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ポケカAdvent Calendar 8日目:海外大会観戦ガイド

初めまして、うきにんと申します。
今回は、同じ北海道出身のともぽんから本企画、ポケカAdvent Calendarを紹介してもらい参加しています。企画は12月1日からスタートしています。 他の方々のステキな記事もぜひお読みください。

これまで私はDiaryNoteやここnoteで断続的にポケカ記事を書いてきましたが、久々に書く今回は、「海外大会観戦ガイド」と題して、ポケカの海外大会の仕組みと、観戦のポイントをご紹介します。

本題に入る前に、簡単な自己紹介を以下に付します。

ポケカ歴1997年~。北海道出身、東京在住。
WCS2004マスター4位、WCS2005マスターtop16
2019年にマレーシア代表としてWCS出場権獲得(仕事で出場できず)

おそらく私は、日本国内(株ポケ)の大会システムと、海外の大会システムと両方で世界大会の権利を取った、これまでのところ唯一の日本人ポケカプレイヤーだと思います(違ってたらごめんなさい)。
一応は海外の大会制度下で権利を取ったことのある人間として、また、およそ15年以上は海外ポケカ環境を追いかけ続けている人間として、今回の記事は、海外の大会ってどういう仕組みなの?いつどこで見られるの?という疑問に答えられる内容にしたいと思います。
2023年の世界大会は横浜開催。海外のプレイヤーがどういう大会を乗り越えてやって来るのか、その予習としてお使いください。

もくじ

・2つの「海外大会」システム
・TPCi圏の大会のしくみ
・観戦方法
・注目ポイント
・おわりに:もうひとつの「海外」

2つの「海外大会」システム

最近はTwitterなどでも、海外のプレイヤー情報や海外のオンライン大会結果を目にする機会が増えました。ただ私たちが「海外」というとき、その海外とはアメリカやヨーロッパのことだと考えがちです。

ポケカでもそれは間違ってはいません。Twitterで目にする「海外」ポケカの情報は、多くがアメリカやヨーロッパのプレイヤーのものです。
ただし全てがそうではありません。 ここでは一度、そもそも海外のポケカは、どこでどのように発売されているのかを簡単に見てみます。

私たちが普段目にするポケカはもちろん日本語、ときどき英語、ですが、株式会社ポケモンのウェブサイトによると、ポケカはこれまで13か国語で発売されています。

それは日本語、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語、ポーランド語、オランダ語、ロシア語、韓国語、中文繁体字、タイ語、インドネシア語。 実は数えると14か国語(株ポケのウェブサイトが何をカウントから外しているのかは不明)あるのですが、そのうちロシア語やオランダ語、ポーランド語版などは今は発売されていません。 もちろんこれら全てを日本の株式会社ポケモンが発売しているわけではありません。

発売・管轄している会社を列挙すると、

  • 英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語⇒The Pokemon Company International, Inc.(通称TPCi)

  • 日本語、中文繁体字、タイ語、インドネシア語⇒株式会社ポケモン

  • 韓国語⇒Pokemon Korea, Inc.

となります。 地図に起こすと以下の通りです。

実際のところ日本の株ポケと韓国のPokemon Koreaは制度が色々似ているため、実質的に、世界には2つのポケカのシステムが存在しています。
それが、株ポケの管轄するアジア圏と、The Pokemon Company International、通称TPCiの管轄する欧米圏。
TPCiの管轄するエリアでは、上記の欧米系言語のカードが発売・流通し、そして大会システムも、日本とは全く別の仕組みで行われています。 ここからは本題として、TPCi圏の制度について説明していきます。

TPCi圏の大会の仕組み

日本国内の大会システムは、度重なる制度変更を経て、今ではCSPをベースに運用されています。年間を通じてCSPを多く獲得した数十名が世界大会の出場権を獲得する、という現行制度は、競技人口の増大によって大会に出ること自体が難しい、という点を除けば、非常にバランスの取れたフェアな制度であると私は思っています。
しかし日本国内がポイント制を導入する以前から、TPCi圏ではポイント制度を用いています。実際多くの点で、国内のCSP制度は、TPCi圏のポイント制度を下敷きにしています。

以下、TPCi圏のポイント制度の概要です。

  • プレイヤーは、チャンピオンシップポイント(Championship Points - 通称CP)獲得を目指して、大会上位入賞を目指します。得られるポイントは、大会規模や順位によって異なります。

  • 世界大会の出場権は、ランキング〇〇位以内、という人数枠方式ではなく、シーズンを通じて〇〇ポイント以上、というポイント足切り方式です。ポイントのボーダーラインは、プレイヤーが所属しているエリアによって異なります。

  • 世界大会2日目(Day2)出場権付与は、各エリアでのランキング上位となります。

要点を羅列しましたが、説明が必要な点が2つあります。
ひとつは大会規模。どのような種類の大会が存在しているのか。ふたつめはエリア。エリアによって異なる、とはどういうことか。
この2点は、図に起こして見てみましょう。まずは大会の種類と規模についてです。

TPCi圏のプレイヤーは、リージョナルとインターナショナルに参加してポイントを積み重ね、世界大会招待のボーダーライン到達を目指します。
言うまでもなく、開催頻度の多いリージョナルよりも、年に4回しか開催されないビッグイベントであるインターナショナルのほうが、付与ポイントは多くなります。
とはいえもちろん開催頻度の関係上、プレイヤーたちは普段はリージョナルに足繫く参加し、ポイント獲得を狙います。
付与ポイントがどれほど違うのか、まとめたのが下記の図です。

付与ポイントにはおおよそ2.5倍の差があるのが見て取れます。
直近の大都市でのイベントでは、だいたいいつも参加者が1,000人前後となるため、256位までのプレイヤーはポイントを持ち帰ることができています。

さて、残る疑問は、では何ポイント取れば世界への権利を獲得できるのか。そしてエリアによって異なるとはどういうことか。それを示したのが以下の図です。

ここでいう「エリア」とは、参加した大会の場所のことではありません。プレイヤーが居住している(住所登録している)国もしくは地域のことです。
例えばあなたがアメリカ在住のマスターのプレイヤーならば、世界大会の権利獲得にはCPが500ポイント必要になります。
ただし、あなたがアメリカ在住のプレイヤーであっても、ヨーロッパやブラジルの大会に出場することももちろん可能です。そこでポイントを獲得すれば、そのままポイントとして加算されます。極端な話、ヨーロッパの大会で100ポイントを5回獲得すれば、アメリカ代表として世界大会の権利を獲得できるのです。

ここでお気づきの方もいるでしょうが、このポイントを巡る争いは大変に厳しいもので、どれだけたくさんの大会に出場できるかが世界大会の権利獲得のキーになってきます。ましてやDay2の権利を狙おうとすれば、ボーダーライン突破のみならずランキング上位を狙う必要があり、出られる大会はひたすら出る、という極めてストイックな姿勢が求められます。
まさにこれが、海外の有名プレイヤーが非常に多くの大会に顔を出している最大の理由です。

余談ですが、このポイント(CP)を、海外プレイヤーはよく分数の形式で000/500のように表現します。例えばあなたのボーダーラインが500ポイントで、今300ポイントを取っているとしたら、300/500のように表記します。
ツイッタープロフィール欄やツイートなどでよく目にするので、見かけたら、このプレイヤーは権利を取れそうか難しそうか(もしくはもう確定しているか)判断できます。

この場合は、ツイート文末に440/350 CPと書かれており(ヨーロッパなので350がボーダーライン)、すでに権利が確定していますね。 ちなみにシーズン終盤になってくると、ランキング上位を狙うプレイヤーは1000ポイントを突破したりします。

ここまでTPCi圏の大会の仕組みを見てきました。海外のプレイヤーたちがどのような制度の中で戦っているのかはおおよそご理解いただけたと思います。
ここからは、では実際に大会を観戦するにはどうするか。また、どのあたりに注目して大会を観戦すべきかを簡単にご紹介します。

観戦方法

もちろんここでいう観戦は、オンライン配信での観戦です。リージョナル以上の大会は多くが配信されていますが、ビッグイベントのお祭り感を味わうのであれば、やはりインターナショナルの観戦がおススメです。

インターナショナルは年4回開催、と上記で紹介しましたが、今シーズンの日程はほぼ決まっており、

2022年11月25-27日:ラテンアメリカ(ブラジル)
2023年2月17-19日:オセアニア(オーストラリア)
2023年4月14-16日:ヨーロッパ(イギリス)
2023年6月??-??日:アメリカ

となっています。この開催順と開催月は、近年は毎年ほぼ固定となっています。
インターナショナルの配信は、TPCiの公式Twitchで行われます。たとえば先日行われたラテンアメリカインターナショナル2日目の配信アーカイブはこちら。

とはいえ、次のインターナショナルは来年2月。日程の近いリージョナルで良いから配信を見てみたい、という場合はどうすべきか。
身もふたもない結論を言うと「けっこう難しい」となるのですが、スケジュールはTPCi公式の奥深くに掲載されているため、次はどこの会場かを把握することは可能です。記事執筆時点では、12月16-18日のテキサス州アーリントン、となります。

なぜ配信を見るのが難しいのか。理由は、配信場所が公式Twitchではないことが多いからです。インターナショナルと違い、リージョナルは大会主催者がTPCiではなく外部委託のことが非常に多く、その場合は配信も主催者(主催会社)が行います。特にアメリカ以外の大会の場合は、主催や配信の情報を見つけるのは、慣れていないとなかなか骨が折れます。
とはいえ幸運なことに、今シーズンは、北米エリアのリージョナルは公式Twitchが配信してくれています。配信の情報はTPCi公式ツイッターアカウントでさえほとんどツイートしてくれず、この情報提供の貧弱さが海外大会の観戦ハードルを上げているのですが、今回のアーリントンも、当日Twitchに注意を払っていれば、配信を見られる可能性は高いと思います。

注目ポイント

いざ配信を見るとして、どのような点に注目すべきでしょうか。
もちろんプレイヤーのレベルも高いのですが、TPCi公式が行う配信は、配信の作りそのものもお祭り感があり非常に魅力的です。
対戦テーブル自体もカッコ良いですし、ラウンドの合間には配信席でのトークがあったり、プレイヤーの順位表なども表示してくれます。

もちろん英語なので全てを追うのは難しいのですが、マッチの進行自体はカードが同じなのですぐに理解できますし、このお祭りの雰囲気を楽しむだけでも配信を見る価値はあると思います。
また、海外の配信で実施されたアイディアは、だいたいその後日本でも実施されるのがここ最近の傾向です。
例えば国内大会の配信でも最近になって登場した、サイドのカードを下から映すカメラ。あれは元々海外の配信で数年前から実施されていたものです。そのような新しいアイディアや画面表示を見ることができるのも、楽しみのひとつかもしれません。

もうひとつあえて付け足すならば、特定のプレイヤーに注目してみることです。今風にいえば推しプレイヤーでしょうか。
日本国内では、イトウシンタロウ選手やシマダダイチ選手、ヤマグチヨシユキ選手などは誰もが知る強豪プレイヤーですが、海外にももちろんそういった選手はいます。
たとえば、海外大会を良く見る人には説明不要の有名プレイヤーですが、先日のラテンアメリカインターナショナルを優勝したTord Reklev。通算でインターナショナル4地域全てで優勝経験のある唯一のプレイヤーで、もはや足りないのは世界大会優勝タイトルのみ、といえるほどの現役最強プレイヤーです。

大きな大会では、コントロールやバレット寄りのデッキよりも、テンポで勝負をするデッキをよく使う印象です。サイドレースや盤面の管理が非常に上手く、プレイを見ているだけでも本当に参考になります。

何度か配信を見ていると、よく登場するプレイヤーなどはだんだんと覚えてきます。海外プレイヤーの名前と特徴を覚えれば、来年の世界大会が何倍も楽しく見られること間違いなしです。海外大会の配信を見始めるなら、今がベストなタイミングではないでしょうか。

おわりに:もうひとつの「海外」

ここまで、TPCi圏の大会の仕組みと配信について書いてきました。
単発記事ということもあり詳細は省きましたが、今では日本国内のCLとTPCi圏の大会は多くの面で似ています。例えば予選スイスラウンド⇒決勝シングルエリミネーションという形式の大枠は共通しているため、配信の内容そのものは違和感なく見られると思います。

最後に触れたいのが、冒頭で少しだけ説明していた、もうひとつの「海外」、アジア圏についてです。
具体的な国・地域名を挙げれば、台湾、香港、タイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、フィリピンです。

実はこれらの国々は、当初はTPCi圏、つまりは上記で説明した制度の中に組み入れられていました。しかしコロナ禍中の2020年に突如、株ポケ管轄下に移管。今では株ポケ管轄のもと、一昔前の国内大会(上位入賞者が世界大会権利獲得)のような仕組みで大会が運営されています

私たちがポケカで「海外」というとき、それは欧米の大会やプレイヤー、つまりTPCi圏を想定しがちです。私もこの記事では、TPCi圏を指して「海外」と何度か使っていますし、そのほうが説明が楽な場合が多々あります。
しかしながら私たち日本のプレイヤーにとって、実は同じ株ポケ管轄下のアジア圏のほうが、注目すべき身近な存在なのかもしれません。
株ポケが意図的に力を入れていることもあり、新弾発売タイミングも日本とほぼ同じ。最近では新弾の情報公開を、時には日本より先にアジア圏で行ったりもしています。
大会の仕組みはまだまだ粗も多く、現地のプレイヤーにも不満は多々あると思います。どんなプレイヤーが強いのか、なかなか情報も手に入りません。それでも、あの2020年に開催直前で中止になってしまったアジア交流戦のようなイベントが、また近いうちに再開されることを願ってやみません。

今回の記事は以上となります。ここまでお読みいただきありがとうございました。 詳しい説明を省いた部分も多いため、ご質問などはぜひ私のツイッターアカウントまでリプライいただけますと幸いです。
また、ポケカAdvent Calendarはまだまだ続きます。他の方の記事もぜひご覧ください。

出典:
TPCiの大会について(pokemon.com
https://www.pokemon.com/us/play-pokemon/pokemon-events/

世界地図引用元
https://www.stat.go.jp/index.html

おまけ:FAQ

Q:TPCi大会の結果だけ知りたいときはどこを見ればいい?
A:Limitlessの大会結果ページ、もしくはPokestatsあたり。英語だけど、触る場所さえ覚えれば慣れます。

Q:Day2の権利の人数について記載がなかったけど何人?
A:TPCiのページに概要があるのですが、たとえば北米だと16人。ヨーロッパだと22人。狭き門と捉えるか、優遇されていると捉えるか。

Q:TPCi圏、良いことずくめに見えるけど、問題点は?
A:色々あると思うのですが、何より大会の情報公開が遅いし、情報がどこにあるかもわからない。リージョナルの受付が突然始まったりする(そして一瞬で埋まる)。大会登録や情報の供給については、日本国内が断然良いです。

Q:日本在住の日本人がTPCi圏の海外大会でポイント取ったら、世界大会の権利は取れる?
A:ポケカではこの条件を突破したプレイヤーがいないので分からないのですが、おそらく(ほぼ確実に)取れない。エリアごとにボーダーラインがありますが、日本在住のプレイヤーはそこに含まれないためです。(うきにんが海外で取ったときはビザの住所が海外だったため取れた)


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