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自然療法

8月のとある日。
また自分の殻に塞ぎ込みたくなる波が押し寄せてきた。今更気づいたことは、どうもそれは“察して”に疲れた頃にやってくることが多いようだ。


少し前に動画撮影用の簡単な機材を購入していた。それを使って撮影する日程を決めていたが、予定外の気持ちの面がブルー。それでも雨の日が続く前に動画を撮りに行きたい。予定より一日遅れで、日の出を撮影しに棚田百選の場所へ行くことに決めた。

当日は3時に起き、4時過ぎには家を出発した。まだ暗闇に包まれる市内を抜けて、徐々に山の奥地へと進んでいく。時よりすれ違う車に少しの安心感。この時間でも活動している人はいるんだな_。

傾斜をひたすら登っていく。徐々に薄明るくなる空にふと視線を右に移すと、重なる山々の向こうにこれまで見てきた空とは比べものにならないほどの美しい朝焼けがお目見えした。目的地ではないが私は思わず窪みに停車させ、シャッターを切った。まだ辺りが薄暗いせいで良い写真を撮ることは出来なかったが、自然がつくる絶景に目が釘付けだった。一人でこの景色を堪能してしまったことが、憚られるような気持ちにもなった。
また必ず家族と一緒に来よう。必ず。

後ろ髪を引かれながら、更に目的の奥地へと進む。
虫と蝉の鳴き声に誘われ、到着。今年も、私を優しく迎えてくれた。辺り一面鮮やかな緑一色。段々に田んぼが並び、元気すぎる虫の声。真正面には山々が連なり、空には到底カメラのレンズでは捕らえきれないほど美しい朝焼けのグラデーションがかかっていた。早朝5時の空気はとても爽やかで、暑さとは無縁の別世界。前年は、稲刈り時期の真っ昼間にきたのでそのときとは表情がまるで違い心に染みるものがある。勿論、どの時期に来ても美しいのだが、朝の神秘的な空気とどこまでも広がる空間は特別なものだった。

棚田百選の朝焼け


連なる山々の明暗
レースを纏った頂




その後少し離れた展望台からは雲海も望め、大満足な朝活となった。
私を根底から元気にしてくれるのは、どうやら自然の力が大きいようだ。余計な言葉はいらない。ただそこにある大きすぎる偉大なパワーが、私に生きろと伝えてきているような気がする。新書本や薬なんかでは綺麗に治りきらない私の濁った心は、数時間で時間の経過とともにさらりと流れていくのであった。
それに加え、趣味の写真それに動画を撮影することが出来、満足のいく写真が撮れたことで自己肯定感まで整えられた。

どうにも自分の殻に塞ぎ込みたくなった時、気持ちが少し浮上したその瞬間を見計らって自然に会いに行く手段は一番効果的な治療法だと今回のことで確信に変わった。

一つまた一つと自分を知る材料が整う。今さらなんてことはない。

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