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憧れのカメラが2ヶ月で壊れた

使い始めたばかりなのに…

Panasonicのミラーレス上位機種であるLUMIX G9Proは僕にとって憧れのカメラだった。今年の1月に僕の家に届いたその日は嬉しくてすぐ開封して、何時間も触って手垢を染み込ませた。
家の中でマクロレンズを使い適当な標本を撮って2000万画素のパワーに感動し、外撮影で8000万画素のハイレゾショットを試用して圧倒された。

LUMIX G9(破壊後)

これで冬虫夏草の生態写真撮ったら凄いだろうなと妄想は止まらず、春のシーズンインが待ち遠しくて仕方がなかった。

3月中旬、春が待ちきれなかった僕は八重山諸島へ季節を先取りしに行くことにした。この遠征には必ずG9を持っていって、ヤマンギムシタケという巨大な冬虫夏草の生態写真を撮影するんだと息巻いていた。ついにG9のフルパワーを解放する時が来たんだとワクワクしすぎて頭がどうにかなりそうだった。

遠征には機動性重視で小さめのレンズを2つだけ持っていくことにした。それは冬虫夏草を野外で撮影するにあたって必要な画角や焦点距離、解像性能をクリアした上でコスパが良い、悩み抜いて選んだ最高のレンズだった。

僕は6年前、石垣島にLUMIX GF3という小さなミラーレス一眼を持っていった際、カバンの中で変に圧迫されたのか滞在2日目にして完全破壊するという大失態を犯したことがあるので、今回はG9をプチプチシートでぐるぐる巻きにして、さらに別の緩衝材で覆った上で専用のケースに入れて持っていくことにした。流石に過保護すぎるかなとも思ったが6年前のトラウマがあるので用心するに越したことはない。

詳細は省くが、果たして、八重山諸島ではある程度満足のいくヤマンギムシタケその他の生態写真が撮れたのだった。自分の考えや腕の未熟さも思い知ったが、できる範囲でのベストは尽くせた気がした。やはりG9を買ってよかったと心の底から安堵した。

ヤマンギムシタケ

しかし初めての本格運用で、G9の欠点も浮き彫りになった。1番の欠点はその大きさで、せっかく小さいセンサーサイズの規格を選んだのにボディがやたら大きく重く、地面直置きで撮るキノコの生態写真撮影では希望の画角にカメラをセットしにくかった。この点では下位機種のG8がコンパクトで圧倒的に良かった。

また、シャッターボタンの感触も気に入らなかった。ほんの少し強めに触れたら全押し判定でシャッターが切れてしまい、半押しの余裕が少なかった。この点でもG8の方が遥かに良かった。各種ボタンの位置もG8の方が好みだった。

LUMIX G8

少し不満を抱えながらも静止画性能には大満足だし、G9以上に高画質な写真が撮れるボディを僕は持ち合わせていないので、もし良い被写体に出会ったときに後悔しないよう、どこに行くにもとりあえず持っていこうと思った。

石垣島・西表島から帰ってきた2日後、疲れた体にむち打って京都に遠征した。関西では3月〜4月頃、オオセミタケというセミの幼虫から生える大きな冬虫夏草が現れる。今年はオオセミタケの生態写真を撮影したいと常々思っていたので、少し無理をしてG9を片手に家を出た。

地味な色のオオセミタケを初めて行くポイントで見つけるのは少し難しかったが、ここは怪しいなと思った場所で5個体発見することができた。早速地面を掘ってセミの姿を露わにし、LAOWAの広角レンズで背景も意識した画角で撮影を始めた。

オオセミタケ(これはスマホ撮影)

絞り値やISO感度、シャッタースピードを決めて、さぁこの設定値で撮ってみよう、とシャッターボタンを押したとき、何か違和感があった。
ボタンにほんの少し、言うなれば手に乗せた小さな虫を潰さぬよう優しく撫でる程度の、ほんのわずかな力で触れた段階でカメラは半押し判定を下し、その後半押しのつもりで軽く触れただけでシャッターが切られた気がしたのだ。

この違和感が気のせいではないと気づいたのはG9で動画を撮ってみたときだった。G9は静止画用のシャッターボタンと動画の撮影開始・停止ボタンが分かれているのだが、動画撮影モードなら静止画用のシャッターボタンを押しても動画を撮り始めることができる。
オオセミタケをLAOWAの広角で、かつ4Kで撮りたいなと思ってシャッターボタンに手をかけたとき、明らかに意図しないタイミングで撮影が始まったのだった。

よく確認してみるとシャッターボタンの感度が異常に上がっていて、少し触れたら全押し判定の絶対シャッターチャンス逃さないマンに変貌していた。ZUIKOのマクロレンズでピントを合わせるときオートフォーカスを使おうと思ったら、半押し判定がシビアすぎてオートフォーカスが一切使えなかった。

噴き出る額の冷や汗を拭いながらG9を弄ると、他にもメニューボタンや再生ボタンがなかなか反応しなかったり、リモートシャッターが使えなかったりと色々と不具合が明らかになった。認めたくないが認めざるを得なかった。G9は購入からわずか2ヶ月で壊れてしまったのである。


幸いにして新品で買ったばかりのG9は保証期間内で無料で直せるが、G9が使えない期間は下位機種のG8で撮るしかない。先日アミガサタケを撮影に行った際は久々にG8を外に持ち出した。

G8は室内の標本撮影用で買ったものなので、野外で使ったことがあまりない。今回アミガサタケで広角マクロ的な撮影を行うと、あまりの使い勝手の良さに驚いてしまった。何よりG9より小さくて軽い!ボタンやダイヤルの位置がよく操作性が素晴らしい。シャッターボタンの感触が良い。ハイレゾショットこそできないものの、成果物が最終的に大きなポスターなどに印刷されない限り1600万画素が問題になることはないのだから、もうG8でも良いかななんて考えてしまった。よほどハイレゾショットの恩恵を享受しない限り、G9に戻れなくなってしまう可能性を考えるくらいにG8は自分に合っているなと感じた。

あれだけ過保護に育てた箱入り娘の(?)G9がたった一度の遠征で、しかも思い当たる原因もなく壊れるなんてあまりに情けなくて、憤りすら覚えてしまった。百年の恋も一時に覚めるではないけど、憧れが強かったばかりに、思いの外貧弱なのを見て少し幻滅してしまったようだ。

G9を外に出してまたすぐ壊れたら困るので、いっそ室内専用にしようかな…とも思ったけど、生態写真を撮るためにG9を購入したのに結局外に持ち出すのは以前から使っているG8なのか。それは何だかすごく本末転倒な気がする。やっぱり戻ってきたらまたどこか連れ出してやろうか。今度はプチプチを5重に巻いて、他の緩衝材も5倍にして金属製のアタッシュケースに入れて…。

fin.

個別にメッセージをお返しします。