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『私をくいとめて』を見た

『私をくいとめて』。大九明子監督。原作は綿矢りさの小説、未読。『勝手にふるえてろ』で好相性を見せた大九監督と綿矢りさ原作の第2弾。
 アラサーおひとりさまのOLが脳内の分身Aと会話をしながらおひとりさま生活を満喫しているが、年下の男性に恋をして、改めて自分の人生に向き合っていくお話。
 前作から引き続き、大九監督の撮る女性というかOLの日常がいとおしく。そこに主人公のややフィクティブな独白、というかイマジナリーフレンドとの対話と言ったほうがいいのかな。それを織り交ぜて軽快に物語は進んでいく。『勝手にふるえてろ』以上に笑える場面も多く、主題歌の大滝詠一『君は天然色』と合わさってポップな印象を持つ。
 一転して芸人吉住の出演する件や、歯科医との顛末。製氷機前での絶叫など、女性にありがちな生きづらさを突きつけてくる場面に胸が痛くなる。「物語は、自分自身は経験していない痛みや感情を読む人の体の内へ残していく力を持つ」と川上未映子は書いていたが、”見ないふりをしてきた傷口を突きつけてくる力”も同様に持っていると感じた。見て見ぬふりしたら同罪、とまで言うのは言いすぎな気もするけれど、小学校のとき校長先生が朝礼でいじめについてそういう話もしていたしな。
『あまちゃん』好きとしてはキャスティングにも魅力を感じた、というか抗えないという意味でずるい。地元と東京だったあの物語の対比が、今度は国内と海外で逆転して描かれているという見方もできるのね。
 文房具演出的には『勝手にふるえてろ』が革命的過ぎたが、本作も良かった。水の音の使い所も効果的。

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