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『強奪されたロシア経済』 マーシャル・I・ゴールドマン NHK出版 2003

東西冷戦終結後、世界はどうなったか?に興味があります。
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1980年代末からのソビエトロシア解体期に、ゴルバチョフやエリツィンのもと経済政策を担当した閣僚たちが計画経済から市場経済への移行、国有企業の私有化(民営化)を推し進めた。

その拙速すぎるごり押し政策は経済破綻をまねき、大多数の国民を窮乏させる一方で、ごく限られた既得権益者が国富を強奪して懐に入れ、オリガルヒと呼ばれる富豪になりおおせた。

ロシア経済の歪んだ構造は、プーチンが大統領になって一部是正されたものの、いまなお温存されている。
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著者によると、ソビエトロシアの経済改革が他の東欧旧共産圏の国々にくらべて殊更に難航した理由のひとつは、ロシアにおける共産党支配が、70年間の長きに及んだことだといいます。

帝政ロシアは、ツァーリや貴族や官僚ががちがちに土地と農民を統制している専制的な封建国家でした。
民間の商工業の発展は、西欧諸国とは違いごくゆるやか。
民衆が知っているのは、個人が物を売り買いするバザール程度で、やっと中小規模の工場や商店などが成長し始めている段階でした。
そこへきて、1917年の共産革命。
工場や小売店の国有化、農業の集団化が強制されます。
エネルギーから生活雑貨にいたるまで何万品目もの生産・流通・分配すべてが国家計画に従って行われるようになります。
共産主義に基づく経済施策は、わずかに育ち始めていた民間経済の芽も摘むものでした。

そんな社会が、70年。
世代交代も進みます。
私有や個人的な商取引は処罰の対象となる危険で忌まわしい行いでしたから、ビジネスしようなどという意欲は人々の頭の中から消えうせました。

だから、70年前は強引に計画経済を押し付けてきたお上が掌を返し、いきなり自由経済に方針転換し、これからは私的に商売していい、起業しろ、株式投資しろといっても、一般の国民がついてこられるわけはなかったのです。
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そうか、70年かあ…と思いました。
何を想起したかというと、「今年で戦後79年だ」ということ。
日本人が変容するにはじゅうぶんな時間だなと思ったのでした。
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2003年の本ですから、その後のプーチンの経済施策やオリガルヒらの動向について追いたかったのですが、手っ取り早くネットで見てみようとしても、2022年以降のウクライナ侵攻がらみの報道や論考の記事ばかりが溢れかえっていて、たいへん調べづらいです。


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