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映画「ルックバック」〜とにかく書け〜

「絵が上手いこと」でちやほやされるのは小学校の3〜4年までだ。その時期は、絵の上手い子の机に人だかりが出来ていた記憶がある。コミュニケーションが得意じゃない子は、自分の書いた絵を机にさり気なく出しておいて、クラスメイトに"発見"されるのを待つ(「机SNS」)。そういう子は、たとえ勉強や運動ができなくても周りから一目置かれていた。ところが、こういう文化系の人間にとっての幸福な状況は小学校の高学年になると一変する。中学進学を控え、勉強やスポーツを出来る人間の価値が高まると、芸術系の特技はlook downされるようになる。絵が上手いことは「凄い」(Cool!)から、「暗い」(オタク)に変わってしまう。残念なことに、この評価軸は学生の間ずっと覆ることがない。中学校に上がる前、芸術系の習い事(絵、音楽、書道、バレエなど)を辞めてしまう人が多いのはこういう事情があると思う。映画でも藤野(主人公)に対して友人が「中学に入ったら、絵描くの辞めた方がいいよ?」と忠告するシーンがある。藤野は元々スポーツが出来て、明るく、クラスでも人気があったが、絵の練習に熱中したことで、学校の成績が落ち、友人との付き合いが悪くなり、家族からは「いつまで絵描くつもり?」と心配されるようになった。結果的に、彼女は一度絵を描くのを辞めている。この、誰からも評価されない時期(小学5,6年〜大学)に手を動かし続けられるかどうか?は、表現をする人間が最初にぶつかる壁かもしれない。普段の生活に戻った藤野だったが、京本(隣のクラスの不登校生)と知り合ったことで再びマンガへの情熱を取り戻す。京本は、(藤野と同じく)学生新聞に4コマ漫画を連載し、小学生にしてプロ並みの緻密なタッチの風景画を描いていた。圧倒的な才能の差を感じていたが、その当人から初対面で「藤野先生!」と慕われ、過去の作品を絶賛される。「私は藤野先生のファンです」と。そこから彼女は腹を決めた。中学生になってからも漫画を描いた。クラスメイトと交流を持つことなく、部活に入ることなく、授業中でも漫画を描き続けた。そして、中学在在中、京本との合作で漫画賞に準入選を果たす。
※ここまでで作品の前半

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