【51】「過電流と短絡の違いは何ですか?」という質問への回答:真面目な話だけどおかしな話 2022.7.17

Quoraという質問・回答サイトがあり、中々面白くて時折見ているのですが、その中でこういう質問があり、それを見て、私が実際にした失敗談を思い出し、思わず回答を投稿してしまいました。

もう数十年前になるのですが、
その頃、私は新製品の開発をしており、最終段階で工場の一室で、連続作動試験をしていました。

試験中は人が付いて定期的にデータをとる必要があり、納期も間近いのでその日は夜中に徹夜で作動確認をするということになり私が付いていた時のことです。

装置の設置場所が壁のコンセントから5-6mの距離があり、装置本体の電源ケーブルでは届かないので、大は小を兼ねるというわけで、そこにあった50m位のケーブルが巻かれたケーブルドラムをつかって延長して接続して使ってました。

ケーブルドラムの電流定格は15A、装置の使用電流は10A位ですから問題はありません。

試験を開始して3-4時間経過し、すでに真夜中となり、皆帰ってしまって周囲には他にだれも人が居ませんでした。

その時、ふとゴムが焼けるようないやな臭いが漂ってきたのです。

何が起きている?
慌てて見渡すと、ケーブルドラムから白い煙が上がっていたのです。

飛んで行ってみるとチンチンに熱くなっていて、ケーブルを被覆したゴムが熱で溶けかけてもうもうと煙を出していたのです。

原因はすぐにピンときました。50mのケーブルドラムは実際には5-6mで足りましたから残りの45mくらいはドラムに巻かれたままだったのです。もし全部伸ばした状態なら周囲の空気に冷やされて問題なかったのですが、巻かれた状態だと熱がこもり発散しないのでどんどん温度が上がってしまったということなのでした。

このままでは火事になる、と私はあわててケーブルをドラムからはずそうと引っ張ったのです。

すると、すでに時遅しで、ゴムが半分溶けた状態になってしまっていたため、中の芯線がずるっとゴムから抜け出てきてあっという間に2本の線が接触しショートして、その瞬間工場のブレーカーが落ちてあたりは真っ暗になり、後で散々怒られました。まあその一角だけの停電で済み大きな実害はなかったのが不幸中の幸いでしたがほんとうに驚きました。

あの時の、芯線が、溶けたゴムの中からズルっと抜け出た時の嫌な感触は今も手に残っています。

*質問に関する回答ですが、

最初のゴムの絶縁が溶けてしまったというのは、定格電流を越えた過電流によるもの。ケーブルドラムのようなものを使用する場合、巻いた状態で使ってしまうと解いた状態で使うよりも定格電流は下がるということから来た問題でした。電気関係の仕事をされている方は頭の片隅に入れておいた方がよいかもしれません。

芯線がショートして工場のブレーカーが落ち停電になってしまったのが短絡によるものということです。

短絡も過電流の一種ということはできますが、極限の過電流で影響度が別格である点から、普通は別扱いされます。

(注)ケーブルドラムの使用上の注意について下記ツイッターを見付けました。けっこうやっちゃうことのようですね。
https://twitter.com/yocwitter/status/721336863500308481/photo/1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?