「明日はここから」
おもしろい話ばかりがきみをすくうわけじゃないんだぜ八月の風
狂気の入り口で立ち尽くしている後ろ姿がやけにまぶしく
暗闇をくらやみと呼ぶひとびとの冴えない朝に雨のふりぬる
くつがえす力よりちゃんと靴紐がほどけたときに結んでいたい
ありがとう、たくさん愛してくれて置き去りにされたまま鳴るオルゴール
犬に名前はあるが猫には名前がない未知の裏路地を拾い歩きつ
来世では相撲をとろう徳俵ぎわに落とした夢のあわさよ
かんたんな夢をみていたとけあって消える恋もある消えない恋もある
相槌をうつと血のにおいがしますね わたしの愛のパイドパイパー
きみがいた九月にたどりつけぬまま悲鳴を上げろウスバカゲロウ
回転体に乗ってそのまま死にたいのです割れる膝と明日の予定
だいじょうぶ、この細胞はサイボーグじゃない、ただしなびれた希望だ
うれしいよあなたがこんな遠くへいて途中の町で雷の鳴る
こんぼうとぬののふくでおぼえたふっかつのじゅもんがぼくをさいなむ
リセットするリセットするリセットする理性と歓声に「いいぜ」と云う
つながれもつむがれもしなかった物語にそっと贅言をつけるお仕事
まつろわぬ街を歩けば犬の鳴くくびきと首輪くすむ表札
現在地を確認したのちふと振り返ると祖母に似た斜陽と目が合う
つまらないことを仰々しく語るひとがすき、だな、八月は尽く
おおきな約束をみんなでやぶろうぜ 河川敷には未だ見ぬ秋
あいつ部活やめたってよ、程度の軽々さと持ち重りのする未来がみたい
ぼくは勉強ができない教室の一隅にまわってこない回遊魚
黒樂の背筋の丸きさみしさを撫でまわしおり午前3時に
狂言をはかまでもっていくと決めたけどゆりかごはただ風にゆられて
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