母校でのスピーチ 進路について

「進路をテーマに30分くらい話をしてくれないか」
中学校の恩師から、母校でのスピーチをお願いされました。

これから高校生になる子供たちに向けて、将来どう働くかについて考えるきっかけを与えたいということでした。
そのために、高校時代どんな生活をして、今どんな仕事をしているかを話してほしいと。

子供たちに向けて話したことをメモとして、残そうと思います。

自己紹介

私は、大学では経済学について学んでいましたが、卒業後は航海士になりました。
航海士という仕事は、船に乗って、自動車・コンテナ・油など様々な荷物を運ぶ仕事です。
日本だけでなく、世界中色々な所へ船で行きます。
例えば、オーストラリア、中国、韓国、ヨーロッパ、エジプト、アメリカなどへ行きました。
生活サイクルは特殊で、「6カ月船上で働き、3カ月陸上で休む」というサイクルです。

今日は、そんな航海士になった私が、中学生の時から今までどんなことを考えて、進路を選んできたか話そうと思います。

「進路は、いつか決断しなければならない」

無限の可能性があると思っていた中学時代

私は中学生の時、進路について考えたことはありませんでした。
周りの友人の中でも、将来どんなことをするか決めている人は殆どいませんでした。

卒業式・入学式など節目節目のたび、大人たちは言っていました。
「君たちには無限の可能性がある。君たちは頑張れば何にでもなれる」

これを聞いて、私は考えました。
「そうか、俺は何にでもなれるんだな。楽しみだな」
将来の選択肢がたくさんある状態が心地よかったんだと思います。

最初の選択 文系と理系

特に進路について、考えないまま高校生活を過ごしていたら、
ある時、先生から言われました。

「文系と理系どっちを選択するか、この紙に書いて提出しろよー」

私は数学が得意だったので、理系で提出する気満々でした。
しかし、その話を祖父に話すと怒られました。

祖父「お前、文系と理系で、将来できる仕事とか勉強が変わるぞ。
   そんなテキトーに選んでいいのか?」
私 「え、そうなの?」

文系・理系の選択によって、選択肢が狭まることがすごく嫌だったことを覚えています。

何も考えずに理系を選択するつもりでしたが、理系と文系の仕事について調べました。その時、初めて進路について考えたのです。

理系科目の得意な私でしたが、文系の仕事の方が興味深いと感じたので、文系を選択しました。
その時は、とても1つになんて絞れませんでした。

進路の決断 就職活動

大学生活を淡々と過ごしていましたが、就職活動の時期になりました。
それまでは、何にでもなれると思っていて、決断することから逃げていました。しかし、ついに、進路を1つに絞らなければいけない時が来たかと思いました。
すごく嫌でしたが、腹をくくって、真剣に考えました。

仕事を選ぶには、まず世の中にどんな仕事があるか知る必要があります。
本を読んだり、会社説明会に出たりして調べました。

その時、初めて航海士という仕事を知りました。
広大な海を巨大な船を運転するという仕事に、ロマンを感じました。
未知の場所に未知の方法で行くということにワクワクする。
航海士になったら、どんな経験ができるか想像もつかない。
想像がつかないから、面白そうだ。

その後、航海士の人に直接話を聞きに行き、過酷な仕事だと知りました。

過酷さを伝える例として、面接で聞かれる質問を上げます
「船に乗っていたら、親の死に目に会えないかもしれないけど、どう考えている?」
「あなたが船長だとして、海賊に襲われたらどうする?」

しかし、それでも、やってみたいという気持ちの方が大きかったです。

航海士になった後の話

航海士として、今はとても楽しく働いています。
船の運転は難しいですが、難しい分やりがいを感じます。
シンガポールや中国など、実力がなければすぐに事故を起こしてしまうような海域にもたくさん行きました。
運転中は集中力が高まり、4時間が一瞬のように感じます。

船の点検も面白いです。
経験を積んで知識がつくと、船の見え方が変わるんです。
知識があると、タンクや配管の中で何が起きているか分かるので、透けて見えるような感覚になるんです。
同じ船なのに、自分の知識で見え方が変わるのが楽しいです。

まとめ

私が今日言いたかったことは「いつか進路を決断しなければならない」ということです。
私が決断したのは、大学卒業前の就職活動の時期でした。
さっき話したように、中学生の時は、進路について真剣に考えたことはありませんでした。おそらく、みんなの中でも、将来何をしたいか決断している人は少ないと思います。

しかし、みんなの年齢の時に、既に決断している人もいます。
今一緒に働いている航海士の先輩・後輩に話を聞くと、
「子供の頃から、航海士になりたかった」という人はバンバンいます。

中学生の時期に、どうすれば航海士になれるか調べて、航海士になるための学校に通うことを決断したそうです。

せっかくの機会なので、みんなも将来について一回考えてみてはどうでしょうか。
両親に仕事について聞いてみたり、世の中にどんな仕事があるか調べてみたりしてはいかがでしょうか。

以上

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