国芳ー通俗水滸伝豪傑百八人一個 飛天大聖季袞  完成

飛天大聖季袞(ひてんだいせいりこん)の復刻が完成しました。
版木山桜6枚 摺度数12
使用絵具 墨、ウコン、ベンガラ、金ベロ、細工紅
使用和紙 木灰煮米粉入奉書

1墨

2ベンガラ

3ウコン この絵具は市販されていないので自分で根っこを煮て作ります。足りるかなと思ったら色が薄くて作り足したりして、まだ慣れません。

4墨

5細工紅

6細工紅
黄色の上に入った細かい線です。

7金ベロ
金ベロとは数十年前まで使われていたベロ藍(プルシャンブルー)のことです。現行のものよりも少しくすんでいます。ベロ藍は現代も製造されている化学合成顔料ですが色味の変遷があります。(江戸時代のベロ藍は一種類では無かったことが示唆されていますが、まだはっきりとは解明されていません。)

8ウコン➕金ベロの緑

9同緑濃口

10金ベロ

11細工紅

12艶墨
普通墨は固形のものを水に数ヶ月浸けて膠分を除いたものを使用します。こうすることで泥々になり、いっぺんに沢山の濃い墨が作れます。一方で膠の作用による艶は失われます。そのため膠分の効いた艶のある墨を作るときは固形の墨を煮詰めて溶かし使用します。(膠によって艶が出るというのは摺った紙面上で膠が絵具の粒子の隙間に入ることで面がフラットになり光の反射力が高まるからだと思います。ガラスなどの研磨と同じ原理でしょか。多分ですが。)

今作のオリジナルは1828~33年頃に刊行されています。ベロ藍は1829年に初めて浮世絵に導入されましたが、それ以前にベロ藍とは肉眼での識別が困難とされる本藍の絵具がすでに使用されていました。最初の使用例は1794年の写楽の役者絵です。(松井英男氏監修「浮世絵の名品に見る「青」の変遷」参照)
年代からして今作のオリジナルの青にはその「ベロ藍のような本藍」が使われている可能性がありますが残念ながら今の自分はその絵具が上手く作れてなく、今回はベロ藍を使用しています。この「ベロ藍のような本藍」に関しては今後の研究の進展に伴い、また改めて説明するつもりです。(ちなみにベロ藍が日本に初めて輸入されたのは1747年で、絵画に用いられたのは、1766年の伊藤若沖の絵が最初だと今のところされています。)
今回の例のように実際の所、江戸の浮世絵に使用された絵具は科学的な分析をしないと解らない所があります。科学的な絵具の分析方法はあるので資金が整い次第着手します。

版木は夏には彫り上がってましたが、お願いしていた特注紙が出来るということもあり本摺りを待機していました。
紙はこれまでよりもしなやかで自然な風合いがあり良くなっています。

2018.1127



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