プレゼンの聞き手には、考えさせてはいけない!!(プレゼンテーション講座Ⅵ[特別講座:情報処理心理学①])
〇心理学者としてのスキル〇
さて、ここからはプレゼンテーションを行うにあたって+αにあたる、少し学問的な内容のご紹介です。
ベースとなる学問は、情報処理心理学(人が脳でどのように情報処理を行うかを扱う学問)なので、心理学者としてのスキルと書かせて頂きました。
例によって、わかりやすさを重視するため、学問的な厳密性にそこまで注意を払わないことをご了解頂けたら幸いです。
〇人間の脳では小人が働いている〇
人間の脳では、「認知資源(学術用語)」と呼ばれる「小人(比喩)」たちが働いています。
人によって、脳に住む小人の人数は異なります。
沢山小人がいれば、頭の中でたくさん作業ができます。
小人の数が少なければ、一時にできる作業量は少なくなります。
しかし、ことはそれだけの問題ではないのです。
〇プレゼンを見ているときの、小人の働き〇
さて、あなたがプレゼンを見ているとき、小人たちはいろんな働きをしています。
〇話し手のプレゼンを理解するために仕事をするために、何人か小人が駆り出されます。
〇スライドを理解するために、何人か小人が駆り出されます。
ここまでは、どんなプレゼンでも同じです。
しかし、質の低いプレゼンでは、こんなことが起こります。
×スライドの読みにくい文字をなんとか判読するために何人かの小人が応援に向かいます。
×スライドからくる違和感の正体(例えば、文字が少しずれている、図形の位置が少しずれている等)を確認するため、数人の小人が偵察に向かいます。
×いつもと違う話の流れ(例えば、学会などではスタンダードな「話す順番」がありますよね)をなんとか解釈するために、小人の特別部隊が編制されます
……。
このように、プレゼンを見る際には、〇で示した不可欠な作用から、×で示した本来はいらない機能を担うために、小人たちは脳の中で絶えず仕事をしています。
〇このプレゼン、ようわからん!となったときの小人の様子〇
さて、プレゼンがすっと頭に入ってくるときは、小人たちも快適・スムーズに仕事をしています。
しかし、「このプレゼン、ようわからん!」となったときはどうなっているか。
割り切って説明してしまえば、小人の人手不足が起こっているのです。
(学術用語で言えば、認知資源の上限に収まらない負荷がかかっているのです。)
例えば、あなたの頭の中に100人小人がいるとします。
〇Presenterの話の理解に40人
〇スライドの理解に30人
計70人の小人が駆り出されたとします。
まだ30人待機している小人がいますから、これならスムーズにプレゼンテーションを理解できています。
しかし、
〇スライドに見えにくい図が出てきて、解釈のため20人が出動
〇スライドの文字の位置のズレ等が出て、確認のため20人が出動
と、ここで110人の小人が必要な状態になりました。
ですが、あなたの脳内にいる小人は100人だけ。
これで110人分の仕事をしようとしても当然のようにうまくいきません。
これが、「このプレゼンよくわからん!」という現象の正体です。
〇では、プレゼンテーションを行うときに注意することは?〇
ここまでは、聞き手の立場で話を進めてきましたが、ここからは話し手に立場を戻して(プレゼンテーション講座ですからね)進めていきましょう。
奥義は1つしかありません。
不必要に聴衆に考えさせないことです。
今回使った比喩で言うなら、不必要に小人を出動させないことです。
具体的にどうすればいいのか。
それは……
〇見えにくいものをスライドに入れない(大きさ、鮮明さ)
〇すべての文字、図その他を揃え尽す
〇いらないアニメーションを入れない(使っても、フェードだけ!)
〇お作法があるなら、その流れに従ってプレゼンテーションを行う
等です。
どれも、余計なことに気を散らせないようにする工夫ですね。
特に、アニメーションに関しては、PowerPointに大量に実装されていますが、まず使う必要はありません。
「スライドに文字が多く、アニメーションをいれないと見にくい」という声もあるかもしれませんが、それは、「スライドの文字を減らす修正が必要である」ということを意味しているにすぎません。
〇まとめ〇
プレゼンテーションを行う際は、聞き手が無駄に小人を出動させなくて済むように、いかに「考えさせないか」を意識するとよいでしょう。
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