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プレゼンテーション講座Ⅲ[ストーリー編]

〇小説家としてのスキル〇

プレゼンテーション講座Ⅲでご紹介したプロセスを経ると、あなたはプレゼンテーションで伝えるアイディアを手にしているはずです。

次に行う必要があるのは、このアイディアをストーリーに仕立てることです。

発想したアイディアは、まだパーツでしかありません。

バラバラのままです。

これらのアイディアを、分かりやすく、説得力があり、聴衆が飲み込みやすい形にまとめるのが、小説家としてのスキル(と私が勝手に読んでいるもの)です。

〇ストーリーの大枠は3パターンしかない〇

ストーリーに仕立てるというと、何やら難しそうな印象を受けるかもしれません。

しかし、このステップに関しても明確なプロセスがあります。

そもそも、ストーリーの基本的な枠組みは、3つ習得すれば十分だと考えています。

複雑なプレゼンテーションを作る場合でも、この3つの枠組みの組み合わせ(入れ子構造)を用いることで対応できるからです。

今回も、聴衆に『英語を学ぶことは極めて有意義である』という変化」を起こすことを目的とするプレゼンテーションづくりを仮定して、3パターン例をお示ししながらご紹介させて頂きます。

(ただ、枠組みをお伝えするのが目的ですから、端々省略しますので、その点はご容赦ください。) 

〇ストーリー①:主張☞理由①☞理由②☞理由③☞再度主張〇

まず、最初の型です。

私は、勝手に、Body(理由)3型などと呼んでいるものです。

いきなり例を示したほうが分かりやすいと思いますので……

 

主張:英語を学ぶのは極めて有用です。

理由①:第一に、世界中の人とコミュニケーションをとれるようになります。

理由②:第二に、世界にあふれる多くの情報は英語なので、アクセスできる情報が増えます。

理由③:第三に、日本語とは違った言語で思考できるようになり、視野が広がります。

再度主張:だからこそ、英語を学ぶことは極めて有用なのです。

 

といった形でストーリーの大枠を作ります。

最初と最後が主張で、その根拠を3つ挟み込む感じですね。

もっともオーソドックスで使いやすいストーリーの枠組みです。

〇ストーリー②:主張☞反対意見①☞これをつぶして賛成①☞反対意見②☞これをつぶして賛成②☞再度主張〇 

次は、賛成-反対型と呼んでいるものです。

例によって例のごとく、例から始めます。

 

主張:英語を学ぶことは極めて有用である。

反対意見①:そうはいっても、日本人が英語を使う機会は少ないと考える人はいるかもしれません。

これをつぶして賛成①:しかし、今日では、海外から来る外国人は増え、国外に出る日本人は増え、国内にいても、英語でやりとりをする機会が増加し、使用機会は高まっています。

反対意見②:翻訳ソフトも精度があがってきて、わざわざ学ぶ必要を疑問視する声もあるかもしれません。

これをつぶして賛成②:でも、翻訳ソフト越しでは、真に通じ合うことは難しいでしょう。また、言語の独特のニュアンスは、その言語を文化とともに学ばなければ、理解することができません。

 

こんな感じです。この枠組みでは、わざと主張に対して反対の意見を述べ、これに対抗する形で主張に対する根拠を述べていきます。

Body3型と比べて、両方の意見に配慮していることが聞き手に伝わりやすい構造になっています。

従って、賛成派も反対派もいるだろうな、という場合には使いやすい枠組みです。

一方で、反対意見を述べるのに時間を食われるので、強力な賛成意見が多数ある場合には向かない選択肢だと思います。

〇ストーリー③バック・キャスティング型〇

参考・引用:世界最高のプレゼン教室 ガー・レイノルズ

3つ目の枠は、上記の本で紹介されているものほとんどそのままですので、詳しくはご一読いただければと思います。かなりざっくりご説明するのと、少々の解釈を加えますので、いくつか矛盾をはらむ可能性がありますが、その点はご容赦ください。

この方法は、理想と現実の差を示した後に、それを埋める解決策を考え、提案するという方針で進みます。

以下の例(☞の部分)とあわせてご覧ください。

 

理想:理想的な状態

☞世界中の人とコミュニケーションがとれるようになりたい。

 

現実:実際の状態(問題がある状態)

☞実際には、まったくもって言語での意思疎通ができない。

 

原因究明:どうして理想と現実の間にギャップがあるのか

☞理由は単純で、私が日本語以外の言語を習得していないからだろう。

 

解決探求:原因の解消を模索する段階(ストーリーとしては失敗談がよい)

☞翻訳機を使ってみると、確かに通じはするが、コミュニケーションをしている感じがしない。

 

解決:原因を解決する方法を提示

☞1か月でも、フィリピンの英会話学校に留学して英語を学ぶと、生の言葉でコミュニケーションをとれるようになった。

 

提案:聞き手に促したい行動を述べる

☞地道な道に見えるかもしれないけれど、あなたも英語を勉強してみては?

(もし、英会話学校の関係者なら、うちの学校に是非入学を!)

 

と言った感じです。かなりトリッキーな形(だと私は思う)ですが、聞いていて最も面白いのはこれでしょう。

ちなみに、解決探求のところは、失敗談がいいと書きました。

それは、物語は基本的に山あり谷ありのほうが、聞き手に強く訴えるものとなるからです。

ドキュメンタリーを想像してもらっても、アニメを想像してもらってもいいのですが、主人公が成功する前って、たいていピンチに追い込まれますよね?

あれです。

〇ストーリーの使い分け〇


3つの方法の使い分けについては、前回同様使いやすいもので構いません。

ただし、今回に関して言えば、題材と聞き手の状況によって、かなり使用できるものが絞られてきます。

例えば、万能に見えるストーリー①も、聞き手が反発しているテーマについて扱う場合にはかなり使い勝手が悪いです。

(聞き手がみんな、英語なんて嫌いだ!って言っているところに、根拠を投げつけても、反発されるでしょう?)

この場合には、反対意見に配慮できるストーリー②か、聞き手の感情に訴えられるストーリー③のほうが適切です。

また、例えばストーリー③は、情動を最も動かしやすい枠組みであることと引き換えに、よいストーリーが準備できなければ使えないので、この中での使用への敷居は最も高いと言えるでしょう。 

とまあ、このように全て一長一短あるので、すべてのストーリーの枠組みが最低限使えるようになっているのが無難です。また、そうすることで、入れ子構造のプレゼンを作ることもできるようになります(例えば、ストーリー②の反対意見をつぶして賛成する部分の中身を、理由3つから構成する、とかですね)。

極論、すべてのプレゼンは、これらの入れ子構造と変形ですから。

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