「ぐるり、と」
かたまりになってゆっくり落ちてゆくからまりつどい解けるイカの脚
メンソールやめたんや女友達の手元でくゆる青いハイライト
走れ走れ転べそうして贅沢に起き上がりたまえ少年少女
クアーズの泡のまにまにうつりこむ15日前のやせた亡霊
ゆううつで盤上を暗くしなさんなアンダーグラウンドくちなしのはな
きみの姉の名前をおもいだすまでに半日かかるハーゲンダッツ
狂えども狂えどもぼくは正常なくびきでしかもはやくびがきれない
ただいまとときどき苔へ言うときのあのさみしさがやけに繁れり
やわらかくかたまれわたしの絶望そしたらまるく溶かせる気がして
意味のないなかへ意味を見出すよりまぶたとじれり手枕の午後
来年の話をするだけで「ボケて」より雑に笑い出す鬼をひとり飼う
なれあいになれしたしんだナレーションところでタイパってなんだっけ
ひからびた杏のようなひとですねあなたの薄い耳に夕暮れ
ドリップもブロスもおなじはらのうち来週の雨は気配を消して
つくろえぬ机の上破り捨てた悪夢の後味くちびるにはる
いま遠くで鳥が啼きました遠方の朋に届かぬ手紙のように
ぬるまった柑橘類の恋をした白きあまかわひとつむかれず
つらいねとつないだ手をはなすときがすき午後の逆光 屋上かお、かける
イヤフォンのなかにしかあらわれぬ幽霊と答え合わせをする交差点
子どもはうさぎの目に似てわたしを突き刺す午後の斜陽ぐるりと
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