信号があと3回点滅したら
降りる駅よりひとつ手前の駅で降り、
LAWSONで買ったホットカフェラテを片手に、くねくね歩いて帰った。
最近涼しくなったもんで、やっと自由に外を歩けるようになった。
暑がりだから、夏とかは一歩たりとも歩きたくないね。
信号は大抵青なんだけど、1箇所大きめな交差点で赤信号をくらった。
2秒躊躇ったあと、10歩くらい引き返し、花壇の端に腰を下ろす。
前の方では別の信号が点滅しては赤くなって、青に変わって、また点滅をしていた。
さて、いつ立ち上がろうかと迷ったとき。
ふと、
もし自分からちょっと離れた段差にもうひとり、誰かが座っていると考えた。
「信号があと3回点滅したら、あの子に声をかけよう」
なんて、
魂だか思念だか、まるで幽体離脱したように、ちょっと離れたところに「自分」はいた。
「あの子」のことを見ていた。
もしあの子と自分が話せたなら、さぞ奇妙で楽しい会話が繰り広げられただろう。少し肌寒くなったところで、お互い名も知らぬまま、死ぬまで再会することなく別れただろう。
死ぬまで再会しないという言葉に、何とも言い知れない魅力を感じてしまう。
実際には、知らないおじさんが座ってたんだけどね。
タバコの煙がこっちに流れてきたから、立ち上がって帰ることにした。悪いね、吸ってていいけど、煙の匂いは少し苦手なんだ。
あの子は置いてきた。
2023.10.6 星期五
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