舞台の幕間の裏方の泡沫のような会話

(これまで書いてきた話は全て舞台で演じて見たいもの。もしそれを演じている間に、幕間の休憩を挟むなら、きっとこんな感じなのだ)

ー幕を引きながらー

正直どう思う?

何が?

今回のお話

うーん、セリフはもうちょっと多い方がいいなーって思うけど

ー幕を閉じ切った舞台の上でー

うん、それに話の内容ていうか訴えたいものよくわかんないんだよね

あの人って考えてることを文字にするの下手くそだよな。それに難解で哲学的で悲観的だ

あの人って変なとこ凝り性なんだよ。あとウルトラマンオタクなんだ

ああ、俺も聞いたことある。好きな怪獣ってなんですか?って

うん

そしたらさ、ジャミラだってさ

ジャミラ?ああ、元地球人のパイロットが水のない惑星に不時着して、怪獣になって人類の復讐にやってくるっていう

そう。小さい頃あれ見てこころをぶんなぐられたんだーって言ってた

なんだかなー。特撮って夢を与えるもんだと思うけど、ああいった込み入った頭を生み出すようじゃあんまりいいものとはいえないな

ー幕の隙間から客席を見るー

見ろよ。客も寝てるよ

ただでさえ少ない動員だっていうのになあ

しょうがないよ。演劇なんて斜陽産業だ。金にもならん老人どもの道楽なんだ

tiktokやら、YouTubeショートやら。短けりゃあいいってもんじゃないさ

もちろんそうだが、そう思ってるのはマイノリティーだ。丁寧に紡がれていく物語よりも、露出度の高い服装で踊る女を見ていたい。当然といえば当然だな

ー幕の中では海の中を表す大道具が並べられているー

こうして物語では、深海にも宇宙にも行ける。リスやカジキマグロとも野球ができるし、バイト仲間の土星人と談笑だってできる。世界の中で一番自由だっていうのになあ

それが自由だとしても、金がないんじゃあどうしようもねえやなあ

夢の前には、金、金、金。やっと金持ちになって気づくんだろ?「ああ、このレースにゴールはないんだ」って

まさに、血を吐きながら続ける悲しいマラソンってやつだな

ウルトラセブンだろ?そういえば、あの人はメトロン星人も好きだって言ってたな。人間の信頼は非常に脆く、そんな脆いものを一度崩せば人類はあっという間に瓦解してしまうって

ウルトラセブンって、この星で生まれたどのドラマよりも地球人を憎んでいるように思うんだ

憎んでいるのかな。僕は愛しているんだと思うよ

愛も憎しみも表裏一体だってことか。おっと、そろそろ幕が開くぜ。どうしようもない作り話は続いていくな。それでも、彼には作る理由があるんだろうなあ


ブザーがなる。芝居は続く。


ー閉じた幕の裏で大道具を並べていた女ー

なんだろう。幕が舞台の両端から閉じて合わさるあたりが気になる

さっき大道具を並べていた時は確かに2人くらい男の人がいた気がするのだけれど


変ねえ。あそこにいた人たちは、舞台の台本を書いている人に似ているような気がするわ

生き霊を生み出すほどに考えていたのかしら。


私たちは、生き霊を生み出すほど考えて生み出された言葉の数々を、本当に尊敬しているのかしら

まわりまわって、世の中が幸せになる使い方をします。