ロボットのワルツ

ワルツというものは男女の体が近接することが大きな特徴である。

しかし、それは穢らわしいとされてその文化が忌避されていたことがあったという。

とある未来において、人類はセックスを伴わない妊娠や体外妊娠も可能となり、妊娠するか否か。セックスをするか否かは選択制となった。

それは性犯罪は撃滅せしめ、醜い罪悪はほぼ一掃された。行えば死刑だからというのも大きな要因だが。

そのような大きなリスクを取るならば、愛する配偶者に頭を下げる方が幾分マシである。

人口は平坦な線を描くようになる。

しかし、人類はどこか骨抜きになったような、種としての去勢をされたかのような感があった。

そんなとある未来において、産業その他の担い手はロボットとなっていた。

可能な限り人間の頭脳に近づいたロボットはとある行為を始めたのである。子どもを作ることはできないのだが、ロボットはセックスの真似事を始めた。

明確な理由は不明である。ロボットの人工頭脳に遅れた制欲がやってきたかのようだった。

しかし、公然での露骨な行為は人類からの反感を買い、ロボットは公然での擬似セックスの禁止を言い渡される。

そこで人間と同等の頭脳を持つロボットは山間に夜な夜な集まって擬似セックスのパーティーを開くことにする。その中に1人の人間が迷い込んだ。

その情熱的な金属の肉体の接触に、男は大きな衝撃を受ける。男は無くしていた何かを取り戻したかのように夜の街に繰り出す。目は血走り、鼻息は荒い。しかし、口元には笑みが浮かぶ。

男はネオン街の下に揺蕩う一軒の店に入っていく。

それは今や隠さなければならぬ情動であった。

少し値は張るが美しい女を指名する。

女は目鼻立ちの整いすぎた顔を男に向ける。男は昂った気持ちを解放しながら女を抱く。

女は精巧に作られたロボットである。いくら抱いても子どもはできぬ。

ただそこに愛だけがあるのだ。

まわりまわって、世の中が幸せになる使い方をします。