第3回「現代と親鸞」公開シンポジウム(2022/2/12)【開催趣旨】

 2022年2 月12日(土)に第3 回「現代と親鸞」公開シンポジウムを開催した。前回に引き続き、オンラインでの開催となった本シンポジウムについて要録をお届けする。これまでも多様な分野の専門家をお招きし、多角的に問いを深めてきたが、本シンポジウムはより研究領域を横断したものとなった。シンポジウムテーマに掲げた〈いのち〉という語りが、それほどまでに広域に語られているということでもあるのだろう。

 〈いのち〉という言葉のもつ肯定/否定のイメージについては、すでに『岩波講座 宗教』第7 巻「生命——生老病死の宇宙」(岩波書店、2004)の序講に池上良正が指摘している。負の面としては、〈いのち〉という統合性・全体性を賛美する言説が全体主義へと向かう危険性などがあるとする。あるいは、「いのちの輝き」といった美しい言葉では決して美化することのできない汚辱、苦悩深き人間の現実があるのではないかとも言う。〈いのち〉という抽象的な言葉では捉えきることのできない「私」「あなた」の物語があるのではないだろうか。そして「私」に向かう以上、「大切」「輝き」という形容では覆い隠すことのできない私の罪悪・苦悩の問題がある。

 〈いのち〉という語りによってむしろ見え難くなっている人間の問題を掘り起こすことをシンポジウムテーマとした。しかし、それでもなお必要な〈いのち〉という語りの側面も論じられ、まさに多角的な検討の場となった。

※『親鸞仏教センター通信』第81号(2022年6月号)、6面より転載。なお本号(登壇者報告、コメントの各要旨)はこちらよりお読み頂けます。

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