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嘘日記#2 ミクロの世界のマクロな女

生まれて5回目の雨がやってきた。
この災害をいかに耐えうるか。これが私にとってはかなり困難な課題であると前までは思っていたわ。

この狭い巣の中で日々を過ごしているのもつまらないと思ってきたし、お母様のご飯を運ぶ日々にも嫌気がさしてきた。姉も妹もみんなそう思ってはいるはずよ。でもやめることはしない。サボっている子たちに声をかけたりもしない。個人主義の極まるところ。

それでもこの生活をやめることはしない。いつか私たちの弟が生まれる日まで日々生活を続けていくわけ。

私は雨の日に日記を書いている。この地面を叩く大粒の雨が私たちの家を揺らすこの不可思議な高揚感。

妹は満月の日に日記を書いているらしい。日記を書いている姉妹も少ないけれどね。マメな姉は満潮の時間に書いているらしいけど私にはそんなに向いていないわ。

いつも思うのだけれど私はきっとこのまま殺して運んで食べさせて掃除をして。
あるいは踏まれるか、潰されるかの日々。私がこの世に生まれたのはどうしてなのだろう。

それでいいと思う。答えは出ないし。
お腹が減れば食べる。日記を書きたければ日記を書く。
私が歩いて人間が顔を顰めていたとしてなんだというの。

ただ雨のしっけた匂いの中に身を置いてまた次の雨の日に日記をかければいいのではないかしら。それも一種の子孫への愛の形になると思うわ。

雨もやんでしまった。
私の日記は今日はここでおしまいにしよう。
次の雨の日まで生きていられたら。また会えたら。
これを読む子孫に。



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