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演出解析

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世に出ている映像作品の演出を解析していきたいと思います。 映像制作を志す人たちの参考になれば良いかなと思っています。
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#京都アニメーション

「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【愛ゆえの別れ】

この映画内の絵本、楽曲には「愛ゆえの別れ」と言われる章があります。リズと青い鳥がお互いのことを考え、別々の道を歩くという章のことですが希美とみぞれも最終的にお互いのことを思い別々の道を進むことになります。

みぞれの全力の演奏後、理科室での希美とみぞれのシーン周辺に関する演出をまとめていこうと思います。

絵本とのリンク
希美が絵本の「かごの開け方を教えたのですか」というセリフを、高台のベンチに座

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「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【シンクロ】

「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【シンクロ】

物語の終盤、希美は図書館で勉強、みぞれは練習室で演奏の練習をするシーンがあります。ここで二人は別々の場所にいるのですが、シンクロした動きを見せています。

これは物語序盤で近くにいるのにずれていた二人から、お互いの本音をさらけ出し、才能の有無を理解した上でそれを受け止めることができたためで、心の距離感が適切になったため、遠くにいても心がつながっていることを表しています。

歩幅、動きのシンクロ

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「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【パーツで見せる感情】

「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【パーツで見せる感情】

映画において、顔以外の手や足などのパーツを接写し、その演技でキャラクターの感情を表現する演出技法が存在します。

リズと青い鳥ではこの手法が多用されており、特にストレスが掛かったときに印象的に使われています。

腕と足を伸ばす
みぞれに才能があることが発覚し音大に誘われたことを知った希美は、自分が音大に誘われていないこと、能力がみぞれのほうが上であることに対して嫉妬と悔しさの混ざった感情を抱くよう

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「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【立場の入れ替わり】

この映画では希美とみぞれという二人の女の子が、自由に飛び立つ青い鳥とそれを見守るリズとリンクした形で表現されていきます。

物語序盤では希美が自由の象徴青い鳥のようであり、みぞれがそれを見守るリズとして物語は進んでいき、物語中盤でみぞれに才能があることがわったことで、最終的に立場が入れ替わりみぞれが青い鳥で希美がリズと同じであると表現されます。

この立場の入れ替わりを様々な映像演出を用いて表現し

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「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【分断】

「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【分断】

物語序盤、希美とみぞれは一緒に行動することが多いですが、実際には心がすれ違っており、別方向を向いていること、分断していることを表す表現がいくつか使われています。

この映画では近くにいるのにずれていた二人の思いが、お互いのことをより深く知ることで同じ方向を向き、それぞれの道に進む話なので、映画前半では心の距離感が遠いことを細かく描いています。

光と影
お互いの好きなところをハグしながら打ち明け合

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「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【雨と影と彩度と】

みぞれに才能があることを新山先生が気が付き、音大を勧められたあとの雨の日の全体練習では様々な技法が詰め込まれています。

希美は自分には音大を勧めてくれなかったことで、自分にはみぞれほどの才能がないことを知ります。


この日の全体練習では雨が降っており、みぞれが特別な存在であり自分とは違う存在であるということでざわめいている、沈んだ希美の心を表現しています。

雨 = ざわめく心、暗い気持ち

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「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【いなくなること】

「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【いなくなること】

劇中における絵本「リズと青い鳥」は、リズという少女のもとに青い鳥が人の姿でやってきて、二人は幸せに暮らしていたのですが、リズは青い鳥の正体が鳥であることに気が付き、青い鳥を開放し大空へ羽ばたかせる出会いと別れの物語です。

この映画では絵本のストーリーとリンクした物語構成となっており、2年生のときに部活を辞め3年生のときに帰ってきた希美を青い鳥になぞらえています。また理科室?でフグに餌をあげている

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「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【個人練でのすれ違い表現】

「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【個人練でのすれ違い表現】

「リズと青い鳥」では物語後半まで、みぞれと希美がすれ違うさまを描き続けています。

導入部後の個人練のシーンでは二人の性格や感情、考えていることを説明する演出になっています。

同じセリフを違う意味で言う
個人練で二人で話している際、みぞれは「嬉しい」というセリフを喋ります。これは、希美と一緒にいられて「嬉しい」という意味で言われています。

それに対し希美も「私も嬉しい」と返すのですが、それは本

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「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【導入部分の演出】

「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【導入部分の演出】

映画「リズと青い鳥」はTVシリーズ「響けユーフォニアム」のスピンオフ映画で、仲の良かった二人の女子高生の気持ちのすれ違いと別れを描いた作品です。

この映画には絵本パートと現実パートが交互に出てくるようになっているのですが、自分の演出解析では現実パートの解析を主に進めていく予定です。

まずは現実パートの冒頭で希美が青い鳥の羽を見つけて掲げるまでの間にどのような演出意図が盛り込まれているかを解析し

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「たまこラブストーリー」に学ぶ演出技法 【物理的な距離と心の距離】

「たまこラブストーリー」に学ぶ演出技法 【物理的な距離と心の距離】

映画においてキャラクターの心の距離感を描く際に様々な方法があるかと思います。たまこラブストーリーでは、たまこともち蔵の心の距離を物理的な距離感や接触で描いています。
一般的に言われるパーソナルスペースなどと同じで、キャラクター同士の距離感などが親密さの表現になっています。

告白シーン
たまこラブストーリーでは、TVシリーズであるたまこまーけっとでたまこに対する気持ちを伝えられなかったもち蔵がつい

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「たまこラブストーリー」に学ぶ演出技法 【時間のずれたシンクロ】

「たまこラブストーリー」に学ぶ演出技法 【時間のずれたシンクロ】

映画において、同じ場所や同じ立ち位置に配置されることや、同じセリフを違うタイミングで喋らせることで時間的な距離感を心理的な距離感や対比に使われたりします。また同じセリフでも前後の積み上げによって違う意味をもたせることができます。

たまこラブストーリーではたまこともち蔵がバラバラに喫茶店にてコーヒーを飲むシーンがあります。
そのシーンでは同じ立ち位置に両キャラを置くことですれ違っている印象を与えて

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「たまこラブストーリー」に学ぶ演出技法 【状況におけるライティング】

「たまこラブストーリー」に学ぶ演出技法 【状況におけるライティング】

以前映画において「ライティングで心のすれ違いを描ける」という記事を書きましたが、たまこラブストーリーでもライティングで心理状態、物語の状況を描写しているシーンがあります。

通常時のライティングとライティングを変化させることによって、そのカットを際立たせたり、キャラクターの心理状態を表現したりすることができます。

たまこラブストーリーではたまこともち蔵の恋愛を描くなかで、相手に気持ちを伝えるかど

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「たまこラブストーリー」に学ぶ演出技法 【立ち上がる演技の意図】

映画やでは話をしている状態から、話の途中で立ち上がったりする演技が入ることがあります。
その際のセリフや立ち上がったあとの演技や立ち位置の変化などで意味合いを付加することができます。

たまこラブストーリー中盤で、北白川たまこと朝霧史織が二人ベンチに座った状態で話をしているシーンがあります。

引用元:たまこラブストーリー

史織はたまこに、受け入れ先は決まっていないけど夏休みにホームステイするこ

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「たまこラブストーリー」に学ぶ演出技法 【風景描写で別れを描く】

「たまこラブストーリー」に学ぶ演出技法 【風景描写で別れを描く】

たまこラブストーリーでは、高校3年生になった北白川たまこと大路もち蔵、その同学年の友人たちを中心とした物語となっています。

みな高校3年生であるため、卒業後の進路の話が随所に出てくるのですがそのたびに風景描写を使い、別れを象徴的に描いています。

別の行き先
たまこを中心とした仲良し女子4人組の卒業後の進路を話しているエピソードで、空には飛行機雲と飛んでいる飛行機があり、川面には木の枝がつくった

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