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「滑走路」

台風のめいろづいたかんせいにおちこみゴミは出さずにねむり

低気圧とうまくつきあっていくことをご報告しますしばたたく朝

雨は雨で風は風のままがいいどこへ降ってもどこでふいても

送り火をひとつともして待ちますねきみのかそけき足音による

 

夏なれば保健室をこえ図書館へきもちのサドルばかりがまわり

屋上をコース見学とびおりるためではなくて青空をみる

こおりとみずだけ永遠のともとしてひたいにあつる布のぬくさに

さようはんさようさようならきちんとはそろえられない靴の紐の目

 

どうこうは宛先ゆくえ不明のまま高校時代のこうしゃへもどる

辻占の「あなたばかよねえ、おばかさんよね」をかかえて米を研ぎぬる夜更け

旦夕に織姫をしおりにはさめないたりないそうぞうりょくのせいで

当たり前の飾りじゃね、形だけのこしてそっと濁す後味

 

きみが繰り返すごめんねは晩夏にて玉子豆腐のやさしさと似る

しなやかに折れた脚を一本だけ栞のかわり挟みぬる朝

天井から落ちてもこない人生を死んだワニの眼でただ眺めおり

つきはてた餅も落ち着きも絵に描きてフェルメールと空の青さよ



  

らんちゅうも出目金も鮒とおもえば側溝沿いに夏の暮れぬる

アスファルト上にシニフィエシニフィアンシャム猫の熱気が溜まりおり

帰り際たばこを一本喫うときのなにも見つめない横顔がすき

角度をつけた恋の滑走路ちょうど曇っているくらいがきれい




   

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