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フランシス・フォード・コッポラ「地獄の黙示録」(1979)

 この作品も通しで見たのは初めてである。でも、日本公開時に話題になったことはよく覚えている。The Doorsの「The End」がテーマ曲になったのも衝撃的だった。コッポラ監督(1939-)にとっては、「ゴッドファーザー」(1972)、「ゴッドファーザー Part Ⅱ」(1974)以降の大作となる。

 ベトナム戦争といえば、かつてホーチミン(昔のサイゴン)に行った時、泊まっていた米国系ホテルでベトナム人スタッフに「あなたたちは、アメリカと戦って勝った、数少ない国ですよね?」と聞いたら、「いいえ、私たちはアメリカと共に戦って負けたのです」と言われて、ハッとしたことがある。南北に分かれてベトナム人同士が戦ったことを理解していない軽率な発言だった。そしてサイゴン市民の複雑な気持ちも伝わってきた。北に敗れ、北の指導者の名前に変わった街の人々の無念を考えた。いまでもお店の名前には、サイゴンとつくものが少なくない。この映画ではこうしたベトナム人の葛藤は1ミリも描かれていない。

 映像的には、戦場(ジャングルなど)と人間の顔のアップとのオーバーラップが、手を変え、品を変え、次々と繰り返される。また暗い画面に(戦場だ)、照明が全身を映さないカットのオンパレード。不気味な印象は、ちょっと「第三の男」を連想させるところもある。

 ストーリーはとても難かしい。ベトナム戦争という極限の戦争の中で、米兵はみなどこか狂っている。ベトコンの死はまったく物質的に扱われ、米国人の死とは明らかに描かれ方が違う。まさに戦争での、敵・味方とはそんなものなのだろう。

 マーロン・ブランド(1924-2004)が短いけれど、いい仕事をしている。昔「欲望という名の電車」を見て、若きブランドのカッコ良さに痺れたが、ここでも怪演は止まらない。そして主人公を演じたマーティン・シーンは、息子のチャーリー・シーンよりイケメンだった。まあ、そんな感じでしょうか。

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