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地獄なんて言うには日常

※この日記にはタイ・ウエスト監督の映画『パール』『エックス』のネタバレが含まれる可能性が多分にありますので、これから観ようと思っている方はご注意ください。
めちゃくちゃとっ散らかった個人の感想です。

多少映画『ジョーカー』のネタバレやホラー、スラッシャー話も注意!

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何をこんなに落ち込んでいるのか、私だって知りたい。



遡ること数ヶ月前、映画館で真っ赤なフライヤーに出会いました。
血染めの女の子の写真に『スターになるの』というコピーを見た瞬間にえっ!可愛い! 絶対観る! とウキウキで持ち帰った。
映画の題名は『パール』。

ホラーの舞台美術が可愛いことはたまにあるが、(元祖サスペリアとかローズマリーの赤ちゃんだとか)スラッシャー系でこんなキュートな気配にはそうそう出会えない気がする。
とは言っても私はこういった血だらけ系ムービーのにわかなので単に出会ってないだけかもしれないが……ともかく私は7/7の公開日を楽しみに待っていた。

フライヤーを見ると、いまや飛ぶ鳥を以下略のA24社(映画配給や制作の会社)制作とのことだ。勢いがつきすぎてて私はむしろ怪しんでいたのであったが、まあしかしそう悪い出来にはならないだろうと思わせられるパワーがある。

真っ赤なドレスで可愛く斧を持っているパールのビジュアルから想像するに、きっとトチ狂った爽快で最悪キュートなヴィランに違いない。
『スターになるの』のコピーのおかげで、スターになるのかい♪などと、『恋するマリールー』が脳内に流れてくる。


昨年公開された『エックス』の前日譚とあり、そちらも元々観ようとは思っていたところ、タイミングよくama…n prime videoでの配信がスタートした。
『エックス』を途中まで視聴して、どうもあの薄気味悪い婆ちゃんがパールだと言うことがわかる。
ふむ。なるほど……ということはやっぱりパール婆ちゃんがパール嬢ちゃんだった頃の悪行三昧みたいになるわけかな?
時間の都合で一人目の犠牲者が出る前に『エックス』を観るのを中断し、『パール』を観に映画館へ行った。

さてどんな物語が……

お、オズの魔法使いのようで……ミュージカルになりそうで……ならずに……お、おや……?
え、う……⁉︎

鬱映画だ!!!!

パールちゃんは「彼女にとっての地獄」を抜け出そうとしてもがいた後「まごう事なき地獄」を作り、自らを追い込んで後に退けない状況で夢へと賭けるが、「他者から地獄」を叩きつけられる。
そして壊れてしまった自分の物を拾い集めて最後に「天国」を作った気になったところに、最後の希望が帰ってくるのであった。

あれ……ハッピーエンド?
そう、ある種ハッピーエンドの形ではあるのだ。
そこに至るまでがどろどろになってしまっただけで。
もしかしてこれが俗に言うメリーバッドエンド……?
いや、本当にそうか⁉︎

さて閑話休題
ネット上に映画『ジョーカー』とこの『パール』を比べている方を数人みかけたが、私は『ジョーカー』を観た時にはあれはハッピーエンドだと思った。もがき苦しんでいたけれど最後には自分の居場所や在り方を見つけたジョーカーにはもう「良かったね!」の気持ちしか抱かなかった。

そもそも我々がこの『ジョーカー』という映画を観る前からこの主人公は色んなバットマンの映画の中で楽しそうにヴィランをしてる「あの」ジョーカーになるのだ……と思っていたから、どんな悲しい目にあっても大丈夫だと思えた。
その点、あまりバットマンに触れた事のなかった友人はこの映画を鬱映画と言っていた。
今ならその気持ちがわかる。

しかしパールはジョーカーと大きく異なる。続編の『エックス』でも楽しそうなヴィランにはならない。ただひたすらに辛く、最後に欲しかった居場所も見つからずに(というよりはそこから拒否されて)元の場所しかないことが分かってしまう。それがハッピーなわけがないのだ。その上最後の希望たる人物がそこに現れることによって完璧な地獄が完成する。
彼が帰らなかったらどうなっていたかもわからないが、彼が帰ってきたことにより、そこから二人は絶対に動けない状況になって『エックス』へと至る。

恐ろしすぎる笑顔のエンドロールが終わった後に呆然とした状態で私は一人、とぼとぼと歩きながら売店でパンフレットを買った。シネコンを出て商業施設の中をぐるぐると歩き回り、考えた。


でも、でもですよ。地獄なんですよ。

確かに地獄なんですけど、この映画の『殺人』の部分を抜いたらどうだろう……?

なんだかまだこの時代であっても、(田舎の女にとっては特に)まだ身に覚えあるような物語な気がしてしまうな〜……なんて。

ゆえに地獄と言い切ってしまうにはまだ日常だなと思った次第です。

冷静に考え直すと、パールちゃんがあのオーディションで受かったところで多分違う地獄が待ってたよねとも思う。

『マキシーン』楽しみにしてます。

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