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メガネ、そのいとしきものよ

はじめに

このエントリは、うじを氏による「謎解きクラスタによる謎以外の Advent Calendar 2022」に向けて書かれた記事です。
前半は無駄に長いので、脱メガネをしてICL手術を受けたという体験本編を知りたい方は後半までジャンプだ。

突然ですが

突然ですが、あなた、目が悪いですよね??

そう言われて心当たりのない人はーー特に謎界においてーー稀有なのでないでしょうか。
それくらい、謎好き≒メガネの方程式は、ほぼ確立しているといえるでしょう。
謎の解ける人が集まる企画や番組を見ればメンツの大半がメガネ、野良で行った10人謎解きで、顔を合わせてはじめましての顔ぶれが全員メガネ、なんてのは、謎界においては当たり前な光景です。

かつて放送された『リアル脱出ゲームTV』という謎解き番組において、桐谷蝶々さんの声で「がんばれ、そこのメガネ」と呼びかけられ、この声に大いに発奮したメガネは多かったことでしょう。

私とメガネ

かくいう私も、メガネです。いいえ、メガネでした。
メガネと初めて触れ合ったのは、中学2年生の夏。
親に隠れて暗い寝室でプレイしたゲームボーイの『マリオのピクロス』にどハマりし、寝る間を惜しんでのめりこんだ結果急速に視力が低下して以来、メガネと私は切っても切り離せないものとなりました。

高校もメガネ、大学のときにコンタクトにしたものの、社会人になってパソコン仕事と目の渇きの相性の悪さに辟易し、妻帯を機に再びメガネ還り。歴にしてほぼ20年、ずっとメガネ。
そう、私はメガネでした。

特級呪具、メガネ

思えば、私が子供の頃のメガネといえば、まったく矯正器具としての意味合いしかない、リムもテンプルもむき出しの金具、鈍い銀色の無骨なデザインの味気ないものでした。
思春期の少年がそのようなものを身につけるというのは、「自己の振る舞いによって視力を落としてしまったといううしろめたさ」と、『俺はいま贖罪のようにこんなクソダサなものを顔面に貼り付けている』という意識とが相まって、『こんなんでモテるわけがない』という思い込みに容易に昇華し、人の心を陰キャに導くのに確実に寄与したと考えます。
そうだ、青春時代、あんまりモテなかったのはメガネだったからに違いない。きっとそうだ。

現代のメガネ

そう考えれば今のオシャレメガネ全盛の世の中は、ずいぶんとメガネにも優しい世界になったと思います。メガネが個性として尊重される時代。イケメガネがもてはやされ、ガチャでもメガネを付けただけの既存キャラで爆売れ。3次元でもちょっとメガネやグラサン姿を出すだけでRTの嵐。
AVでもメガネぶっかけなんて特殊なジャンルが確立されていますね。

素晴らしい。隔世の感があります。

だがしかし

だが。だがですよ、メガネ諸氏。
メガネの方々、特にカジュアルでなくダブルオー族視力0.0xの人々には強く同意いただけるものと信じているのですが、

結局、メガネって、重くないですか?

カジュアルメガネはパーツもプラスチックや細いチタンで出来ていて、エアリーやウルトラライトなどと、軽さを謳っている商品は多いです。
しかし、その軽さのメリットをまとめて畳み込んでゴミ箱にポイーっとしてしまう重さが、レンズにあります。
おしゃれメガネ屋さんで、これ似合う気がするし軽いし、いいなと思って選んだフレーム。
しかし出来上がったメガネには、ハムカツみたいな厚みのレンズがずしり。
その重みが耳と鼻骨に突き刺さり、顔にズシリと乗ってくるわけです。

ただでさえ目の悪さと眼精疲労でくたびれているのに、さらに物理的な重みまでかかってくるのだから、とにかくずっとなんか重い。
しかもちょっとライブでモッシュ浴びれば飛んでいくし、悪漢と対面した時にメガネを奪われればなす術がない。寝てる間に息子にメガネをベッド下に投げ捨てられ、半泣きで手探りで探した夜もありました。

メガネは視力というかけがえのないものを手軽に救ってくれはしますが、その手軽さゆえに、時には命にかかわるものを預けるには心もとない存在でもあります。

ずっと考えていました。
この20年来の相棒と、サヨナラサラバする方法はないのかな、と。

そして2022年の誕生日を迎え、ついに私、脱メガネしました。

脱メガネへの歩み(本編)

前置きが長くなりましたが、これは私の私による、脱メガネ体験記です。世に数多いるメガネerや、さも自分は違いますよとデイリーコンタクトでごまかしている皆さんに参考になればと思い、記します。

1.検討

メガネを終えて手術しよう、とは以前から考えていましたが、そのころ主流だったのはご存知「レーシック手術」でした。
角膜にレーザーを当てて屈折率を加工し、見え方を矯正する手術です。
ただ視力自体は回復するものの、見え方が荒くなるとか、グレアが激しいとか、可逆性がない中でえいやと挑むには抵抗のある噂も耳にして、なかなか踏ん切りがつかない状態でした。
そんな折に知ったのがICL (Implantable Contact Lens)手術でした。

2.ICLとの出会い、そして

ICLというのは、角膜の前にちょっとだけ穴を開けて、そこから個人に合った半恒久利用のコンタクトレンズを差し込んで矯正する手術です。

レーシックとの違いはいくつかありますが、特に「可逆性」が大きいです。コンタクトを差し込んでいるだけなので、何か問題があればまた抜き取るだけで元に戻り、度が合わなくなれば費用はまたかかるにせよ、差し替えることも可能、とされています。
レーシックに対して漠然と覚えた不安に対し、こちらは解が明確であり、その性質に安心感を覚え、ICLを選択することにしました。

3.初通院

ということでICL手術について調べてみると、費用もばらつきがあり、保険適用外なので各院の技術料としてどこまで払うか、という世界になっていることがわかります。そう、わずかに開けた隙間からコンタクトをねじ込むという技術が、医師の経験値にかかってくるのです。

私は臆病なので、業界トップの実績量と、その技術的対価であろう値段をもって信頼することに決め、ある院のサイトから予約申し込みを行いました。

初診の説明と眼球検査を受けたのが、6月29日。
そこでは普通の視力検査・眼圧検査のほか、角膜が手術に耐えられるか、といった厚みのチェックなども行われ、手術には恐らく問題なさそう、との確認が得られました。
またその後の動きについてもそこで説明を受けました。
・レンズ調整は個人単位に程度アジャストする必要があり、元の素材があれば良いが、場合によってはレンズ自体を新規作成する場合がある。
もしその場合、米国での生産になるためいつ手術できるかが不透明、とのことでした。
戦争の影はこんなところにも影を落としていました。
ここでまず、初診料1まんえんを支払います。
まだ書かないものの、最終的な手術の同意書や手術に向けた説明資料もいただいて、この日は終了。

4.再点検

検査は日を改めて2回行われます。同じ検査を2度やって間違いがないことを確認したり、より精緻な検査を持って矯正後の情報を確定させるためです。
また、視力の補正度合いの意向確認があり、例えば1.5程度にバキバキに見えるようにしたいのか、それよりは少し下げて目の疲れを抑える方向にしたいのか、を聞かれます。
私の場合はデスクワークということもあり、最適より少しだけ度を下げた状態にしました。やはり最適視力で近いものを見続けると疲れやすくなるらしいです。
7月に2回目の検査があり、そこで実質的な手術意思確認を行いました。
実質、というのは、ここでレンズの調達を依頼するにあたり、手術費の半額くらいを頭金で入金するため、です。
ここでお金を払っても手術はやっぱりやめた、ということはできますが、この頭金は返還されません。まあまあな額になるので、もうここは腹を括っているフェーズです。

ここで頭金を支払うと、いくつか目薬を渡されます。手術日が決まったら、その数営業日前から目に消毒を行い、手術事後を防ぐため、です。

そしてしばらく経ったあと、レンズが調達でき、手術可能となったことが電話で告げられました。

5.手術

手術の日程は9/18になりました。
3連休の真ん中、観測史上例を見ない強力な台風が、九州に乗り上げて猛威を振るっていたその日でした。この記事をあげるちょうど3ヶ月前のことです。

病院に着くと残額のお支払い手続き後、目薬を渡され、5分おきに点眼を求められます。瞳孔を開かせたりするやつで、自分の瞳孔が開くとこんな感じなんだ、と初めての感覚を味わいました。

その後は手術前室に入室します。
最初から貴重品以外はロッカーに預けていましたが、ここでポケットの中身をハンカチまで全部出すことに。コンドームとか尻ポケットに入れてる男子はその前に出しておきましょうね。

手術前室からは、よくドラマで見る患者様のガウンと手術帽を羽織らされ、手術席まで歩かされます。
当たり前ですがその間、メガネは外させられ、瞳孔もガン開きなので、なんかぼんやりした視力で手を引かれるままとなります。この時点で目に麻酔が効いているはずです。

席に着くと、顔に目以外をおおう布をかけられます。
瞬きしないよう、瞼を簡単なテープで固定され、上から強い光を当てられています。術中は、この光だけをずっと見てるように、とのこと。

いつのまにか背後にいた先生が、始めますと言って手術開始。
とはいえ消毒薬をかけられたり、眼球に少し強い圧迫を感じる程度。麻酔効いてるからね。
光はよくわかんないけどめっちゃ動くのでそれを追っていたら目を動かさないで、と怒られました。いや光見てろって言ったのに…
目にあほみたいにぶっかけられる消毒液のせいで、光の出所がめちゃくちゃに屈折していたのに、律儀に追いかけてたせいのようです。

最後にちょっと染みる薬を浴びて、終了。
出た後はしばし休憩、その日以降の目薬を大量・多品種でいただいて帰宅、でした。

6.術後

手術直後は、特に右目は、少しぼやけたりぼんやり白いもやがかかった感じになりました。見えはするので帰宅に支障はありません。ただ、めっちゃ見える!とはならず、大丈夫なのかなあと少しだけ不安になります。

帰宅後は、スマホやテレビは極力見ずに。
2時間おきに点眼
翌日からは日に4回
が開始です。
ただこれ、術後はめちゃくちゃ目が乾くので、このサイクルを無視してたらすぐ目が痛むので忘れようもありません。
ちなみに私はドライアイがひどかったのか、術後検査時に先生に相談したところ、ヒアルロン酸の目薬をドライアイ用に渡されました。
なるほど、ヒアルロン酸ってこういう時に使うのね。

術後は1日、1週間に通院することになっており、その予約も順次入れていく形になります。

余談ですが、手術翌日検査の日、前述の台風が都内にも襲い掛かってきました。
ちょうど通院のために家を出た直後に、差していた傘も意味をなさないほどの豪雨に見舞われました。
実は手術日は入浴はNG、翌日も顔は洗ってはいけない、目に水が入ってはいけない、と注意されているのです。
にもかかわらず、顔はおろか全身に豪雨を浴びてびしょびしょの患者が入ってきたとき、病院の受付の人がどんな顔になるか、はじめて見ることができました。この時点の視力は前日と比べると、だいぶ良好になっています。

2日をすぎたあたりで、白いモヤは消え、視界はすっかり良好に。
1ヶ月後 眼圧、レンズのかかり具合の確認と、最新の目薬をもらいます。
それで目薬終わったらおしまい、とのことでした。特に目薬の費用とかは発生しません。内金なんでしょうね。

術後の感想

そんなわけで今日で術後3ヶ月が経ちました。体験した感想をまとめてみます。

1.視力はどうなの?

 よく見えるようになりました。今両目とも1.0くらいの矯正になっています。
ただ、右目にあった乱視の矯正をもっと強めにすればよかったかな、とは思っています。右目だけで見るとちょっと心もとない感じ。まあ私利き目左なのであまり影響は出ていないのですが。
会社の健康診断などでの視力検査は、ランドルト環の切れ目がなんとなくわかるので、ヤマ勘でこたえて事なきを得ることも多かったのですが、術前検診も同じノリでやってしまうと見えてないのに見えてる評価にされちゃうので、そこは真正直にもっと見えるようなこだわりを持つべきでしたね。

2.違和感はあるの?

3か月でだいぶ慣れましたが、やはり点眼はまだいつでも差せるようにしています。病院からもらう目薬は使い終わったので、あとは市販のものを指してます。特に秋冬の空気の中では、25年メガネによって風防のように守られていた眼球がめっちゃ乾くので、これが裸眼erの暮らしなのか…と日々実感しています。
あと、夜のグレアはやっぱりちょっと、感じます。これも出かけて帰ってくるときには目が乾いているせいなのかもしれませんが、車や自転車のライトなどが目に入ると、光源以上に視界に光が多くなるので、自転車乗ってるときなんかは不測の事態に少し気を付けて走ってます。

3.おすすめ?

個人的には、やはり視力にはお金を出す価値があると感じました。
お勧めです。
PS5が10数台買える額なので一括支払いはまあまあ厳しかったですが、世の中には医療ローンと呼ばれるサービスがあり、低めの利率で手術にかかる費用を分割支払いできます。
メガネはさておきワンデーコンタクトだと月に7~8千円、年額で8万弱かかっているわけですから、分割すれば負担額はどっこい。10年もあれば減価償却が保障されています。またその間、毎朝毎晩のつけ外し作業や、ずれただのホコリ入っただの、つけたまま寝ちゃっただの、突然のお誘いだけど予備のコンタクト持ってないから帰らなきゃ…みたいなことから一切解放されます。
メガネだとしてもスポーツチャンバラ体験で顔面殴打されてメガネフレーム割れちゃった…!みたいなリスクを負うこともなくなります。
少しでも今のド近眼ライフに不便さを感じている方は、一刻も早く検討をお勧めします。

なにしろ、「45超えたら次は老眼始まるんで、結局そのうちメガネ必要になるよ」とのことですので。。

4.終わりに

最後に一つだけ、伝えておきたいことがあります。

それは、「VR動画を見る趣味の人は、近眼であるメリットがある」ということです。

近視の人間にとって、VR動画というのは、実は少ないメリットが活かせるコンテンツなんですね。近視ということは目の焦点距離が近い。つまり人よりも、近くのものに焦点が合わせやすいのです。
VRコンテンツの、まさに目の前にその景色にょたいがあるかのような臨場感は、近視の人間だからこそ味わえた恍惚だったのかと、ヘッドセットを外した賢者モードの中で思いました。

以上


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