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2022年4月に見た新作映画まとめ ~フランス映画はやっぱり難解…~

こんにちは、uhikoです!

新年度がはじまり、バタバタしている人も多いかと思います。
僕もご多分に漏れずその1人…
というわけで4月最終日にお送りする予定だったこの記事も2日遅れでの配信になります、すみません…。

ただそんな中でも今月は尖りに尖ったフランス映画や、イランの傑作、心温まる白黒映画など素敵な映画に出会えることができました。
忙しくても心を落ち着かせ、わくわくとした感情を保ち続けられたのは映画のおかげです。

映画って本当に素晴らしいものですね。

というわけで、4月に出会うことができた新作映画はこちら! 
(配信サービス含め、どこで鑑賞したかも書いておきます)

・『TITANE/チタン』@新宿バルト9
・『アネット』@角川シネマ 有楽町
・『猫は逃げた』@新宿 武蔵野館
・『英雄の証明』@新宿シネマカリテ
・『スパークス・ブラザーズ』@TOHOシネマズ シャンテ
・『カモン、カモン』@TOHOシネマズ 日本橋
・『マリー・ミー』@TOHOシネマズ シャンテ
・『バブル』@Netflix

1本1本の感想をかるくこちらに書き留めておきます。
詳細な感想はこちらのspoonでも一部録音配信をしていますので、
そちらを聞いていただければと思います。

https://www.spooncast.net/jp/profile/314449749/board/dj?t=all


『TITANE/チタン』

昨年のカンヌ国際映画祭で『ドライブ・マイ・カー』を抑え、最高賞パルム・ドールを受賞したフランス映画です。幼いころ事故の治療のため埋め込まれたチタンプレートにより、車に対して異常な執着を見せ、非常に暴力的な衝動にかられることになり…、という設定なのですが、やがて狂った変化が彼女の体にも訪れ始めます。その肉体破壊に近い描写は正直かなりきつめです。ただビジュアルや暴力描写だけが評価されたのかというとそれだけでなく、中盤のある男との出会い以降は「男らしさの有害性」などを鋭くえぐる一本となっており、パルム・ドールを上げたくなる気持ちもよくわかりました。
正直万人にお勧めできる映画では決してありませんが、現代の映画界がどういう作品を評価しているのかを知ることができる良い機会でした。

『アネット』

フランスの名匠レオス・カラックスと、刺激的な音楽活動を続けるバンド、スパークスがタッグを組んだミュージカルです。
観客への注意喚起から始まる奇妙なオープニングに始まり、アダム・ドライバー演じるコメディアンとマリオン・コティヤール演じるオペラ女優の恋愛が描かれるのですが、そこはさすがカラックス×スパークス。その恋愛模様は純粋で心温まるというものより、激しく、こちらをハラハラさせるものとなっています。やがてある大きな悲劇に見舞われるのですが、そこはより怒涛の展開が始まる第2幕の幕開けにすぎません。
正直ミュージカルでここまで退廃的で挑発的な1本は見たことがなかったので、そこはとても新鮮でした。ディズニーや劇団四季のようなミュージカルを望む人にはお勧めできませんが、変わり種を求めている人は必見の作品だと思います。

『猫は逃げた』

先月見た『愛なのに』と同様、日本のミニシアターを引っ張る2人の映画監督、城定秀夫と今泉力哉がタッグを組み、互いに脚本を提供しあうプロジェクト「L/R15」の作品。今回は監督が今泉力哉、脚本が城定秀夫です。

週刊誌記者の夫と漫画家の妻の双方が不倫をしており、離婚を考えているのですが、タイトルどおり飼い猫が逃げたことにより、不倫相手も含めて、自分たちの人生や愛の在り方を見つめなおすという作品になっています。
4人の主要登場人物がどれも個性的で憎めないキャラクターで、彼らの口にするセリフもまた温かい雰囲気になっています。そんな登場人物が中心に展開するストーリーなので、途中いわゆる修羅場展開でもひな壇番組を見ているかのような笑いが劇場に起きていました。
『愛なのに』と比べても直接的な濡れ場の表現が少なく、間口の広い1本となっており、ミニシアター好きの方には必見の映画だと思います。ラストの着地は幸せに満ちていて心温まる1本となっていますので、映画館で心をリフレッシュしたい方はぜひ見てみてください!

『英雄の証明』

『セールスマン』、『別離』でアカデミー国際映画賞を受賞しているイランの巨匠アスガー・ファルハディの新作です。
拾った金貨を持ち主に返したことをきっかけにメディアに取り上げられ、一躍美談の主人公となった男。しかし彼のごく小さな嘘や見栄、説明不足によってやがて彼はペテン師と疑われていきます。
予測不能なストーリーで現代社会の問題を鋭くえぐりだしていくので、見ているものの興味を引き付けてくれます。またSNS社会を題材にした作品でありながら、SNSの具体的な画面をほとんど見せないことにより、国境や時代を超えて通じるものがある普遍的な描写になっているところも見事でした。遠いイランだけの出来事ではなく、日本でもきっと同じようなことは日々起きているのではと思います。
明るい映画ではありませんが、現代社会について考えさせられる必見の1本です。説教臭さもなく、エンタメとしてシンプルに面白いので、ぜひ見てほしいです!

『スパークス・ブラザーズ』

兄ロンと弟ラッセルのメイル兄弟で構成されるテクノポップバンド「スパークス」の50年にわたるキャリアを描いたドキュメンタリー。『ベイビー・ドライバー』や『ラストナイト・イン・ソーホー』で知られるエドガー・ライトがドキュメンタリーの監督に初挑戦です。
まず新鮮だったのがロックバンドのドキュメンタリーでお約束の、酒やドラッグ、兄弟げんかなどが全くないこと。僕の大好きなオアシスとは本当に対照的です笑 派手なパフォーマンスやジャンルを軽々と飛び越える奇妙な楽曲を送り出す兄弟なのに、その人間性は茶目っ気こそあるものの、実直そのものでした。
そしてそんな実直な彼らが、新たなチャレンジをし続けた結果生まれた、個性が爆発したサウンドやPV、アルバムジャケットがどれも楽しく、スパークスを全く知らなかった僕も夢中になりました。これだけ多様な音楽素材があれば、エドガー・ライトの手にかかれば、140分のセンスあふれるドキュメンタリーの出来上がりです。
彼らが手掛けたミュージカル『アネット』の公開や、iPadの新CMでの楽曲採用、さらにサマソニ出演決定など、今脂がのりに乗っているバンドですので、音楽好きはチェックしておくこと請け合いです。またエンタメやメディアなどクリエイティブ関係の仕事をしている人にも、彼らの試行錯誤の努力、それをユーモアを持って貫く姿勢が刺さること間違いなしです。

『カモン、カモン』

『ジョーカー』の演技で世界に衝撃を与えたホアキン・フェニックスが次に選んだのは、子供たちとの交流からあふれる心温まる物語でした。『人生はビギナーズ』や『20センチュリー・ウーマン』など自らの実体験をもとにしたヒューマンドラマを手掛けるマイク・ミルズ監督とタッグを組んで見事な人間讃歌を送り出しています。
ホアキン演じる主人公は独身のラジオジャーナリスト。妹の息子をひょんなことから預かることになるのですが、彼とのコミュニケーションはぎこちなく、主人公は自らの母との関係や妹の家族の問題を振りかえらざるを得なくなってきます。子どもの純粋さや奔放さに翻弄され、いら立ちすら覚えていた主人公が成長し、さらに子どもと心を通じ合わせていく過程は本当に微笑ましいです。
さらにこの映画で主人公は仕事を通じて、アメリカ中の子どもたちに様々なインタビューをしていきます。その言葉が映画の端々に出てくるのですが、その等身大の言葉が希望や不安を正直に吐露されていて感動させられます。
仕事や人間関係につかれた人には本当にお勧めしたい1本ですし、今の時代に子どもが何を考えているかを知ることで、大人たちにどう生きるべきかを問いかけてくる深い1本でもあります。白黒の美しい映像や、音声表現の面白さなど見どころたくさんなのでぜひ見てみてください!

『マリー・ミー』

ジェニファー・ロペスが製作・主演を務めたラブコメディ。
スーパースターとさえないバツイチ数学教師が、予期せぬ形で出会い恋に落ちていくという映画なのですが、数学教師役のオーウェン・ウィルソンがまた見事にはまっています。ジェニファー・ロペスの歌唱シーンも圧巻ですし、世界的スーパースターという役の説得力もあります。
格差恋愛ものとしては王道ストーリーなのですが、2人の主演のユーモアと周りのキャラのチャーミングさで、見ていてしっかり笑えて幸せな気持ちになる作品です。公開規模がもっと大きければさらにヒットしていたんだろうなと感じさせてくれるクオリティでした。
『ノッティングヒルの恋人』や『ラブ・アクチュアリー』が好きな人にはハマること請け合いの、王道ラブコメのおすすめの1本です!

『バブル』

『進撃の巨人』を手掛けた荒木哲郎監督が、『PSYCHO-PASS』の虚淵玄と組んで送り出したNetflixオリジナルのアニメ映画。
重力のバランスが崩壊した近未来の東京でパルクールに興じる少年たちとある少女の出会いが描かれるのですが、さすが荒木監督というだけあってパルクールのアクションの動きは迫力満点で、ほかのアニメではなかなか見たことのない画作りが楽しかったです。
一方でストーリーはというと、虚淵玄にしては脚本にあまりひねりがなく、正直結末がある程度予想できてしまうのが残念なポイント。キャラクターもどこかで見たことあるようなものが多く、もうちょっとオリジナリティを出しても良かったかと。
Netflixのオリジナルアニメは『地球外少年少女』が良い出来だっただけに、ちょっと本作は事前の期待を下回ってしまいました…。

まとめ

以上、今月劇場で観ることができた映画たちでした!
難解な映画や暗い映画も多かったですが『猫は逃げた』や『カモン、カモン』などささやかな幸せの物語にも出会うことができました。

来月マストで見る予定の映画はこちら!
・マーベルの世界をさらに拡げる1本として期待される『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』
・庵野秀明がゴジラに続いて挑む特撮『シン・ウルトラマン』
・あの伝説の1本の36年ぶりの続編『トップガン マーヴェリック』

話題作が続々と公開ということで、しっかりと紹介をできるよう映画館に
頑張って通います!

来月もお楽しみに!


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