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「目覚め」のきっかけ


雨の降る東京

その日は春分の翌日で私は彼岸のお墓参りへ


きっと両親だろう
すでに綺麗な花が添えられていて
私はお墓の前で手を合わせご挨拶をし、
その場を離れる

境内の桜は生憎まだ満開とはいかないが
大きな木の幹からは小さな花が4輪ほど咲いていた


帰り道、いつものようにぼーっと電車に乗り
吊り革をつかみ、ふと顔をみあげると
見慣れた名前の駅名が目についた
それは以前からお世話になっていた方のお名前

「これは….」
と思い一度目を伏せて
今度は反対側をみあげると
これまた同じ駅名がパッと目についた

「ああ、そうか」
その時わたしは文字通りすべてを受け入れた
人生が変わっていくことを
未知の領域へ進んでいくことを
ようやくすべてを受け入れたのだ


これが私の「目覚め」のきっかけ
「悟り」ともいうのだろうか
言葉はなんでもいいが
生きているとある時、すべてが腑に落ちて
なんともいえない安堵感に包まれる体験を
するのだと、この時はじめて知った

30歳の春、それはリスタートのタイミングだった





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