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社会の攻略法がわからない

先日、久しぶりに『キューブ』という映画を見た。有名な映画だから知っている人も多いだろう。立方体(キューブ)で構成された謎の迷宮、そこに閉じ込められた数人の男女が脱出を目指す、という内容だ。

キューブ内は安全な部屋とトラップがある部屋の2種類に分かれており、「ある法則」によってどちらの部屋かを見極めることができる。トラップは運が良ければ生き残ることもできるが、概ね死んでしまうようなものばかり。オープニングのサイコロステーキが特に有名。

しかし、本当に恐ろしいのはトラップではない。あまりにも無機質な部屋で極限状態に陥ることにより、心が闇に落ちていくことだ。実はこの映画ではトラップによる死亡率はそこまで高くなく、主な死亡理由は、精神が追い詰められた人物たちによる仲間割れだったりする。

この映画の解釈として、キューブは社会の縮図である、というものがある。姫呂もその見方は正しいと思う。よくわからないまま放り込まれ、理不尽なトラップを掻い潜りながら、難解なルールを推理してゴールを目指さなければならない……まさに社会と同じ。その途中で、周りの人間の悪意から危機に陥るところもそっくりだ。社会の理不尽さをキューブという形で表現している。それこそ、本作が長い年月を経ても人々を魅了しつづける理由だ。実は、キューブの脱出に必要な人員は全員ではない、という点も皮肉が効いている。社会も、真に必要とされている人間は少数でしかない。

もちろん、姫呂の人生は、キューブのトラップに引っかかってしまった人生だ。消えることのない傷を心に負ってしまった。それなのに、未だに社会の攻略法がわからずにいる。息が詰まりそうだ。もはやすべてをあきらめ、死を受け入れるしかないのか……?


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