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はじめに:コラム【医療機器開発プロセス】について

 数あるnoteの記事の中から、このコラムに目を留めていただいてありがとうございます。
 学生さん、研究者、機器メーカ社員さん、製薬企業の方、医療関係者、専門的なコンサルタント、
 色々なバックグラウンドの方がいらっしゃると思いますが、この記事をクリックしてくださったということは、多かれ少なかれ、医療機器に興味がある方なのではと思います。

 ここでは、コラム【医療機器開発プロセス】のことを簡単にご紹介しようと思います。

コラムには何が書いてあるのか?


 このコラムは読んでいただいた方々に、医療機器開発のプロセスの全体像をつかんでもらうことを目的としています。ですので、医療機器開発のプロセス全体が広く浅く書かれています。
 もっと専門的な詳細部分については、各分野の専門書や専門家にお任せいたします。

本コラムは、以下の序章+5章の計6つのパートで構成されています。(予定です)

  • 序章

    • 医療機器や医療機器開発の全体像について書かれています。

  • 第1章:開発研究編

    • 医療技術の基礎研究を医療機器の製品設計までに持っていくための開発研究のプロセスについて書かれています。

  • 第2章:製品設計編

    • 医療機器の製品を設計するためのプロセスについて書かれています。

  • 第3章:臨床試験編

    • 医療機器に関して臨床試験を含めたヒトに関するデータを取得するためのプロセスについて書かれています。

  • 第4章:薬事申請編

    • 医療機器の薬事承認を取得するためのプロセスについて書かれています。

  • 第5章:保険申請編

    • 医療機器の保険を取得するためのプロセスについて書かれています。

 これらを一通り読み終わった後に、皆さんが医療機器開発のプロセスの全体像がイメージできているような記事を書いていきたいと思います。

誰に向けて書いているのか?

 
 繰り返しになってしまいますが、このコラムは医療機器開発のプロセス全体をつかんでもらうことを目的として、広く浅く書かれています。
なので、医療機器の開発を10年、20年やってきた方にとっては、知っていることばかりかもしれません。また、日本の医療機器開発をベースにしていますので、米国や欧州の事情を知りたい方には物足りないかもしれません。

このコラムを読んだら役に立つかも、と私が思っている方は、以下のようなイメージです。

  • これから医療機器の研究開発を始める機器メーカや製薬企業の新人さんや若手社員

  • 自分の研究を医療機器に仕上げたいと思っている企業や研究機関の研究者

  • 医療機器のスタートアップで医療機器開発に関する知識を必要としている方

  • 新規の医療機器を開発するプロジェクトマネジメントを初めて任された方

 他にも、医療機器開発プロセス全体に興味がある方、製品設計、臨床開発、薬事などを専門でしてきたけど、他のパートのプロセスにも興味がある方などは是非読んでいただければと思います。

誰が書いているのか?


 とはいえ、どこの馬の骨か分からないやつが書いた記事なんて読めるか!と思われる方もいるかもしれないので、少し自己紹介をしてみます。

 私は、学生の頃に所属した研究室で医工学に出会って、医療機器に興味を持ちました。新卒で入った会社でも医療機器の研究開発を10年続けました。最初は、研究所で新しい医療技術の研究をしていました。その医療技術について技術開発から細胞動物試験、臨床研究なども経験させてもらいました。

 その後、製品設計の部署に移り、新医療機器の製品設計に携わりました。その製品の薬事申請時にはドキュメント作成や必要なデータ収集もしました。保険の申請にも協力させてもらいました。また、医師と一緒にガイドライン作成や機器のトレーニングプログラムの作成、国際規格の策定までさせてもらいました。医療機器開発は一つの製品について幅広い業務を経験できるのは醍醐味ですね。

 同じ頃、医学系の社会人大学院にも通っていて、そこで医療関係の法律や医療機器に関する臨床試験、薬事など幅広く勉強させてもらいました。大学院での理論と会社での実践の両方で医療機器開発を深く学ぶことが出来たように思います。

 その後、色々あって転職して、転職先の研究所で一から新しい医療機器を企画して研究開発を始めました。動物試験などの基礎研究から始めて、その結果を基に臨床試験のためのデバイスを開発しました。臨床試験も実施してヒトでの効果も確認しました。

 こういった経験の中で、医療機器開発の企画、研究、設計、薬事、保険の各プロセスについて多くの学びを得ることが出来ました。

なぜコラムを書いているのか?


 そんな私がなぜコラムを書いているのか、をお話しいたします。
 私のこれまでの経験で実感したのは、医療機器開発は、設計、臨床、薬事、保険、ビジネスといった要素のすべての視点からバランスを考えて開発しないと成功しない、ということです。

 例えば、私が製品設計を担当した新医療機器は、臨床効果としてはとても良いものでした。医師にとっては使いやすい機器ではあったのですが、高い診療報酬の付きにくい機器の構成をしていたため、病院や企業にとってビジネスとしてメリットが薄い商品になってしまいました。その結果、販売台数が伸びず、事業としては苦しいものとなってしまいました。

 医療機器開発は、様々な規制やステークホルダーの中で、開発の各プロセスでどんなハードルがあるかを予めイメージして、開発プロセスをデザインして走りきることが重要なんだ、ということを痛感しました。

 医療機器業界では多くの方がご存じでしょうが、ジョンソンエンドジョンソンの元社長の松本晃さんが似たようなことを仰っています。

「医療機器開発というのは、いくつかのプロセスがありますが、プロセスのかけ算なのです。開発、薬事承認、マーケティング、販売、品質管理、そのうち一つがゼロでもトータルでゼロになってしまいます。様々なプロセスをよくわかっていないと簡単にはできないのです。」

カルビー前会長 松本晃氏、国産の医療機器開発に取り組む~ (株)日本医療機器開発機構の特別顧問に就任~|サナメディ株式会社【旧社名:日本医療機器開発機構(JOMDD)】 (sanamedi.jp)

 各プロセスの専門家がチームを組むことで、各分野からの視点が得られることでしょう。
 その中で、専門家を束ねてリードする人は、最低限、彼ら専門家が言っていることが理解できる程度には、専門外のことも知らなければ、全体として上手くバランスの取れた開発プロセスや戦略が描けません。
 新しい医療機器を開発するには、各分野の専門家だけでなく、そういった医療機器開発全体を見渡せる人材も必要だと思いました。

 そういった思いで、研究所の新人や若手に対して、彼らの考えている医療機器アイディアをネタにハンズオン形式で開発プロセスを一気通貫で学ぶ、という研修プログラムを実施しました。
 そうすると、医療機器開発プロセスの全体像を把握する重要性が良く分かった、とか、研究より先に何が待っているかを知ることで、先を考えた研究開発が出来る自信がついた、という声を多くいただきました。

 こういったニーズを持っている人は他にもいるだろう、と思い、このコラムの記事を興し始めました。

まとめ

 
 つまるところ、私は医療機器が大好きなんです。
 また、日本から新しい医療機器がもっと多く創り出されて、日本の医療機器産業をもっと発展すればいいなと思っています。
 微力ながら、このコラムがその一助となることを願っています。

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