見出し画像

【医学的視点】インソールを買う前に知っておくべき効果について!

インソールとは

インソールとは、靴の中敷きのことです。

スライド2

インソールは足と直に接するため、形や素材を変えることで、足をサポートするだけでなく、足の働き(機能)を改善させることができます。
このため、足から怪我の予防や治療、さらにはパフォーマンス向上を目的に幅広く使用されています。

怪我の予防や治療に関して、整形外科の医師がインソールを処方する事例を調べてみると、表のような結果になりました。足や膝だけでなく腰痛に対しても使用されており、幅広い使用方法があることが理解できます。

スライド4

今回は、幅広い使用方法があるインソールの「知っておくべき効果」について、医学的視点で解説します。
(インソールの選び方やポイントについてはこちら

インソールは市販のものからオーダーメイドのものまで幅広く存在し、料金も安価なものから高価なものまでと様々です。しかし結論から言うと、高価であれば良いという物ではなく、一概にこの形や素材が良いという物でもありません。

高価であれば物持ちが良いですが、形や素材は自分の「からだの特性」や「動きの特性」を把握しながら作る必要があると報告されています。

スライド1


インソールの知っておくべき効果

まず、インソールと直に接する「足の働き(機能)」について説明します。足はからだで唯一地面に接しているため、よく「動きを支える士台」として表現されます。

この土台である足には4つの働きがあります。
それは…

①強力なテコ
②柔軟性(可動性)
③バランス制御
④クッション
です。

スライド5



①強力なテコ

まず、スタートダッシュをイメージしてください。
「よーい…ドンッ!」で地面を蹴りますが、これは地面の力を利用して、体を前に運んでいるのです。この時の足は「強力なテコ」としての働きが求められます。

トップアスリートであるほど足が硬い傾向となるのは、この働きが求められるためだと考えています。

スライド6



②柔軟性(可動性)

次に、険しい山道をイメージしてください。
車道に比べて山道はデコボコしています。
そんなデコボコ道でも、私たちは地面の形状に足を適応させて歩くことができます。この時の足は「柔軟性」としての働きが求められます。

生まれつき手のないヒトが、足で様々なことができるのは、この柔軟性としての働きを高め、精密な機能を獲得したからと言えます。

スライド7



③バランス制御

今度は、電車で立っている場面をイメージしてください。
不意に電車が揺れても、転ばないように重心を安定させ、立っていることができます。この時の足は「バランス制御」としての働きが求められます。

綱渡りをしている大道芸の方は、この働きが求められると言えます。

スライド8



④クッション
最後に、高い所からジャンプした場面をイメージしてください。
バランスを崩さない限り、着地は足でしますが、着地をすると同時に膝を曲げます。この時の足は、からだの衝撃を吸収する「クッション」としての働きが求められます。

ジャンプしてすぐ次の動作に移れるのは、この働きと同時に①強力なテコの働きがあるからと言えます。

スライド9



私たちは、これら4つの働きを「無意識に、しかも環境に応じて適切に発揮して」生活をしています(4つの働きを別々に使い分けるのではなく、組み合わせたり、瞬時に使い分けたりしているイメージを持ってください)。

しかし、病気やケガによって「痛み」などの不快な症状を伴うと、足の働きが阻害されてしまいます。


例えば、外反母趾をイメージしてください。

特にぶつけたり、怪我したわけでもないのに、「いつの間にか親指(母趾)が変形してきた」とう方は、意外と多く存在しています。

やがて「だんだん歩くと痛くなってきた…」という不快な症状が出現した場合、からだは足をかばうようにして歩くため、結果として足の働きが阻害されます。
(①~④の働きが低下しますが、特に阻害される働きというのは人それぞれです)

このような場合にインソールを使用すると、足が再び適切に働く環境を整える効果を発揮してくれます。

余談ですが外反母趾は、日本人の履物が急速に洋式化した1970年代を境として、急激に増えたと言われています。
また、ハイヒールや偏平足の関連も指摘されています。

スライド10



さて、インソールの知っておくべき効果とは、足が適切に働く環境を整えてくれることで、「①強力なテコ、②柔軟性、③バランス制御、④クッションのサポートをしてくれる」ということです。

そんなインソールには、たくさんの種類があります。有名なのは、土踏まずのラインに沿って足をフィットさせる「アーチサポート型」ですが、その他にも「内側アーチ」、「内側・外側ウェッジ」、「踵部挙上」などが挙げられます。

また素材も柔らかいものから硬いものまで幅広く存在しています。

ですがどの種類や素材においても、①~④の目的に応じて使い分けたり、組み合わせたりして使用されていることを理解しておいてください。

スライド11

スライド12



もし、インソールを購入する時に専門家からアドバイスをもらえるようであれば、

前に自然とからだが進むような働きを高めた方が良いのか
地面の力を利用して歩く働き(テコの力)をサポートするインソールが効果的なのか

可動性を引き出した方が良いのか
歩く時の体重移動(踵から親指に体重移動)をスムーズにさせるような、柔軟性をサポートするインソールが効果的なのか

安定性を高めた方が良いのか
動作が不安定な場合、安定(バランス制御)をサポートするインソールが効果的なのか

衝撃を吸収させた方が良いのか
動作で足が痛む場合、衝撃吸収(クッション)をサポートするインソールが効果的なのか

①~④のどの働きを特にサポートする必要があるのかを教えてもらうことが大切です(詳しくは次回説明します)。

これも①だけ、④だけというわけではなく、①と④、①と③と④など個々の状態に応じて変化します。

スライド13



自分のからだがどうなっているか」は、自分ではなかなか分かりません。
だからこそ専門家に聞くことが大切です。是非、参考にしてください。

そして、インソールは市販のものからオーダーメイドのものまで幅広く存在し、料金も安価なものから高価なものまでと様々です。

もし、市販のインソールを購入するなら、①~④のうちどの働きをサポートしたいのかを考えて購入すると良いでしょう。

オーダーメイドで作成するなら、①~④を踏まえて、自分の「からだの特性」や「動きの特性」を教えてもらいながら作ると良いでしょう。

今回の内容を踏まえて次回は、インソールの選び方やポイントについてお伝えします。


【参考文献】
・財前知典 他:インソールのバイオメカニクス.臨床スポーツ医学 33(1): 12-17, 2016.

・0‘Leary K,et al:Effect of cushioned insoles on impact forces during running.J Am Podiatr Med Assoc 98:36-41,2008

・Landorf KB,et al:足装具と外傷・障害.EBMスポーツ医学.西村書店,39-47,2011

・大久保衞:インソールの役割.臨床スポーツ医学 34(4): 356-361, 2017.

・安井哲郎:外反母趾の保存療法.Loco CURE 2(2): 168-171, 2016.

元気で明るいのが自慢の元明のサポートをお願い致します。 頂いたサポートは、娘と息子のために使わせていただきます。