ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

小学校6年生の長男は、普段、テレビを一切見ない。ゲームとyoutubeをひたすら摂取するのみ。

仕事柄、映画に触れていることが多い私は、そんな長男の様子をよろしくないなあと思っていて、せめて映画くらいは観て欲しいなと思っていて、なんだかんだ言って1ヶ月に1本は映画を一緒に見に行っている。

だいたい近所のシネコンに行くので、見るのはその時々の話題作。7月は「スパイダーマン ファーフロムホーム」、8月は「天気の子」、という具合に。

そして今月は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」。

160分もあるし、監督クエンティン・タランティーノだし、PG12作品だし、正直どうかな、とも思ったけれど、私が普通に観たかったので、誘ってみたら意外にも「面白そうだから」とホイホイついてきた。

既にSNS上では、「観た」という友人たちが様々な感想をつぶやいていた。興味深かったのは、感想が「好きな人は好きだと思います」とか「寝てしまった」とか「テンポが悪すぎてがっかり」という否定派がいるかと思えば、「ウヒョーー!サイコー」というテンションマックスな人とか、観終わった後なぜかヤンキー口調になって「やんのかコラ」とイキってしまうほどの肯定派もいて、感想が分かれていたので、これは面白そうだな、と思ってすごく楽しみにしていた。

(観たのはTOHOシネマズ日本橋。COREDO2の中に入っていてここへ行くときは1階の芋けんぴを買って帰ります。美味しいよ。)

で、芋けんぴはさておき、いろんなレビューを見る限り、見る前に「シャロンテート事件」を予習した方が良いということだったので、長男には概要を読ませて行った。「大丈夫、準備万端だわ」という気分だったが、映画の途中で12歳の息子が衝撃の一言を放った。

「ねえ、ヒッピーって何?」

小声で呟かれ「そこーーーー!?」と、焦った。なんて説明したか忘れたけど、「今まであったものに逆らって、新しい生き方をしている若者たちのムーブメントだよ」的なことを言ったかな…。小声で難易度たけえ。でもそんなんで、劇中にでてくるカルト集団のことの説明にはなってないよなーって思いつつ、長男、大丈夫かな、、と思いつつ、私は私で、映画をめっちゃ堪能してしまった。

20年前に観た、パルプフィクションもこんな感じだったなぁ、という懐かしさと、あーこういう映画って他に作れる人いないわあ、っていう鮮烈さと、それを息子と見ている多幸感に浸っていた。

シャロン・テート事件を予習した方がよいと言うことで、親子で概要をwikiで読んで行ったけど、あまり事件のことを詳しく知らなくても楽しめた。

あらすじをしっかり掴まなくてもいい、登場人物の背景を詳しく知らなくてもいい、セリフが何を意味するのか噛み砕いていかなくてもいい、絵画を見る時みたいな自由さと豊かさが、そこにはあったから。映画ってこういうのでもいいんだよ、って息子に伝えられてよかったし、息子は先月観た「天気の子」よりも何倍も面白かったらしい。

ラストは親子で不謹慎にも「あーーー、見ちゃダメ、怖い怖い、痛い痛い、ダメダメ、見たい見たい、ぎゃはははーーー!」ってなって最高に楽しめた。

後々うちに帰ってから、ネットに出てる、監督インタビューを聞いたり見たり、時代背景も調べたりして、そこにこめられていたメッセージを読み解いて行くのも楽しい作業だった。

(個人的にはカートラッセル!あとやっぱり犬!でもブラピとヒッピーの少女とのドライブシーンが一番よかったかな…)

「作品に込められた意味」や「メッセージ」、「伝えたいこと」。優れた作品を観ると、作品にとって最も大切なことはそんなものではないとわかる。制作者の意図を越えて観たものに届く、作品そのもの。作品そのものがちゃんと届かないとね。と思う。この作品は、息子にも届いたようだった。

(最近、作品そのものをちゃんと見ないくせに、作品が意図すること、作品から派生したこと、それらの端っこ、言葉尻つかまえて、くだらねー議論延々とやってる人が多くてほんと辟易しているので。みんな見る力をもっとつけようよ、と思っている。自分もちゃんと見ないで結論出そうとしてしまうことが多々あるので気をつけたい。もっとダラダラ、長くて退屈でもほんとは色々豊かなんだよね、と思う)

まあ、いづれにせよ、息子がこの映画を楽しめる感性を持ち合わせてくれていて嬉しかった。私的には子育てうまくいってる!って思えたよい映画体験だった。

皆さんも是非見に行って感想聞かせてください。



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