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ロリコンケチ男

大学生の私は早く大人になりたかった。
同年代のハツラツとした感じが少し鬱陶しいとも思っていて、落ち着いた大人の男性に惹かれた。

彼に恋に落ちるのに時間はかからなかった。
イベントバイトに行った際に出会った広告代理店勤務の彼。背が高くてシュッとしていた。学生時代はテニスをしていたらしい。
イベント会場でもスマートにコミュニケーションを取っていた。
人を笑わせるのが上手で、彼の周りにはいつも人が集まる。

彼は私の10個上だったが、おじさんだと思わなかったし話も合った。
知識が豊富で、一緒にいると自分が大人になった気がした。

彼は都内にマンションを所有していた。
収入はありそうだが、ブランド品をあまり好まず服はユニクロを着ていた。浪費しないことも地に足がついた大人っぽさを醸し出していてかっこよく見えた。

大学生の私には馴染みのないようなダイニングバーに連れていってくれた。
付き合い初めの数回は、外食をしても彼がご馳走してくれた。

恋愛経験が乏しく奢られ慣れていなかった私は、申し訳ない気持ちになり、割り勘にしようと提案した。自分の分は自分で払わせてほしい。
彼は気にしなくていいと言いつつも提案を受け入れてくれた。

付き合って1ヵ月くらいしたある日、マクドナルドに行った。
映画を見ながら家で食べようという話をしていた。

「今細かいのないから払っといて」

何気ないカップルに日常会話だ。
後日お金を渡してくれると思い、とりあえず出した。

しかし、マクドナルドのお会計のことはすっかり忘れられた。
たかが¥1,000。それくらいの金額でネチネチ言う小さい女だと思われたくなくてモヤモヤしながらも追及することはやめた。

そんなモヤモヤが払拭できないまま次のデート。
今まで気にかけてなかったけれど、割り勘と言いつつ私の方が多く払ってないか?と疑い始めてしまう。

お会計が¥3,300だった。細かいのがないからと私は¥2,000を出す。
彼は次多く払うからと言い、差額を渡してくれない。

「あとで返すから出しといて」
「次多く払うから」

金額的に些細なものだった。
彼の家にはよく行くし、すべて割り勘を言い出したらキリがない。
何より「お金」のことをいう女は可愛くないだろう。

憧れていた大人の男性とは程遠かった。
割り勘にしようと言った私の気持ちに嘘はない。
しかし、御馳走になってもこちらが罪悪感を抱かないような対応は出来なかったのだろうか。


「先輩が焼肉奢ってくれるって!」

ある日、彼の先輩夫婦との会に私も誘ってくれた。
「私もいいの?」と確認したら、歓迎ムードとのことで嬉しくなった。

普段行かないような個室の焼肉屋さんだった。
先輩夫婦はとても良い方だった。どんな彼女か見たいとのことで開催したとのことで接待された気分で楽しかった。
お会計は先輩が気付かないうちに終えていた。

「御馳走様でした」
美味しいごはんを食べて満たされた気持ちになった。
手土産を持ってくるべきだったなと思った。次の機会に渡そうか。


後日、彼とランチデートした。

「御馳走になった先輩にお礼したい」
さすがに高そうなお店だったので、お菓子くらい送った方がいいかと思ったので彼に伝えた。

「そんなのいいよ~、いつも奢ってもらってるし」

彼とは価値観が合わないようだ。
いつも奢ってもらっているなら、尚更お礼しろ。
彼はそういうことに疎いというより品がない。

その日はパスタを食べていた。
いざお会計になったときに彼は衝撃的なことを言った。


「こないだ俺の先輩が奢ってくれたから、今日は御馳走様です」


引く。冷める。すっごく嫌だ。
モヤモヤが確信に変わった。

「ごめん、今日¥2,000しか手持ちなくて。また今度でいい?」
「用事できちゃったから帰るね」


彼とは二度と会うことはなかった。
同年代に同じことをされても気持ち悪いと思ってしまうだろう。
30歳超えた社会人の男と学生の恋愛と考えると背筋が凍る。

きっと彼が未熟すぎて大人の女性とは話が合わなかったんだろうな。

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