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本当のラストは骨だけ?

今週はあたらしいブックカバーを買った。
ドイツ語で「MEIN LIEBLINGS BUCH」と書かれていて、その意味は「私のお気に入りの本」だという。
友人がこれを使っていて、やわらかそうだし使いやすそうだと思って教えてもらった。
最近はヘルマン・ヘッセの『車輪の下』を読んでいる。
ハンスが神学校の試験を終え、地元に戻って結果を待つ生活の描写があまりにも写実的で、映画のシーンのようだと感動した。
さんさんと照りつける太陽のもと、シャツが汗でべたつくほどの夏の暑さを想像した私は『君の名前で僕を呼んで』を思い出した。
この映画はひと夏の出会いと別れを鮮やかに描いている。
エリオとオリバーの関わりはもちろん、ふたりが草原に寝転んだりバカンス先の街を歩く姿など、景色を含めて一つひとつのシーンがきれいで印象に残った。
『車輪の下』で、ハンスが釣りをしたり泳ぎに行ったり、まわりの同級生などとは交わらないものの年相応のふつうの少年として過ごすあの期間の描写はとても鮮やかでいきいきとしていた。
いま読んでいるのはハンスが神学校に入り、エーミールが出てきたところだ。
全寮制というところがもう重苦しく、きっとハンスはこの生活に苦しむのだろうな、と思っていた。
そして「エーミール」という少年、中学生のとき国語の授業で読んだ『少年の日の思い出』でも出てきた名前だ。
もしや同一人物か? と思って検索してみると、ヘッセの作品には「エーミール」という名前の登場人物が何度か出てくるらしい。
だが、その「エーミール」がすべて同じ世界線の同一人物なのかどうかが曖昧だった。ChatGPTに聞いたところ、別人らしい。
実はここまでのあいだに私はとんでもないネタバレを踏んでしまった。
いつからかGoogleで検索すると、関連した質問が表示されるようになっていた。
私は「ヘルマン・ヘッセ 車輪の下 エーミール」で検索したのだが、検索結果を見ているとその関連した質問のなかに「ハンスはなぜ死んでしまったのか?」という項目が。
おい!!!!!!!! なんてネタバレを表示させてるんだ!!!!
こっちはまだハンスが試験に受かってやっと神学校に入ったところなのに、エーミールを調べただけで最大のネタバレを喰らうなんてことがあっていいのか?!
いや、昔の男子ばかりの全寮制の学校なんて、そりゃうつにはなるだろうよ、試験に合格したところがいちばんの盛り上がりポイントのはずなのに、べつに飛び跳ねたり大騒ぎする様子がなかったから暗い作風なんだろうな、とは思っていたし、ハンスがうつになったらなったでそのあたりのハンスの苦悩とか生活の変わりようとか、そういう描写を読みながら彼の成長する姿を見ていくのかな、なんて思っていたのに「ハンスはなぜ死んでしまったのか?」だって????
結果終わってるじゃん、詩人とか小説家になるとか飲んだくれになるとか、そういう結果を期待していたのに、死んだら終わりじゃん、ハンス……
そんなわけでGoogleからの強制ネタバレイベントを回収した私は、いかにしてハンスが死んでいくのかというラインにシフトして読み進めていくしかなくなった。
今回のタイトルはD.A.N.の「Elephant」からの引用だ。
本当のラストは骨だけ? 果たしてハンスが死んだら物語は終わってしまうのか?

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