアイテムを作るとか。。現在、実際に島で藍染をしているさとみんさんという方とコラボして、藍染レザーのコインケースも試作中です!
小笠原という場所は、今まで考えて見えてきた事を実現するのに良い場所だと感じているので、しばらくはここで、自分のライフスタイルを確立するために滞在してみたいと思っています。
まだ、島での販売がメインになっているけど、いずれは他の場所でも出店販売出来たら良いなと、イメージしながら日々ワクワクしています。
弱気な自分と満たされている自分、双方を受け入れることができたからこそ生みだせたモノがある。
自分も相手も大切にするため、人生の選択肢を自分でつくり出していくということを教えてくれた、あやのちゃんのストーリーでした!
▼優しく温かみがあるあやのちゃんのレザー製品の詳細はこちらからご覧いただけます。
https://www.instagram.com/u_and_m_happiness/ (※オンラインストア開設準備中)
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