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「朱色の化身/塩田武士」を読んで感じたこと

「朱色の化身」
このタイトルが作中にチラリと出てきます
「風と共に去りぬ」みたいでかっこいい


序章では昭和31年の福井県芦原温泉の大火で悲痛な思いをした市井の人達の様子が描かれており、心拍数高めに読み始めました。

元記者の大路享は元新聞記者の父親から辻珠緒という女性と会えないかと依頼を受けます。
行方不明になっている珠緒の行方を探すため、珠緒の元同僚、元上司、友人、恩師、元夫など関係のあった人々への聞き取りを行うのです。
その中で珠緒の過去と人間性が徐々に見えてきます。
恵まれない幼少期でも賢さは際立っていたこと。京都大学を卒業したこと。大手銀行に就職したこと。その後はゲームクリエイターとして成功しこと。そして、ゲーム依存症の子を救ったということ。
そして、、、

聞き取りが進むにつれて、男尊女卑の性差別、虐待、依存症、殺人と沢山のマイナスな要因が見えてきました。
そんな環境で懸命に生きた珠緒のことをもっと知りたいと大路が思うのと同じように、私も夢中になって珠緒のことを考えていました。

珠緒とその母親、そして祖母と三世代にわたる女達が時代と男と罪に翻弄されていたことも明らかになり、公平なことなんてないんだと憤りました。

終章で大路の祖母の人生も芦原の大火と繋がりがあったことがわかり、序章の最後に唯一名前を持たない彼女が誰だったのかがわかり、あー!全部ストンと腑に落ちました。
小説というより、ほぼルポタージュ。

凄いものを読まされました。大満足です。

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