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【翻訳】タッグチーム制作の裏側

国内ポケカは先日も新弾が発売され、やれ新カードだ公式大会だで大忙しの様相です。
そんな喧噪を尻目に、海外環境は粛々とペースを維持し、5月の上旬、新弾"Unbroken Bonds"が発売となります。
内容は、国内でいう、ナイトユニゾンからダブルブレイズまで。なかなか豪華でカオスな陣容です。

そして海外公式には、前弾"Team Up"に引き続き今弾でも、クリーチャーズ長島ゲームディレクターと、イラストレーター有田さんのインタビューが掲載されていました。

今回のエントリはその翻訳です。
しかも今回は、そうじんさんに全面的にご協力頂き、本文はほぼ全てそうじんさん訳となっています。(うきにん、何もしておりません)

ソリッドで正確な訳文とともに、ぜひ、タッグチーム開発の裏側の話をお楽しみ頂ければと思います。

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ポケモンカードゲームにまもなく登場する、新タッグチームGXカードについての考察を開発者が明かす。

https://www.pokemon.com/us/pokemon-news/behind-the-scenes-with-tag-team/
Behind the Scenes with TAG TEAM
March 28, 2019

 タッグチームGXカードがポケモンカードゲームに新たな面白さをもたらした。この強力なペアたちは極めて高い体力と攻撃力を誇っている。のみならず、それぞれのペアは、追加エネルギーを付与することでより威力の上がる、破壊的なGXワザを備えている。この恐ろしいポケモンたちは絶対に倒されてはいけない。なぜなら対戦相手があなたのタッグチームポケモンをきぜつさせることができれば、サイドを3枚も取れてしまうからだ!
 ここで、最新のポケモンカードゲーム拡張パックである、サン・ムーン”Unbroken Bonds”に収録される予定の新しいタッグチームGXカードを紹介しよう。このカードの制作についてより理解するために、我々はポケモンカードゲーム開発チームの2人に直接話を伺った。以下はポケモンカードゲームゲームディレクターである長島敦さん、イラストレーターの有田満弘さんのタッグチームGX開発秘話である。

フェローチェ&マッシブーンGX

――なぜこの2体のポケモンを組み合わせようと思ったのですか?
長島:新しいタッグチームを考えるときは、ポケモンカードゲームの可能性を広げることを考えます。ですから、どのポケモンを組み合わせれば面白い攻撃やギミックが出来るかを考えるわけです。
今回は、2体のウルトラビーストを組み合わせることにしました。ウルトラビーストを強化するカードは多いので、ウルトラビーストを使ったタッグチームカードを作ることでプレイが広がると考えたのです。
この2体に決めるまでに、いくつかのラフスケッチを行い、違うウルトラビーストの組み合わせを何組か試しています。将来そのペアもお見せできるかもしれませんね!

――この2体の特徴をどのようにして捉え、1つのカードに落とし込んだのですか?
有田:例外もありますが、タッグチームのイラストに取り掛かるときに基本的に試すことは、その2体が敵と戦っている姿を想像することです。このイラストでは、フェローチェがキックを、マッシブーンがパンチを同時に繰り出す絵にすることで、2体の特徴であるスピードとパワーが際立つようにしたのです。フェローチェをマッシブーンの中央付近に配置したことで、フェローチェの白く細い体躯とマッシブーンの大きな黄褐色の身体とのコントラストを作ることができました。

レシラム&リザードンGX

――なぜこの2体のポケモンを組み合わせようと思ったのですか?
長島:この2体を選んだのは、ピカゼクで表現した、よりわかりやすい初期のポケモンのコンセプトの継続ということです。このカードの背景は、リザードンが敵に囲まれ孤軍奮闘しているところへ、その勇気を認めた伝説のポケモン、レシラムが助けに舞い降りてくる、という話です。このカードを作るときに思いつきました。
レシラムの冷静さが、(先行発売の)ゼクロムのよりわかりやすく荒っぽい力強さと好対照をなして、劇的な効果を生んでいると思います。

――この2体の特徴をどのようにして捉え、1つのカードに落とし込んだのですか?
有田:コラージュの手法で2体のポケモンを配置することで、彼らが同じ場所で戦っているという感じを出すという要求を満たしつつ、とてもかっこいい構図を作ることができました。タッグチームを描く時にいつも大変なことは、それぞれのポケモンの大きさの違いを表現しなければいけないことなのですが、レシラムとリザードンの大きさは驚くほど違うんです。
また、ビジュアルのバランスと多様さという点から、カードとして他のカードと一緒に並んだとき、イラストが上手く機能するようにする必要があります。この2体のポケモンはどちらも巨大な翼がありますが、もしこの翼を特に強調したイラストにしてしまうと、頭がとても小さくなってしまい、良いバランスを見つけるのが難しくなります。共通した特徴がほかにないか探した結果、横顔をクローズアップして長い口を強調することに落ち着きました。この2体の特徴がうまく伝わっていると思っています。
色という点では、アートディレクターからレシラムの青い炎を強調するアイディアをもらっていましたが、この点はとてもうまくいき、良いイラストに仕上がったと思います。実はレシラムの炎が赤いバージョンもできてるんですけどね。

ベトベトン&アローラベトベトンGX

――なぜこの2体のポケモンを組み合わせようと思ったのですか?
長島: 地方ごとの変種どうしでタッグチームを作りたいという思いがすごくあったんですよ。とても似ているポケモン同士を組み合わせれば、その関係性はわかりやすいですし、いろんな可能性を考えさせてくれますからね。
似たポケモン同士のコンビネーションを表現するために、2体のシナジーによってどくの効果が倍加するような性能に仕上げました。
余談ですが、このカードのデザインを決定するとき、スタッフはビジュアル系バンドの人とハードロックバンドの人がペアを組む、なんて話を想像していたんです。

――この2体の特徴をどのようにして捉え、1つのカードに落とし込んだのですか?
有田:ベトベトンがアローラ地方のごみを食べてアローラベトベトンに変異したという話を伝えたかったんです。カードにはっきり書かれているわけではないのですが、イラストでベトベトンが食べているごみの色がめちゃくちゃカラフルですよね。余談ですが、最初僕は間違ってベトベターの情報を受け取ってしまっていて、ベトベター&アローラベトベターのスケッチまで描き上げてしまったんですよ(笑)。
背景としては、夜のアローラの市街の雰囲気を伝えたくて、背景のヤシの葉がオレンジのナトリウムランプの明かりに照らされている絵を描いたのですが、これも2体の色合いとマッチしていると思います。

カイリキー&マーシャドーGX

――なぜこの2体のポケモンを組み合わせようと思ったのですか?
長島: このペアはちょっと毛色を変えて、あ、これはもう単純に強いよね、という感じのタッグチームにしようと思いました。プロレスラーのイメージですね。
カイリキーのポケモン説明文には、2秒間に1,000発のパンチが繰り出せると書いてあるんですね。その印象がとても強かったので、使いたいな、という思いはありました。
カイリキーと組ませるなら、やはりパンチの強そうなポケモンと、と思っていました。嵐のように2体のポケモンが連続パンチを繰り出す姿をイラストにできたら楽しいだろうな、と。マーシャドーの説明文には「おくびょう」と「よわき」と書いてあるので、カイリキーのほとんどアホみたいにイケイケで明るい性格といいコントラストができて、いったいどうしてこの2体が一緒に戦っているんだろう、と皆さんに想像してもらえるんじゃないかと思ったんです。

――この2体の特徴をどのようにして捉え、1つのカードに落とし込んだのですか?
有田:私がいただいたイメージは2体のポケモンが嵐のようにパンチを繰り出す絵でした。(ワザ名などの)文字もたくさん入るだろうとわかっていたので、マーシャドーをカイリキーの真ん前において、この2体を見下ろせるような構図を作り、テキストの裏に2体が隠れないようにしました。背景はできるだけシンプルでポップにして、漫画のようなパンチの連打が一層引き立つようにしました。テキストで隠れてしまう部分には、より強い色を使うことでイラストをより見やすくしました。

ゲッコウガ&ゾロアークGX

――なぜこの2体のポケモンを組み合わせようと思ったのですか?
長島:ピカゼクはより正統派の強さを表現したカードだったので、次の弾ではもう少しひねった、ずるさを表現したカードを作ろうと考えていました。そこから幻術を使う、あるいは忍者のようなポケモンにコンセプトを絞り込んだので、この2体が完璧にマッチするだろうということはわかっていました。
GXワザであるナイトユニゾンは、悪タイプのGX/EXポケモンをトラッシュからベンチに直接出すことができるワザです。進化ポケモンでもいきなり出すことができるので、相手はどのポケモンが出てくるか予想がつかない、ユニークな動きです。このカードはポケモンの性格という点でも技の効果という点でも、ずるさや意外性を表現するのにぴったりだと思います。

――この2体の特徴をどのようにして捉え、1つのカードに落とし込んだのですか?
有田:ゲッコウガのみずしゅりけんとゾロアークのいあいぎりがぶつかり合って一つになる瞬間を描くことで、2体がともに協力して攻撃する様子を表現しようとしました。時間の感覚を表現しようとしたわけですが、静止画でこれはとても苦労しました。どちらのポケモンもすらりとした体形で似たような大きさだったので、その点では描きやすかったです。
私は日本版のパッケージの絵も一部担当したのですが、そのとき背景にとても明るい滝の絵を描きました。なので、このカードをそれと区別して描くことがやや難しかったです。

ルカリオ&メルメタルGX

――なぜこの2体のポケモンを組み合わせようと思ったのですか?
長島: 初めにメルメタルのことを耳にした時、タッグチームにしたいなと思っていました。鋼タイプなので、最初はギギギアルのような重量級のポケモンと組ませるのがいいと思ったのですが、しばらく考えて、より素早く柔軟なポケモンの方がメルメタルの武骨な見た目を引き立たせることができ、攻撃を繰り出すときに互いの良さが出るだろうという結論に至りました。

――この2体の特徴をどのようにして捉え、1つのカードに落とし込んだのですか?
有田:メルメタルが公式発表される前、私は初期のラフスケッチを担当していました。顔と目が認識しづらいので、メルメタルだと一目でわかるようなイラストにしたいと思っていました。まずこの配置を思いつき、メルメタルが構図の最もいい場所、すなわち枠の中央上部に来るようにし、左手、頭、右手を含む体全体の輪郭を描こうと決めました。多少体のパーツが枠の外にはみ出すことになってもいいので、シルエットがわかりやすくなることに神経を集中させました。

サーナイト&ニンフィアGX

――なぜこの2体のポケモンを組み合わせようと思ったのですか?
長島: タッグチームGXカードというもの可能性を広げたい、つまり単に戦えるとか、カッコよくて強そうといったもの以上のものに広げたいと考えていました。この狙いに向けて思いついたのが、より愛くるしく、可愛いポケモンを組み合わせてカードにするということでした。いくつか「美しさ」のドリームチームとしてうまくいきそうなオプションを考えたのち、優雅な容姿のサーナイトととてもかわいらしいニンフィアに自然に落ち着きました。
ふだんフェアリータイプのポケモンに関しては可愛い方向に行き過ぎないように気を遣うのですが、このタッグチームに関しては、とにかくかわいらしさを追求したいと思っていました。

――この2体の特徴をどのようにして捉え、1つのカードに落とし込んだのですか?
有田:タッグチームのイラストをいくつも手掛けたことで、タッグチームのイラストの方向性がある程度決まってきたかな、と思っていたのですが、この時は「できるだけ可愛くしてくれ」という要求でした。しばらく考え、「浜辺で遊ぶ魔法少女たち」というコンセプトに落ち着きました。
このイラストではサーナイトがウインクしていますが、見栄えをよくしながら3次元空間の感じを伝えるのにはとても苦労しました。少しでも間違えてしまうと、ポケモンたちがリラックスしている感じが出ないので、うまくいくように頑張りました。また、どの部分を枠線からはみ出させてイラストに落とし込んだらよいか、微調整と修正を繰り返しました。

長島さん、有田さん、タッグチームGXの新カード開発にまつわるお考えをお聞かせいただき、ありがとうございました。これらのカードをはじめとするカードの数々は、2019年5月3日発売のサン・ムーン”Unbroken Bonds”に収録されています。全国のポケモンセンター、ポケモンカードゲーム取扱店にて販売予定です。

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以上になります。お読みいただきありがとうございました。
また、翻訳にご協力いただいたそうじんさん、改めて本当にありがとうございました。

カイリキー&マーシャドーGXのところでプロレスについての言及がありました。実は前回の記事でも、セレビィ&フシギバナGXの構図に関してプロレスが引き合いに出されています。
このタッグチームというコンセプト自体、プロレスからヒントを得たところが少なからずあるのかもしれません。

さて、これらタッグチームが収録された"Unbroken Bonds"は5月3日発売ですが、
その前週、4月26日~28日には、ドイツにてヨーロッパ・インターナショナル(Europe International Championships)が開催されます。
フォーマットは現環境スタンダード、つまり前弾"Team Up"まで。日本でいうタッグボルトまでです。
日本からも参加プレイヤーがいそうなこと、また時差7時間が現地午前=日本夕方となり視聴に都合が良いことで、
中継視聴者数もなかなか増えそうな予感です。
都合がつけば、環境解説も記事にしてみようと思っています。

本文中の画像は元記事より拝借しました。

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