ウヒョ助日本全国歩き旅 (第1回:自宅〜高田馬場)

ウヒョ助

漫画家42歳(当時)

そもそも歩き旅の始まりは「糖尿病予防のため、ダイエット散歩をしたい!」…が理由だった。

「太ってきたし、ウォーキングでもしようかなあ?」

この歳頃のメタボなオッサンが、1年に270回はつぶやく言葉である。わしも、その日の朝につぶやいた。

2017年 2月下旬。

早朝、まだ家族が寝ている時間に、そっと玄関を出て。 数年ぶりの純粋な散歩に心を踊らせ、のんびりと歩き出す。「すっごく健康的っぽいことをしてる自分」に、メタボな無精髭おじさんがウットリ。

当時住んでいた、東京郊外の西武線の最寄り駅。そこから線路沿いに、都心に向かって歩くか、田舎に向かって歩くか。 進む方向に少し悩んだ末に「いつも出版社に原稿を届けるため、乗っていた電車。その上り路線にある駅を、全部眺めてみたい!」…と思い、都会方向へ歩き出す。

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ここまでは、普通に近所の散歩でございました。

良い天気で、とてもすこぶる気分が良く。メタボの身体がほっこり汗ばみ、冬の冷たい空気が心地よい。目の前に伸びる影が、まるで自分を運ぶレールのよう。とりあえず歩けるだけ歩いて、疲れたら適当な駅をゴールにして、電車に乗って自宅に帰ろう。

で、後日また電車でそこに戻って、また続きを歩き出せばいい。自分のペースで好きな時に歩いて。ゆったり駅舎ウォッチングなんて、良い散歩のテーマだ。


そんなこんなで線路沿いを歩いているうちに、いきなり現れるガンダム。

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近くに住んでいて、なんで今日までこんなものが置いてあるなんて気づかなかったのじゃろう。石化したガンダムを見れただけでも、散歩に出たかいがった。ただ、まったく意味がわからない。後日フォロワーさんから、このあたりに人民解放軍の下請け工場があったことを知り、なるほど、と。ガンタンクの股間にある、黄色い丸の部品を作っていたらしい。あれか!

2駅くらい歩くつもりが、中野区に突入。

いつも電車の窓から眺めていた体育館。その庭で、今なぜか自分が汗だくでベンチに座り込んでおり。その喫煙所でタバコを吸っている状況に、疲れておりながらも、ニヤニヤ笑ってしまう。

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程よい疲れと充実感があり、満足した気持ちで近くにあった駅へ。そこから電車で地元に帰還。買い物してメシ食って、自宅に戻る。運動した後の汗を風呂で流すのなんて、何年ぶりじゃろう。


…ここでね、満足してればよかったんだけどね。

ここまでは何度も言うように、ごく普通の散歩なので。


翌日。

まだ夜が明けぬ、街が寝静まってる、真っ暗な早朝。

始発電車がやっと動きだす時刻。

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先日の散歩があまりにも楽しかった、わし。
始発電車で、昨日の散歩のゴールとした駅に、ふたたび舞い戻る。

2月下旬の夜明け前、吐く息も白く、クッソ寒い。腰にホッカイロ、首にネックウォーマー。これでもかの防寒対策をして改札を颯爽と出る。このあたりで(散歩なのか?)という疑問が頭によぎったが、もう歩きたくて歩きたくて仕方がない。

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人が誰もいない商店街。ほんのり白んできた空。


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こんだけ人がいないと、自分がゲームのキャラクターになった気分。

今思えば、この時すでにブレーキが効かなくなっていたんだと思う。見知らぬ街を歩く。この歳になって、まるで子供のようにいちいち見るもので興奮する。夏休みに冒険してる少年の気分。

そして街並みは次第に、都会の景観に。


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思えば北海道から上京して、もはや20年近く。

しかし部屋で漫画ばかり描いていたので、東京観光もほとんどしていない。田舎から出てきた若者のように、都会の光景に心の中でキャッキャする。


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高田馬場駅前に到着。

何度も言う。

ここをゴールにして、満足してやめておけば、ギリギリで散歩の範囲だった。旅ではなく、散歩であった。

しかしここで(日本橋って…よく聞くけど行ったことないなあ)…と思っちゃったのが悪かった。ウヒョ助の散歩はここからさらに加速する。

(つづく)

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