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医師を目指す児童・生徒に贈る、"英語"を学ぶ理由

はじめに

医師は、将来なりたい職業として、人気のものの1つだと思います。ただ、実際になるのはそんなに簡単ではなくて、まずは受験勉強という形で、たくさん努力しないといけない職業だと思います。その中で、「これ、医者になったときに役に立つの?」と迷いながら学習することも多いでしょう。このNoteでは、そんなお悩みを医師の立場から考えてみたいと思います。

本日の要点

1)最新の情報を自分の診療に活かすための英語

2)自分の発見を世界中の医師に使ってもらうための英語

3)世界を広げ、医学を深く学ぶための英語

1)最新の情報を自分の診療に活かすための英語

さて、今回取り上げる教科は”英語”です。翻訳ソフト・アプリの性能が向上している現代において、英語を学ぶ意味ってあるの?と聞かれると、私も本心では”絶対に必要です”とは言えません。それでも、できるかできないかで言えば、間違いなくできたほうがよいというのも事実なので、今回はそんなスタンスで書いてみたいと思います。

理由その1は、「最新の情報を自分の診療に活かすため」に英語が必要というものです。医学の世界における”最適な治療”とは、人を対象とした研究を基盤としています。研究というのは結構大がかりなものが多くて、例えば、”ある病気”にこれまで使っていた薬Aと、新しく作った薬Bがあったとき、まず”ある病気”の患者さんをたくさん集め、ランダムに2グループに分けます。そして、一方のグループに薬A、他方のグループに薬Bを投与し、その結果を統計解析します。そして、「統計学的に、薬Bを投与されたグループのほうが、治りがよかった!」と分かれば、初めて”薬Bが最適ですよ!”ということが分かります。そして、ようやく得られたこの結果は、満を持して英語で発信されます。繰り返しますが、”英語で発信”されます。

医学の世界における研究は日進月歩ですから、私たち医師は絶えず世界中が行っているよい研究を自分の診療に活かしていくことが求められます。(だって、目の前の医師が50年前の知識に基づいて診療していたらイヤでしょう?)

そして、英語で発信された医学の情報がすべて日本語に翻訳されるわけではありませんし、翻訳されるとしても”翻訳作業そのもの”に時間がかかるために、日本語になったころには最新ではなくなっているということも起こり得ます。こう考えると、”英語で発信”された情報を自分で吸収することができたほうが、医師としての能力も上がりやすいというものです。

まあ正直、英語の論文をそのまま翻訳アプリに放り込むことは、僕も結構やります。でも、今の翻訳アプリでは、翻訳がおかしなところもあれば、納得がいかない部分もあります。だから結局、そういう部分はゆっくりでも、自分で英語のまま読むことになります。僕の英語レベルは恐らく「論文を読解できなくはないが、スピードは遅い」といったところ。でも、結局最後は自分で読まないといけないところが残るあたり、英語は医師にとって必要なスキルなんでしょうね。それに、英語に苦手意識があると、なぜか翻訳アプリがあっても英語情報に触れようとしなくなってしまいますから、ハードルを下げるという意味でも、英語と仲良くなっておいてよいでしょう。皆さん是非、学生のうちから!

2)自分の発見を世界中の医師に使ってもらうための英語

さて、先ほどは発信された情報を使う側でお話をしてきましたが、当然ながら皆さんが研究を行い、情報を発信する立場になることもあります。医学にはまだまだたくさんの疑問が残されており、治せない疾患があり、こうなると医学を少しでも前に進めるためには、調べ、実験し、研究するしかないわけです。だから、「いやいや、私は研究なんてしないでしょ」と思って医学部に進学し、医師になっても、あっさり研究する必要性に迫られるでしょう。

そして、当然ながら情報発信も”英語”です。理由はいくつかありますね。最大の理由は、世界中の人が、研究から分かったことを利用できるようにすることです。あなたが発見したことを、日本語を読める医師しか利用できないのでは、せっかくの研究がもったいないです。また、研究に協力してくれた患者さんにも申し訳ないというもの(だって可能な限り安全を確保するとはいえ、患者さんはある程度、自分の体をリスクにさらして研究協力してくれるわけですからね。)。だから、研究成果は人類の共有財産として、可能な限り有効活用したい。だから、みんなが読める英語で発信するわけです。加えて最大でない理由を1つ挙げるなら、こんなところでしょうか。たくさんの人の目に研究が触れるようにすることで、「あ、うちも似たいような結果になったぜ」「この病気にもその治療使えない?」「う~ん、うちとは結論が違うね」など、世界を巻き込んでのディスカッションを加速させるため、とか。

なので、読む&聞くだけでなく、「書く」。そしてコロナ禍で学会がオンライン化し、海外の人と触れる機会も増えたため、「話す」スキルも一緒に鍛えられると、言うことなしですね。

3)世界を広げ、医学を深く学ぶための英語

さて、最後はちょっとふわっとした話をします。皆さん、留学したことってありますか?留学したいと思いますか?海外でいろんな経験がしてみたいと思いますか?医学部に入ると、または医師になると、どのような形であれ、海外に出ていく機会が増えます。(私も、アジアに2回、ヨーロッパに2回、短期ですが留学しています。)こういった「折角の機会」をつかんだり、活かしたりするために、英語はとても役に立ちます。というか、英語ができないヤツを海外に出そうとは思わないだろうし、出たところで得るものは少ないでしょうから、むしろ必須と言えるかもしれません。

また、自分が直接海外に出なくても、または医学に話を限定しなくても、世界中の情報の多くは英語でやりとりがなされています(日本語でやり取りされている情報は世界から見ると微々たるものでしょう)。こう考えると、英語ができることはそれだけで、自分がコンタクトできる情報(や友人や様々なチャンス)が爆発に増加することを意味します。英語を学んで損はないという人は多いですが、僕はこの”損がない”というのが、コンタクトできる情報が増えるからなんだろうな、となんとなく思っています。

みなさんにとって慣れ親しんだ日本語は、恐らくみなさんにとって最も効率的で深い思考を可能にする言語となっているでしょう。しかし、情報発信・収集の”幅”という意味では一歩劣るのもまた事実です。これを補うために、是非とも英語かなと思うのです(ちなみに英語に加えてもう1言語、医師になるならお勧めしたい言語がありますが、それは今後数学の記事が出せたら、そちらで)。

本日の要点:Again

1)最新の情報を自分の診療に活かすための英語

2)自分の発見を世界中の医師に使ってもらうための英語

3)世界を広げ、医学を深く学ぶための英語

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