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MLB 黄金期を目指すチーム SEA編

このページでは、MLBが発表した
Prospect Rankings 2024を分析し
今後黄金期を築くであろうチームを
個人的に予想します。

個人成績については
MLB.comを参考にしております。

プロスペクト(Prospect)とは有望株
つまりチーム期待の若手の総称です。
なかでも期待をかけられている選手は
トッププロスペクトと呼ばれます。

トッププロスペクトが数多く所属しているチームは
数年先に強くなる可能性が高いです。
「育った若手がチームの核となり、生え抜きスターに成長する」
そんな青写真が描けるからです。

有望なプロスペクトは全30球団に所属しております。
ではどの球団が、黄金時代を築くための
プロスペクト育成に成功しているのでしょうか。

私の選考基準はずばり
捕手とショートの両ポジションに
トッププロスペクトがいる球団
です。

本稿において採用する
トッププロスペクトの定義は
次の2点です。

1.各球団のTop5以内のプロスペクトであること
2.MLB全体のTop100のリストに入っていること

判断基準に合致する球団は
下記の4チームです。

  • Seattle Mariners

  • San Diego Padres

  • Chicago White Sox

  • Boston Red Sox

今回はSeattle Marinersについて取り上げます。


イントロダクション

MLBの歴史上、黄金時代を形成したチームは
時代ごとにいくつかあります。
なかでも下記2チームは、最強の誉れが高いです。

1970年代のシンシナティレッズ(通称:ビッグレッドマシン)
1970年から1978年にかけて地区優勝6回、リーグ優勝4回、
ワールドチャンピオンに2度輝く。

1990年代後半のニューヨークヤンキース
1998年から2000年にかけて
ワールドシリーズ3連覇の偉業を達成。

「王朝:dynasty」と称されるチームは他にもありますが
この2チームの安定感
他を圧倒し続けた強さは
別格に感じます。

これらのチームに共通している点があります。
生え抜きのスター選手が
センターラインを固めている
のです。

センターラインとは「捕手、二遊間、センター」
いわゆる軸となるポジションのこと。

とりわけ捕手とショートはサインプレーなど
チームの意思伝達を統率する役割が多く
常に他の選手とも連携を密にしながら
プレーをしなければなりません。

捕球やスローイングといった技術的な面でも
捕手とショートは最も確実性と強肩が求められます。

この2ポジションを固定できないチームは
コンテンダー(プレーオフを常時狙えるチーム)になることは
なかなか難しいでしょう。

ビッグレッドマシン
(捕手:ジョニー・ベンチ ショート:デーブ・コンセプシオン)
ヤンキース
(捕手:ホルヘ・ポサダ ショート:デレク・ジーター)

生え抜きとして入団・育成された選手が
大事な2ポジションにしっかりと収まり
長きにわたって活躍をしていることがわかります。

近年の強豪チームにも当てはまります。

2010年代のサンフランシスコジャイアンツ(ワールドシリーズ計3回優勝)
(捕手:バスター・ポージー ショート:ブランドン・クロフォード)
昨年大躍進したボルティモアオリオールズ(23年シーズン地区優勝)
(捕手:アドリー・ラッチマン ショート:ガナー・ヘンダーソン)

ドラフトで獲得したトッププロスペクトが
捕手とショートに収まったことで
チームが上昇気流に乗ったことが分かります。

球団内のトッププロスペクトリストに
捕手とショートの選手がいるチーム
個人的に要注目となります。

現在のレギュラー選手と照らし合わせ
数年後に最強のチームを作り上げる計画の途上を
心ひそかに読み取りながら観戦することで
メジャーリーグへの興味が一層高まれば嬉しいです。

今回はSeattle Mariners
シアトルマリナーズを取り上げます。
わたしが考える
次期黄金期候補チームの筆頭です。

球団公式Xより

マリナーズのトッププロスペクト

コール・ヤング(Cole Young)

生年月日:2003年7月29日(20歳)
スペック:182センチ、82キロ
打席:右投げ左打ち
ポジション:ショート
プロ入り:2022年 1巡目指名(全体21位)
球団プロスペクトランキング:1位
MLB Prospect Top100:33位
Scouting grades: Hit: 60 | Power: 45 | Run: 55 | Arm: 55 | Field: 50 | Overall: 55

非常にシュアなスイングをするコンタクトヒッター。
バットコントロールが巧みで、
フィールドの全方向に安打を飛ばす。
身長182センチと平均的な体格ながら
ツボにはまれば長打も打て、ミート一辺倒ではない。

ハリー・フォード(Harry Ford)

生年月日: 2003年2月21日(21歳)
スペック:178センチ、91キロ
打席:右投げ右打ち
ポジション:捕手
プロ入り:2021年 1巡目指名(全体21位)
球団プロスペクトランキング:2位
MLB Prospect Top100:34位
Scouting grades: Hit: 50 | Power: 55 | Run: 60 | Arm: 60 | Field: 50 | Overall: 55

捕手としてはやや小柄な体躯ながら
飛ばす力は一級品で、身体能力も極めて高い。
パワフルながらスイング動作はコンパクトで
穴が少ない印象を受ける。
足も速く、打って走れるアスリート型捕手。

コルト・エマーソン(Colt Emerson)

生年月日: 2005年7月20日(18歳)
スペック:185センチ、89キロ
打席:右投げ左打ち
ポジション:ショート
プロ入り:2023年 1巡目指名(全体22位)
球団プロスペクトランキング:3位
MLB Prospect Top100:78位
Scouting grades: Hit: 60 | Power: 50 | Run: 50 | Arm: 55 | Field: 50 | Overall: 55

コール・ヤングとスペック的にも近いタイプだが
よりパワフルなバッティングがエマーソンの持ち味。
ヤングがアベレージヒッタータイプなら
エマーソンは30本塁打30盗塁が狙える素材に思える。
ガナー・ヘンダーソン(オリオールズ)のような
成長曲線が理想的か。

成長と進化:プロスペクトたちの軌跡

コール・ヤング

2023年シーズンを終えてのマイナー通算成績
2シーズン計143試合出場
打率2割8分6厘、159安打、13本塁打、73打点
35二塁打、10三塁打、26盗塁
96四球、98三振、出塁率4割2厘

昨シーズンまでのマイナーリーグ通算成績から
ヤングの武器を探っていきましょう。

まずは143試合で35二塁打と10三塁打を稼ぎ出した足です。
とりわけ10三塁打は多く、走塁能力の高さが垣間見えます。
26盗塁を決めており、盗塁と走塁の両方で
チームに貢献できる選手といえるでしょう。

アベレージスタイルの特性を活かし
三振数は98個と少なめ。
加えて96四球を選んでおり、
出塁率は4割2厘とかなりの高さ。
ミート力に長けているだけでなく
選球眼も備えていることが分かります。

インコースのボールを難なくレフト方向に打つなど
動画を見ても確かにバットコントロールは出色。
隙があるヒットゾーンを狙って打球を飛ばし
野手の間を抜ければ快足飛ばして長打にします。

順調に成長すれば、リードオフタイプの巧打者として
マリナーズの攻撃の幅を広げる打者となるでしょう。

ハリーフォード

2023年シーズンを終えてのマイナー通算成績
3シーズンで計241試合出場
打率2割6分7厘、237安打、29本塁打、142打点
54二塁打、8三塁打、50盗塁
200四球、238三振、出塁率4割1分6厘

なんといっても200四球、出塁率4割1分6厘が目立ちます。
2023年シーズンだけで103個の四球を選んでおり
全マイナーリーグの打者の中でも3位に入りました。
出塁率を重視する現代野球において
非常にチーム貢献度の高い選手と見なすべきでしょう。

体格は178センチと、やや小柄ながら
かなりのパンチ力を秘めています。
広角に打球が伸びていきます。

通算で50盗塁を決めているように足も速く
走攻守に躍動感あふれるプレースタイルは、
現役メジャー最高の捕手のひとりと称される
J.Tリアルミュート(フィリーズ)を思い起こさせます。

スター性をプレー動画からも感じ取ることができます。

コルト・エマーソン

2023年シーズンを終えてのマイナー通算成績
1シーズン24試合出場
打率3割7分4厘、34安打、2本塁打、13打点
10二塁打、0三塁打、8盗塁
17四球、20三振、出塁率4割9分6厘

まだプロとしての実戦経験が少ないため
あくまで現在の数字を参考としての主観になります。

Rookieリーグ、Single Aを舞台として残した現在数値では
見た通り圧巻の成績を残しています。

ハイライト動画を一瞥したところ
将来的には20本を常時打てるような中距離打者、
まさにガナー・ヘンダーソンのようなタイプに
成長していければ理想的と感じました。

今後ステップアップをしていったときに
どのような数字を残していくか
長打を増やしていくのか
ポジションはショートのまま育てるか
或いは打力を活かしてコンバートか
様々な視点から注目をしてきたいところです。

マリナーズ黄金期到来の根拠

ここからは筆者がマリナーズ躍進に期待する
いくつかの根拠を記します。
ご紹介してきたプロスペクトたちが
いかに現有戦力に+アルファとなっていくのかが
成功を見極めるカギとなります。

魅力的な投手スタッフ

マリナーズのストロングポイントは
投手陣の安定感でしょう。
特に若き先発投手陣は他球団が羨む陣容です。

ルイス・カスティーヨ(31歳)
ジョージ・カービー(26歳)
ローガン・ギルバート(26歳)
ブライス・ミラー(25歳)
エマーソン・ハンコック(24歳)

中継ぎには
テイラー・サーセイド
ゲイブ・スパイアー
マット・ブラッシュ
コディ・ボルトン
など多士済々

クローザーは
100マイル越えの剛速球
アンドレス・ムニョス

すでにシーズンを通して計算ができる戦力が揃い
しかもこれからの成長も期待できる年齢層。

マリナーズが2021年から2023年のドラフトで
3年連続高卒野手を指名した背景が
現在の投手陣から窺い知れます。

マリナーズの新時代を支えるのは
間違いなく投手陣です。

J-Rodの存在

マリナーズのセンターは今後10年不動です。
早くもマリナーズの顔となったJ-Rodこと
フリオ・ロドリゲスがいるからです。

23年シーズンは30-30を達成しましたが
彼にとっては単なる序章に過ぎないでしょう。

2021年から2023年にかけてのドラフトで
ショートと捕手の選手を1位指名したのは
不動のセンターであるJ-Rodと並ぶ核を
早いうちに見出したいからだと考えられます。

二遊間と捕手に軸となる生え抜きスターが固まれば
マリナーズはプレーオフ常連の強豪になれる。
ここ数年のドラフトに、
マリナーズ首脳陣の強い意志を感じます。

攻撃面においても相乗効果が期待できます。
J-Rodは強打かつ俊足のスター選手。
バットコントロールに秀でた
左打ちのヤングやエマーソンが
J-Rodの前後に絡むことで、
より得点のバリュエーションが増す打線が組めます。

本拠地にフィットしたプロスペクト

マリナーズの本拠地である
T-モバイル パークはメジャーでも有数の
ピッチャーズグラウンド(投手優位の球場)として知られます。

低い気温や湿った空気の関係で
打球が失速しやすく、フィールドも深いからです。

先ほど触れたように
充実した投手陣整備を優先的に進めることは
本拠地の特性を踏まえた理に適ったチーム編成といえますし、
長距離砲よりも二塁打、三塁打を狙える中距離打者を
重点的にメンバーに入れたいところです。

コール・ヤング
ハリー・フォード
コルト・エマーソン

今回ご紹介したトッププロスペクトはいずれも俊足好打、
フォードは広角への長打力もアピールしています。
いずれも本拠地向きの選手たちと言えますし、
今後の成長次第では三拍子そろった選手として
揃い踏みをする可能性も十分あります。

恐らくマリナーズ編成はそれを見越し
ここ数年のドラフトを進めてきたはずです。

では現状のマリナーズのチーム編成はどうなのでしょうか。
センターラインのレギュラー陣を確認することで
プロスペクトのデビュー計画を想像していきましょう。

マリナーズの現状と未来:黄金期へ

2024年5月10日時点で
20勝17敗は地区2位(5チーム中)。

特筆すべきはチーム防御率と失点数です。
失点126 → 地区1位(2位はレンジャーズの170)
防御率3.13 → 地区1位 (2位はレンジャーズの3.99)
圧倒的な投手陣の強みが数字にあらわれています。

課題は打率と得点力です。
チーム打率 .223 → 地区4位(最下位は .221のアスレチックス)
総得点138 → 地区5位(4位は154のアスレチックス)
チーム打率はアスレチックスを上回っていますが、
総得点はアスレチックスより16点も少ないのです。

アスレチックスは18勝21敗の地区3位。
チーム本塁打51本は地区1位(マリナーズは3位の40本)で
ホームランによる得点数が多いことが考えられます。
しかしチーム防御率は4.28(地区3位)で
失策数30は地区ダントツ最下位です (マリナーズは21で4位)

やはり豪打よりも
投手力と守備力が長いリーグ戦では
違いとなって結果に表れるようです。
広いT-モバイル パークを本拠とするマリナーズとしては
このまま投手力を維持しながら更に、得点と守備力に関して
課題と改善点があります。

近年のMLBにおけるルール変更で
盗塁は得点力アップの重要なツールとして浮上しています。
マリナーズはチーム盗塁数が22で地区3位(1位はエンジェルスの36)
ホームランがでにくく、投手力を売りにするからこそ
他チームよりも盗塁数で抜きんでていたいところです。

将来的な視点で
上記の課題を埋めてくれるようなメンバーを
編成していきたいと考えます。

マリナーズの現在のショート

遊撃手:J.P.クロフォード(29歳、2020年ゴールドグラブ受賞)
    ディラン・ムーア(31歳)

J.P.クロフォードは堅守の絶対的レギュラーです。
昨年はキャリアハイの19本塁打と長打力を向上させ
リーグ最高の94四球を選びました。
ただ今シーズンは打率1割台と打撃で苦しみ
5月に入ってスタメンをディラン・ムーアに譲っています。

クロフォードが本調子であれば
間違いなくショートのレギュラーは彼でしょう。

しかしキャリア7年で通算22盗塁と機動力は高くなく
磨かれた長打力と選球眼を武器に、より打撃を活かせるポジション
例えばサードへのコンバートなどは考えられます。
今後の守備力の変化の推移にもよりますが、
プロスペクトがつけこむチャンスはあると思います。

ディラン・ムーアは今季28試合で5盗塁と
こちらはスピードが武器のプレーヤーです。
しかし31歳の年齢を考えた時に
将来的なレギュラー候補というよりも、
頼れるサブメンバーとして計算に入れたい戦力です。

クロフォードも来年30歳に達します。
守備力の推移を見守り、
場合によっては後数年で、
打撃と出塁率重視への転換があるかもしれません。
今後数年のチーム編成は大変重要になるでしょう。

マリナーズの現在の捕手

捕手:カル・ローリー(27歳)

マリナーズの正捕手にして
MLBでも屈指の「打てる捕手」です。
2022年→ .211 27本塁打 
2023年→ .232 30本塁打

着実に数字を伸ばしてきています。
まだ今季がメジャー4年目で、年齢も若く
FA取得までも間がありますので
順当にいけばマリナーズの捕手は当面
ローリーで安泰でしょう。

投手有利の球場を本拠地にしながら
30本の大台に乗せるパワーは魅力的です。
それはすなわち、
もし打者有利の球場を本拠地にする球団に移れば
より本数を伸ばせる可能性が高いということです。

ハリーフォードはまだ21歳。
恐らくじっくりマイナーで実戦を重ね
ローリーがいる間にメジャーデビューをし、
少しずつ大成させるプランでしょう。

フォードの成長度合いにもよりますが
メジャーデビューから順調に実力をつけ
走攻守での成長を球団が評価すれば
ローリーをFA、若しくはトレードで出し
他の弱点 (例えば左腕エース候補)を補強しようと
考える可能性もあります。

もしくは
DHのメインにローリーを持っていき
フォードを捕手に抜擢する
という手段もあるかもしれません。
ローリーという第2捕手がフォードをサポートすれば
理想的な人材配置に感じます。

フォードの身体能力を活かしたプレースタイルは
T -モバイル パークに適しています。
J-Rodに並ぶスーパースターの柱とすることが
黄金期への道筋だと考えます。

結論

オリオールズの躍進が
私が考える常勝チーム誕生の理想図です。
プロスペクトの躍動は
チームとファンに上昇気流をもたらします。

2022年デビューのアドリー・ラッチマン
2023年デビューのガナー・ヘンダーソン、グレイソン・ロドリゲス
2024年デビューのジャクソン・ホリディ

マリナーズも
これに続いてほしい思いが強いですし
それを目論んでいるに違いないというのが
わたしの結論です。

2025年:コール・ヤング、メジャーデビュー
2026年:ハリー・フォード、メジャーデビュー
2027年:コルト・エマーソン、メジャーデビュー

20代前半の二遊間 + ハリー・フォード+ J-Rod
新しいマリナーズのセンターラインが
新時代を切り開き、球団初のWS進出を叶えてほしい
一ファンとして期待しております。

贔屓チームのプロスペクトをチェックし
今後どのようなチーム編成を目指していくか
GMの気持ちで観戦をしてみると
MLBへの好奇心がグッと増して、ワクワクします!

ご意見や議論をファン同士でできたら、楽しいです。
夢が実現すれば、ファン冥利に尽きます!

最後までご覧いただき、ありがとうございました!


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