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有料小説

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自伝(Autobiography)×創作(Fiction)。自伝要素があるので鍵の意味で有料とさせて頂きます。
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記事一覧

AutoBioFiction Age:18

 数年ぶりに再会した圭ちゃんは、大型ビジョンの中だった。その日、私は渋谷のスクランブル交差点を歩いていて、離婚が成立して心機一転、この土地を去ろうかと考えていて、だけど、ふと見上げたビジョンに彼の作品が流れていたから、私は泣いて、そしてこの土地に踏みとどまった。その時初めて気づいた。私は案外、離婚したことが悲しかったんだなぁということと、彼のことが、本当に好きだったんだなぁということ。

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AutoBioFiction~とあるレスの話~

 パソコンの画面の中では、裸の男と女が絡まり合っている。女の喘ぎ声に混ざって聞こえる肉と肉がぶつかる音。その合間に、男の熱を帯びた吐息。  これはAVではない。いわゆるハメ撮りである。男は私の夫で、では女のほうは私なのかと聞かれるとそうではない。女は、夫の元カノである。  そもそもなんで私がこの動画を見つけたのかと言うと、私たちが共用で使っているパソコンにデータが残っていたからで、なぜ残っていたかと言うと、このパソコンは元々夫の私物だったからで、なぜ私がパソコンのデータを漁り

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AutoBioFiction~私と後輩くん~

「初めまして、制作の加藤です」  フリーになってから、何度この挨拶を繰り返して来ただろう。勤めていた広告代理店は二年前に辞めた。それからずっと『現場の人』として働いている。 「初めまして、矢野です。すいません今先輩たちが出払っちゃってて。席はそのへん使ってください。わかんないことあったらなんでも聞いてください」  そう言って、彼は笑った。笑顔が爽やかな若いイケメン。第一印象は、そんな感じだった。……のに。

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AutoBioFiction Age:14

 初めての相手は知らない男だった。覚えているのは恐怖と痛みと、あと、口を抑えられていたせいで息が上手くできなくて、苦しかったってことぐらい。雨上がりの公園の土はひどくぬかるんでいて、体についた生温かいそれが男の体液なのか泥なのかよくわからなくて、よくわからないけれどすごく不快で、男から逃れようと身をよじればよじるほどその不快さは増したから、私は途中で抵抗をやめた。男の肩越しに見える満月が、場違いなほど綺麗に輝いていた。 「処女膜ないね?」  男が、臭くて熱い吐息を吐きながら耳

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AutoBioFiction Age:17

 その男は、私に一切の外出を許さなかった。カーテンも開かない、時計もないその部屋で、私が一日の終わりを知る術はただ一つ、セックスだけだった。男は一日の終わりに、必ず私を抱いて、そして、その度に必ず正の字を書いた。カッターで、私の肌に。 「俺と暮らした証拠を残してやるから」  そう言って笑う男を見ながら、私はいつも思っていた。  ああ、この男のちんこをちょん切りたい。

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