やわらかフニフニ尻にカピカピウンコがこびり付いていた時のTips
何事にも初めての瞬間がある。
そして、それは突然に、何も準備ができていない状態でやってくる。
2020年の4月4日に息子が産まれた。
性別は早い段階のエコー検査で判明した。
お医者さんの「おっ、チンチンだぁ!」という言葉で告げられた。
まるで、潮干狩りに来てアサリを掘っていたら「おっ、ハマグリだぁ!」と叫んでしまった時と同じテンションだったと思う。
ハマグリはラッキーに当たる部類の発見だが、チンチンはどうだろうか?
ラッキーチンチンだったのだろうか?
性別がどっちか?と聞くタイミングは自分で決められると思っていたので、急に告げられた「チンチン」を、僕はしばらくのあいだ認めることができなかった。
僕が僕の子供のチンチンを認めるには1週間ほど必要だった。
その間はチンチンのある息子と過ごす未来を何度も繰り返し想像した。
僕の頭の中が男同士で行きたい場所や話したいこと、やってみたいことで溢れるようになったところで、僕は次のエコー検査で「チンチンはどれですか?」と自らチンチンを求めることができた。
出産には立ち会うことができた。
ドラマでイメージしていたような、いきむ妻の手を握って応援することはほんの少しの間でしかなかった。分娩室に入って過ごしたほとんどの時間は、定期的にくる陣痛に耐える妻の背中をさすったり、落ち着いた時に気を紛らわすような会話をしたりすることだった。
目に映るものすべてが初めての瞬間ではあったが、やはり産まれたての赤ん坊の姿は別格だった。僕個人の感情としては可愛い存在というよりも神秘的な存在、という認識の方が強かった。
「うわ⋯⋯、すげぇ⋯⋯」
赤ん坊を見た瞬間に僕が発した言葉だ。
口を手で押さえて、涙目になって、声を震わせて言った。
これが、僕の中の余計な思考をすべて取り除いて出た言葉だったんだ。なんて語呂力のない脳みそなんだろうか。でも、本当に感動した時ってそんなものなのかもしれない。
さて、「初めての瞬間」をテーマに前置きを書いたところで、タイトルを回収していく。
簡単な話だ。
産まれて数日の赤ちゃんだってミルクを飲んでウンコをする。
僕が初めてのオムツ替えをしたのは、ちょうどそのウンコのタイミングで、そして、そのウンコがカピカピだった。
それだけのこと。
いや、それだけのことじゃない。
めちゃくちゃ焦ったから。
だって、柔らかいの。
フニフニ尻なの。
ちょっとの力で壊れてしまうくらいの「やわらかフニフニ尻」なの。
そのやわらかフニフニ尻にこびりついたカピカピウンコが、まぁ取れないこと。
これ、本当にめちゃくちゃ焦った。
素晴らしい近代テクノロジーによって生まれたお尻にやさしい”おしり拭き”であっても、このカピカピウンコを前にしたら無力だった。
これ以上、力を入れたら、息子のフニフニ尻が壊れてしまう。
力が強過ぎて愛する人を抱くことができない化け物の気持ちがわかった。
僕はもうお手上げだった。
焦り過ぎて何のアイデアも出すことができなかった。
そして僕はナースステーションに駆け込んだ。
「う、ウンチがカピカピで取れないんですけど⋯⋯。どうしたらいいですか?」
「⋯⋯あぁ。ティッシュかなんかをぬるま湯で湿らせて、柔らかくしたらいいですよ」
「⋯⋯⋯⋯!。あぁ、そうか。あ、ありがとうございます」
恥っず。
いや確かに。
普通に考えたら思いつくだろう。
いつも炊飯器は水につけてから洗ってんじゃん。
こっわ。
焦りって怖いわ。
強制的に思考停止になる。
その後、カピカピウンコは力を入れることなく、するりと吹くことができました。
というわけで、
「やわらかフニフニ尻にカピカピウンコがこびり付いていた時のTips」
その答えは
まず落ち着け
でした。
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