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「ウィキペディア4大意味わからん写真チョイス」を解説

宇喜多・W・要出です。X(旧Twitter)でウィキペディアに関するポストがバズっていました。「ウィキペディア4大意味わからん写真チョイス」とのことです。

4枚の画像のどれもが、百科事典らしからぬ画像です。そしてこれにはウィキペディア特有の、のっぴきならない理由とその回避法が隠されているのです。まずは[[有吉弘行]]から。

著名人・有名人の画像

写りこんだ広告がポートレートとして使われています。この記事を書いている8月末ではすでにもう、この画像は除去されています。他になかったのかとウィキメディアコモンズを探してみても、めぼしい画像はありません。

著名人や有名人の画像はウィキペディアが最も苦手とするジャンルです。なにせ、ウィキペディアに載せるには、ライセンス的にフリーな画像でなければならないからです。所属タレントの顔写真をライセンス的にフリーな状態にする事務所など、寡聞にして知りません。

そうなると、著名人・有名人の画像は、イベントに出た姿をウィキペディアンが撮るか、あるいはもっと公的な機関に頼るほかありません。例えば日本の内閣とかですね。

前者の例は、[[ザ・たっち]]で使われている画像があげられます。

後者の例は[[堺雅人]]の記事にて使われている画像がまさにそうです。画像の出所は総務省です。

国際ドラマフェスティバル in TOKYO 2014に堺雅人さんが出て……総務大臣政務官がトロフィーを授与し……それが総務省のウェブサイトに載り……日本政府の府省のウェブサイトは政府標準利用規約という利用ルールが適用され……それがウィキペディアで適用されているCC BY 4.0と互換性があり……

とにかく、ライセンス的に問題のない堺雅人の画像は、これしかないのです。

キャラクターの画像

実在の人物ですらこの手間なのですから、著作物たるキャラクターに至っては推して知るべし。[[サトシ (アニメポケットモンスター)]]に使われていた画像はこれでした(記事執筆時点で除去済み)。

こちらは、デ・ミニミス(De minimis ラテン語で「ささいな事」)、いわゆる写り込みであるため、著作権者の許諾が必要ではない、という理論でセーフになっています。

そしてなんと、キャラクター画像にも抜け穴はあります。日本の著作権法は、「一般公衆の見やすい屋外の場所に恒常的設置されている美術著作物の原作品」なら縛りが少し緩いのです(詳しいことは宇喜多さんが語ると襤褸が出るので勘弁してください。)。日本語版でのみ、様々な制限付きながらも、デジモンのあんな画像やコナンのあんな銅像が使えるのです。

それでも難しい画像

そして[[高円宮憲仁親王]]に使われている画像ですね。憲仁親王は上皇陛下のいとこにあたります。僅か47歳で薨去なされました。そしてウィキメディアコモンズ唯一画像は、なんと、死の数時間前に撮影された画像なのです。しかも携帯で。

もちろん皇族ですから、画像そのものはウェブ上にいくらでもあります。それこそ宮内庁のウェブサイトに行けばたくさんあります。そして宮内庁ホームページ、ソーシャルメディア利用規約にてはっきりと、「皇室の方々が写っている画像、映像がフリーなわけないでしょ! コラ!」と明記されています(コラ!までは書かれていません。)。

件の画像は、試合中に亡くなる数時間前に行われた会議で撮影され、それがflickerという画像サイトにCC BY 2.0というライセンシングでアップロードされ、それでようやっとウィキメディアコモンズに載せられるようになった画像なのです。当然ながら、さらに良い画質、大きい画像が求められてはいます。ただ、2002年に亡くなった皇族の画像を探すのは、そりゃあ、難しいものがあります。

描く

最後の手段として、描く、というのがあります。[[カール・ワルサー]]に使われている画像がそうです(記事執筆時点で除去済み。)。

彼はドイツの銃技師で、カール・ワルサー社の創始者です。ルパン三世の愛銃がワルサーP38ですね。

諸々の理由で画像がないとき、ウィキペディアンは最終的に自分で絵をかいて載せることがたまにあります。

このように!

洋の東西を問わず!

画像がないなあと思ったウィキペディアンが撮影しに行くように、古墳の見取り図がないなぁ、と思ったら書いてしまえばよいのです。

ウィキペディアに謎の画像が載っているとき、その裏にはどんなに探し回ってもいい画像がみつからなかったウィキペディアンがいるのです。著作権とライセンシングに悪戦苦闘したウィキペディアンがいるのです。


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