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「機動戦士Zガンダム(TV版と映画版)」に学ぶ映像演出【日常へ帰る】

富野由悠季監督作、「機動戦士Zガンダム」は1985年放映の全50話のTVシリーズと、TVシリーズ放映から20年後に公開された追加カットと再編集、音声再録を行った劇場版3部作が存在します。

そのなかで最も大きな変更となっているのが、物語の最後に主人公のカミーユ・ビダンがどうなるのかという部分です。

富野監督曰く「最後のシナリオを変える際に違う演出を思いついたことで20年前のカミーユを救うことができる」といっています。

一体何のことを言っていたのかに迫ってみたいと思います。

TVシリーズ
物語の最後では主人公カミーユ・ビダンは敵方のボスであるシロッコを倒します。ここでTVシリーズでは、精神崩壊を起こし、気が狂ってしまいます。

その際に乗っているモビルスーツ(ロボット)が戦闘機(ウェイブライダー)の形のまま変形せずに宇宙を漂います。カミーユはそのコクピットに閉じ込められ出られないまま物語が終わってしまいます。
これはカミーユが最終的に戦闘機(殺人マシーン)の一部になってしまったことを描いています。

引用元:機動戦士Zガンダム(TV)

戦闘機形態のまま、コクピットから出れない = 殺人マシーンの一部

劇場版
TV版と同じく主人公カミーユ・ビダンは敵方のボスであるシロッコを倒します。しかしならが劇場版ではカミーユは精神崩壊を起こさず、人間として生きて帰ってきます。

この際に乗っていたモビルスーツ(ロボット)は戦闘機(ウェイブライダー)形態から変形し、人型に戻ります。更にカミーユはコクピットから外に出てヒロインと抱き合います。

引用元:機動戦士ΖガンダムIII-星の鼓動は愛-

人型に戻ることで、殺人マシーンである戦闘機から人間に戻り、さらにヒロインと抱き合うことで日常まで戻るという演出となっています。

人型に戻りコクピットから出る = 殺人マシーンから一個人に戻り日常に帰る

まとめ
放映当時の監督がどこまで考えて演出を組んでいたのかはわからないですが、劇場版を作るに当たりTVシリーズを見返したときに「カミーユを救うため」に思いついた演出と言われています。

20年越しに2つめのエンディングを用意することにより、TVシリーズのエンディングに「機械として魂が死んでしまったカミーユ」という意味を付加しつつ劇場版に「人として生き残り日常に戻るカミーユ」を描くという演出効果を生んでいます。

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