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イギリスの小学校 演劇(ドラマ)の発表会は、とても本格的。日本の小学校でも取り入れたら良いのにと思います。

お父さんです。

このブログは地元の公立中高で学び、地方大学を卒業した庶民派お父さんがひょんなことから子供二人の都内私立小学校受験を経て、またまたひょんなことで子供たちがイギリスのボーディングスクールに合格するまでの道のりを綴っています。

今回の記事について                                      
今回の記事は、イギリスの小学校における教育で何が重視されているのかについて書きます。小学校だけでなくイギリスの小中高の全てに共通する価値観だと思いますが、勉強だけでなく、運動(スポーツ)、ドラマ、アート、音楽も同じように大切に扱われているという事を書きます。皆さんの参考になれば嬉しいです。


さて、前回の記事でも書いた通り、イギリスの小学校では「勉強だけを頑張りましょう」という感じは一切ありません。我が家の子供たちが通っていた学校でも当然のようにそうでした。

「勉強も大事だけど他の事も同じかそれ以上に頑張る」

というスタイルです。いわゆる中学受験的なものはありますし、それはそれで熾烈な競争ですが、それでもむしろ勉強だけをしている子供はあまり評価されず「勉強は良いけど、他の事はどう?」と言われる感じです。我が家の子供もいわゆる名門と言われるボーディングスクールを受験しましたが、その時も勉強の事より「今学期のサッカーでは何点取ったの?」とか「ラグビーのポジションはどこ?」などの質問の方が多かったです。

評価側の基準が『勉強だけではダメ。その他の事も同等以上に評価する』という姿勢を明確にしているからこそ、それを受けてプレップスクール側もそのように生徒を導くという姿勢ができあがっています。

そんな中で具体的にどんな事を普段学校でやっているのかをですが、これら①~④の中でも私が特に日本との違いに驚いたのが②のドラマ(演劇)に対する取り組みです。

①スポーツ:1日1コマは、ほぼ必ずある。
②ドラマ :演劇。1学期に1度発表会があり必ず全員参加(計3回/年)。 
③アート :授業は週に1度程度。大体2コマ連続なので、2日に1コマ相当。
④音楽  :週に1コマ程度。

②ドラマについて
「ドラマっていったい何?」と思うと思いますが、簡単に言うと「演劇」です。このドラマ(演劇)というのは、日本では考えられないくらい重視されている感じがします。教育の目的としては

「人前で自分の言葉で何か伝えたい事を伝える事」
「演劇で何か(誰か)の人生のイベントを追体験する事でそこから学ぶ」
「関節の動きや呼吸法、また発生方法を学ぶ」

と言った感じで、呼吸法や発声などの他にも、子供たちが今後人間として成長するための必要不可欠な能力の一つとして捉えられているイメージです。特に年に2₋3回ほどあるドラマの発表会については、学校としての取組みがかなりスゴイので、今回はその詳細について書きたいと思います。日本の小学校にはあまり無いカリキュラムだと思いますがとてもおススメです。日本の小学校でもぜひ取り入れたら良いのになぁと思います。

またLAMDAと呼ばれる、世界的に有名なドラマスクール(演劇学校)が定める特別なカリキュラムの履修や、この演劇学校への進学も将来の選択肢としてあります。ちなみにLAMDAというのは以下の略です。
”London Academy of Music and Dramatic Art"。さらに驚く事にLAMDAの(演劇学校)の校長はあの有名な俳優のベネディクト カンバーバッチです。

ベネディクト・カンバーバッチ本人のインスタグラムより


少し話が逸れてしまいましたが、それほどにDrama(演劇)の奥行きは広いという話をさせて頂きました。

演劇の授業の話題に戻ります。まず大前提としてドラマ(演劇)と言っても一部の子供達だけが役を与えられてやるわけではなく、全員に何らかの役が割り当てられます。セリフの多い少ないはもちろんあるのですが、役割があり且つ全員参加なので、ある意味で強制的にチームワークが求められる形になります。その上で実際にドラマの準備に入っていくわけですが、例えば娘がYear6の時に参加した時の演目は「シンデレラ」でした。当然ながら誰もが知る名作ですが、この時の準備は本番の2か月くらい前から始まりました。

まず台本が全生徒に配布されます。A4サイズで60-70ページくらいの本格的なものです。「こんなのどうやって覚えるんだろう」というくらい主役の子は本当に大変だと思います。ただ全生徒が全体の流れを理解する必要があるのために同じ台本が全員に配られるのだろうと思います。次に指導する先生ですが、小学校なのにも関わらず、Drama専門に指導する先生が学校にいます。もちろん教師なのですが元々演劇を大学で専門で学んでいたという女性の先生でした。その先生の指導の下に、本番直前の2₋3週間は授業が終わった16時以降にも1時間ほど居残り特訓がありました。

我が家の娘も、そんなにセリフは多くないもののそれに参加し「今日は上手くできた」とか「でもここの部分は難しいの。特にここのセリフの言い回しがすごく難しくて」とかブツブツ言いながらも練習した事を一生懸命に私にも教えてくれました。

そうして迎える本番当日ですが、本番の1ヶ月くらい前から親に対して「この日が本番です」という告知がされます。参加しやすいように16時30分くらいからの開始スケジュールになっていて、ほぼ全ての生徒の親が参加する感じです。働いている方のお父さんやお母さんもこの日は早めに仕事を切り上げて意気込んで参加している感じです。

幕が開く前には緊張感が漂い、いざ本番の幕が開けるとビックリです。
まず衣装がメチャクチャ本格的。生徒一人一人にあったシンデレラの時代の衣装を着て生徒たちも躍動しています。

本格的な衣装と躍動する生徒たち(小学校4年)。右はシンデレラが継母にイジメられるシーン

またそれぞれの場面で必須な音楽はバイオリンやピアノなどの生演奏。
「マジか」と思いました。こういう生演奏ってプロの人がやる時だけのものかと思っていたので相当に驚きました。各場面ごとに最適な音楽が入り非常に効果的に場面展開や物語を促す役割を担っており、「あぁ、こうやって演劇というものは成り立っているんだなぁ」と完全にド素人の私でも理解する事ができました。

舞台袖にいる生演奏のメンバー(大人)達。ピアノ、バイオリン、ドラムなど6名体制

そうこうしている内に物語はしっかりと進んでいき、物語のクライマックスである舞踏会の場面に移ります。ここでも多くの子供たちがドレスや舞踏会っぽい服装を着て完全に見ている大人たちも舞台に引き込まれます。

舞踏会の様子①
舞踏会の様子②

更には定番のガラスの靴がピッタリ履ける人のシーンに移りますが、ここでも完璧に、イジワルなお姉さん達が頑張って履こうとして履けないシーンなどが展開されます。

ガラスの靴を履こうとして履けない定番のシーン

そうして、最後にハッピーエンドを迎えるという流れです。

最後のシーンが終わったあとの挨拶のシーン

もうここまで来ると観ているこちらからすると、「子供達が頑張ってカワイイね」という大人が子供を見守る目線ではなく完全にブロードウェイのプロのミュージカルを見ている気持ちになります。衣装もとても本格的で、音楽も生演奏があり、照明や舞台転換なども大人のサポートが入って本格的にされているのを見せつけられ、これがイギリスでのドラマ(演劇)の授業なのだなぁと改めて実感させられました。私がそれまで知っていた日本の学校での演劇のレベルでは無いです。ドラマ(演劇)というものを学校教育に当てはめた際に、冒頭に書いたような目的を達成するために本気で取り組むという事の意味を初めて実感しました。これが一つのきっかけとなって娘はドラマに対する興味が大きく沸いたようですし、何かを人の前で披露するという事について一皮剥けたというか一気に成長したなぁという感じがしました。改めて書きますが、ドラマ(演劇)の意義を理解した上で、こういう授業の取り組みを日本の小中学校でもやれば良いのになと思いました。

今回も長々と書いてしまいました。いつも記事を読んでいただきありがとうございます。皆さんの参考になれば嬉しいです。


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