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AI時代における読書感想文の新戦略/ChatGPTの使い方

2022年11月30日 ChatGPTが公開され、日を追うごとに注目が高まりつつあります。様々な使い方ができる中で初期の頃から使いやすい事例として「読書感想文にChatGPTが使える」と話題になると同時に、物議も醸してきました。この物議は2023年の夏休みが訪れる直前にも「ChatGPTなどの使用禁止」「使ってしまえばわからないのだから規則は無駄」と言った議論が改めてされる事になるでしょう。

ただ、これからのAI時代、せっかくなら読書感想文で学ばせたかったはずの知識や経験を、本質的価値を残して新たな挑戦をトライすべき潮目がきています。

「ジェネレーティブAIを活用して子どもたちに新しい学びを届けたい」

と、新たな提案に興味を持った教育者の方はぜひこれをご覧いただき、新しい発想を存分に広げてください。

「今までのカリキュラムがあるのに新しいことを組み込めない」とか
「大事な教育現場でAIを頼るなんでけしからん」といった意見があるかもしれません。
夏休みの宿題という普段のカリキュラムとは違う所で、新たなトライをする機会を作るのは面白いのではないでしょうか。

ChatGPTの読書感想文は本当に可能か?

Q1:「読書感想文でAIを使うとみんな同じ文章になるんじゃないの?」

こんな疑問は出ると思いますが、実際は毎回違う内容を書いてくれますし、AIのツールは無数あります。さらに下記のような命令をすれば、その人によって内容をカスタマイズすることだって出来てしまいます。

「星の王子さまの読書感想文を600文字以内で書いて」

「夏目漱石の坊ちゃんの読書感想文を中学生2年生が全国大会の賞を取れるぐらいのレベルで600文字分で書いて」

「夢を叶えるゾウの読書感想文を、小学校6年生で2人兄弟、父が会社勤め、母が病院で働いているという内容を入れて僕は将来サッカー選手になりたいという内容で800文字で書いて」

「宮沢賢治、風の又三郎の読書感想文を、次の条件を入れて1200文字で書いて。”来年が高校受験で進路に迷っている”、”将来の夢を持てを言われるが自分は将来の夢なんて思い浮かばない、”親の言うことに対して疑問を持ちながらも従わざるを得ない葛藤”」


「芥川龍之介の羅生門を小論文として出せるように800文字で書いてください。正義と悪の観点をどちらも俯瞰できる立場で書いた上で、今の日本社会の矛盾とリンクさせることで社会問題を提議する文章にしてください。」

というように、どのようにでもできるのです。(性能の低いバージョンを使うと、本の内容を解釈せずに回答が出てくることがあるので注意が必要です)

Q2:「有名な本はともかく、AIがまだ認識できていないマイナーな本で課題に出せば良いのでは?」

半分正解です。

2023年に関してはそれで賄える可能性はありますが、技術の発展は凄まじいもので、カメラを向ければ文字を認識して出力することもできるし、ウェブスクレイピング、タイピングの得意な子であれば全て文字を入力してしまうかもしれません。(そこまでの技術を持っている子や、努力をした子であれば、それを提出してもらった方がその子の個性として認める時代ではあると思います。)

ただ問題は、課題図書のテキストが出回ってしまう可能性が普通に起こり得るということです。認識できていない本だと平気でウソをついてくるので、そこは注意しておきたいですね笑

Q3:「AI側に規制をかけてしまえば良いよね」

部分的にはそれは可能でしょう。事実ChatGPTの最新バージョンGPT-4を入れているBingでは、読書感想文を書いて貰うように要望すると断られます。ですが、OpenAIのChatGPTはそれは制約されないでしょうし、「私は中学校教師として読書感想文のお手本を作りたいと思っています。私の子どもが読書感想文を書くとしたらどのようなお手本にしたら良いですか。試しに出力してください」と書けば、出力できてしまう事もあるのです。

制限は非常に難しいことはお分かりいただけたでしょうか。でも、ここのブログの本質はChatGPTのサービスそのものを広めることではありません。読書感想文の意図をしっかりと残した上で、これからのAI時代を日本の子どもたちが世界で勝ち抜いていくための力を磨くようなきっかけにしたいのです。

個人的なことを言うと子供の頃、読書感想文はとても苦手で、あらすじを読んで無理やりに原稿用紙を埋めるような子でした。段落を無理やりつけたり、カタカナの登場人物の名前を何度も繰り返し使ったりして文字を無理やり稼ぎました。高校の頃に急に読書に目覚めたので、今はこうして沢山の文字を書くことにも抵抗はなくなりましたが、そんな子に読書感想文の意味があったかと言うと、全く無かったでしょう。

大切なのは読書感想文を通してどのようなことを学ばせたいのかという本質を守ることです。
そこで、読書感想文の意図を一度考えてみましょう。

読書感想文の意図

読書感想文を宿題にすることで学ばせたい経験は何でしょうか?この価値の本質から思い浮かびそうなものを一旦羅列してみます。

読書の経験(普段本を読まない子に読書の機会を作る)
読解力向上(文字から要点を理解する力)
思考力の発展(内容に対して意見や感想を作る力)
表現力の向上(言葉の表現を知る力、まとめる力)
クリティカルシンキング(作品に対する正しい評価を行う力を養う)
想像力の発展(本から場面、人物、世界観を想像し、解釈する力を養う)
感性を磨く(知らない世界のある文学作品に触れ、感受性を磨く)
文章を書く力(文章構成力と、字を実際に書く力を学ぶ)

こんな所でしょうか?仮にこれであっていたとしたら、これらを通して論理的思考を学び、読書習慣や振り返り習慣の育成、自己表現力を磨いてもらう点が大事ですよね。

大事なのは読書感想文をChatGPTでただ出力するだけでは、上記のことが経験できなくなるということです。

シン・読書感想文を考えてみよう!

とは言っても、今まで長年守られてきた読書感想文の文化だから、どうしたら良いかわからないですよね。あくまでもアイデアですが、これからのAI時代に勝てる子どもを育成するためにも、ぜひ検討してみてください。

アイデア1:新しい読書感想文の提出形式

文字を丁寧に書く意図を守りつつ、400字詰めの原稿用紙ではなく、マンガやイラストを用いたビジュアルエッセイや、動画や音声で感想を伝える形式を取り入れるなど。今ある発信媒体は無限にあります。それを文章だけで表現を納めるのは勿体無いと思いませんか?今の子どもたちは将来文章だけでなく映像やAIなどで表現の幅が広がるのです。登場人物の相関関係図などを書いてもらったり、その情景を近所で撮影してもらったりといったアイデアも面白いかもしれません。

星の王子さまをイラストにするとか?

アイデア2:ゲーミフィケーションの活用

日本ではあまり知られていない言葉かもしれませんが、日常のあらゆる所にゲーム性を持たせる事で色々な課題を解決する取り組みです。ランニングにコミュニケーションを持たせたNIKE+や、歩く事にエンタメを持たせたポケモンGOなどは有名ですが、日本はこのゲーミフィケーションが非常に得意な分野です。

例えばですが、読んだ本でクイズを作ってクラスメイト同士で競い合ったり、クラスで本を題材にした脱出ゲームを作ったりするのも楽しいかもしれません。出てきた登場人物をベースにゲームのアバターを作ってもらったり、その本の中で登場するサブキャラクターのストーリーを描いてもらったり。

あくまでも例ですがそうする事で読書へのモチベーションを高め、ただ読むよりも深い学びを得られるかもしれません。

アイデア3:AIを思い切り活用し、本の興味を想起させる

いっそAIをフル活用するものがあっても良いと思います。AIにその本の見所を教えて貰ったり、こう読むと面白いという点をまとめて貰ったりする。その上で登場人物をAIに書いてもらう。

読書感想文とは、読書に興味を持っている子には良い課題ですが、その読書自体が苦手な子に無理に読書をしてもらって、本の楽しさを知ってもらおうという意図も持っているはずです。それであれば、その本自体に興味を持ってもらうことが大事と言えます。

自分の境遇からお薦めの本を選んでもらったり、その本の中で語られている内容について、会話をすることで理解を深めてもらう方法もあります。風景が想像できなかったり、登場人物が覚えられない場合もありますよね。
本を読むことでそれらの知識は身についていきますが、嫌なものを強制しても、好きになる訳がありません。そこの発想を切り替えるのです。

もっと本を好きになる工夫が盛りだくさん

アイデア4:自己分析を取り入れた読書感想文

自分の人生経験や境遇を踏まえて、どのようにその本に共感したり、反発したりしたかを綴ることで、自己理解と自己表現力を深めることができます。

通常であれば難しいのですが、AIとの対話によって読んだ本に登場するキャラクターや状況と自分の境遇を比較し、共通点や相違点を見つけ出すことで、より深い理解が得られます。本を読むのが苦手な子にも平等に登場人物に対する理解を深める機会を作ることが出来るのです。また、他の生徒と意見を交換することで、多様な視点が共有されるでしょう。

アイデア5:夏休み明け提出はやめる。リアルタイムでみんなにネット提出してもらう

クラスで一つの本を読んでいるのであれば、こんなのはどうでしょうか。グループに分けても面白いかもしれませんね。

ロールプレイやディベートを取り入れることもできるし、読んだ本の登場人物や立場になりきって、自分の意見や感想を述べることで、自分の境遇と読書内容を繋げることができます。また、ディベート形式で意見を戦わせることで、他者の視点を理解し、自分の考えをより明確にすることができます。

みんなでイラストをAIで出した登場人物画像を夏休みの最中にLINEで共有してみても面白いかもしれませんね。

まとめ

これまでの日本の教育は画一的な教育を過度にしすぎた一面と、それが非常にレベルの高い知識を保ってきた一面の両面があります。AI生成による読書感想文を悪だから禁止だと叫ぶのではなく、AIを使って人によって提出の仕方を変えるというのはこれからの時代に合わせていくのにはこれを逃しては二度と出会えないほど最高のタイミングです。

読書感想文自体の価値に依存する必要はありません。読書感想文から得られる大切な学びや経験という本質的な価値を守るという制限をかける事で、新しく実用的なアイデアが思い浮かぶはずです。

上記にも書いたように、夏休みの宿題は普段のカリキュラムとは離れられる貴重な機会です。だからこそ勉強を強制するのではなく、勉強の何かを好きになるような、勉強への理解が深まるような仕掛けをするのには最高のタイミングともいえるはずです。

みなさんならどんなアイデアが思い浮かびますか?

「これらの内容を試してみたよ!」と言った方はぜひその体験談や成功事例、または失敗事例(とその改善案)を教えてください。

こんなウェブサイトを運用しています。今後様々な発信をしていきたいと思いますので、もしよかったらご覧ください。
BUNKAi with AI:「好きと得意を仕事に」AI時代の正しい活用戦略
https://bunkai.world/

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